小説の人気がおすそわけされました! …らいいのにね
ちびまるフォイ
フォロワーは量より質!
合コンが終わるとひとりの女に声をかけられた。
「あの、フォロー登録してもいいですか?」
「え? ああ、うん。いいよ」
ツイッターか連絡先の交換かと思っていた。
女はスマホ同士を近づけて交換を済ませた。
「ありがとうございます、私いっぱい貢献しますね」
女は満面の笑みで答えた。
翌日、このことを友人に話した。
「えーーうらやましいな、女と知り合いになれたのかよ!」
「顔も性格もタイプじゃない。つか、フォローてなんなんだ」
「知らないのか?」
話しているとスマホの画面にポップアップが表示された。
>「お金」がフォロワーにおすそわけされました!
俺の口座の残高が勝手に増えていた。
「よかったじゃないか。フォロワーがボーナスもらえたのかもな」
「フォローしているとおすそわけしてもらえるのか!? すごい!」
「おすそわけできるものはフォロワーにも送られる。
分割できないものはフォロワーに直接送られるんだ」
こんな機能があったなんて。聞いてよかった。
その後も何度かポップアップは表示され、さまざまなおすそ分けをもらった。
「山田君、君はそろそろ課長に昇進してもいいだろう」
「本当ですか!? やったぁ!!」
出世もおすそ分けされるし、
「山田課長……最近ステキになりましたよね……///」
「そ、そうかなぁ! あは、あははは!!」
モテるのもおすそ分けされた。
フォローって最高だ!
「よし、もっともっとフォロワーが増えれば
おすそ分けだけでものすごい利益がもらえるはずだ!!」
フォロワー増やしのために合コンはもちろん、
人脈が広がりそうな場所にはどこへでも進んでいった。
「フォロー? いいよ」
「ねぇ一緒にフォローしましょう」
「つかフォローさせて」
「もちろんだよ!!!」
みんなフォローの敷居は低いのでどんどんフォロワーを増やせる。
気が付けば俺のフォロワーは100人にも増えていた。
「ふふふ、これだけ増えれば十分だろう。
1人100円のおすそ分けが入ったとしても、
俺に入る利益は1万円……100円が1万円になるんだ!!」
フォロワーがどんなおすそ分けをしてくれるのか楽しみだ。
気分はまるでふるさと納税でもしたような気分。
けれど、ポップアップは頻繁に出るものの規模があまりに小さいものばかりだった。
「くそ! なんでこんなしょぼいおすそ分けしか来ないんだよ!
これだったらフォロワー1人の時の方がまだよかった!!」
フォロワー増やしても1人当たりのおすそわけがあまりに少ない。
原因はひとつだった。
簡単にフォロワー登録してくれる人なんて、
自分以外のほかの人もフォローしているにちがいない。
たくさんのフォロワーがいる人のおすそわけなんて、
細かく分割されすぎて1人あたりの利益が少なくなっているんだ。
「お前ら! フォローするのは俺だけにしろよ!!
おすそわけが少なくなるだろ!!」
「は? なに勝手なこと言ってるんだ」
「あんただってフォロワー多いくせに」
「自分は与えないで人からおすそわけだけもらおうと思ってるの?」
「うるせぇ!! お前らみんな俺に一途に貢げばいいんだよ!!」
勢いで吐いてしまった暴言にフォロワーは愛想を尽かし去っていった。
俺だけを見て、俺だけのために献身してくれるフォロワーなんていない。
「くそ……どいつもこいつも……」
吐き捨てながら酒を傾けていると、向かいに知った顔を見つけた。
「あんたは……最初のフォロワーの……」
「覚えていますか? 私、すごく嬉しいです」
「俺にはあんたしかいないよ。みんな誰かをフォローしている。
俺だけを見て、俺だけをフォローしているのはあんただけだ」
「山田さんが私以外の99人とフォロー関係になったって、
会社の女の子と給湯室でキスしていたって、
キャバクラの女の子に夢中になっていたって私はずっとあなたと一緒です」
「え……なんでそれを……」
あまりに具体的すぎる内容に酔いがさーっと冷めていく。
「私、ずっと前から山田さんのことが好きだったんです。
そしてずっとフォローしたいって思っていたんです」
「そ、そんなに俺におすそ分けがしたかったのか?」
「ええ、おすそ分けがしたかったです。
私のフォロワーになってくれて本当にありがとうございます。
これでずっと一緒です」
女はにこりと笑ってその場で自殺した。
あまりに突然なことだったので状況を理解する時間もなかった。
「な、なんだ!? どうなってる!?」
慌てふためいていると、こんなときに友人の言葉を思い出す。
分割できないものは直接送られる、と。
やや遅れてスマホの画面にポップアップが表示された。
>「死」がフォロワーにおすそわけされました!
小説の人気がおすそわけされました! …らいいのにね ちびまるフォイ @firestorage
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