NOT FOUND
歌から出た話。
今回は、Mr.Childrenの「NOT FOUND」を。
これは結婚式の時に流した曲だ。
「365日」とか「しるし」とか「名もなき詩」とか「Sign」とかなんかもっと結婚式らしい歌があったんじゃないか、って招待したチルオタの後輩に突っ込まれた。
知ってる。そんなもんは百も承知だ。
「あぁ何処まで行けば解りあえるのだろう? 歌や詩になれないこの感情と苦悩」
家族とうまくいかないことがある度にいつも聴いていたこの曲を、自分が選んだ人と家族になるからかけたのだ。
実家の母とは、嫁いだ今でも喧嘩する。
そしてまた、この曲をかけるのだ。
本当に、矛盾している。
「矛盾しあった幾つもの事が正しさを主張しているよ 愛するって奥が深いんだなぁ」
「自分だって思っていた人格(ひと)がまた違う顔を見せるよ ねぇそれって君のせいかなぁ」
「あんたは私から生まれたのに、どうして私と同じように考えてくれないの?」
母の声が粘りを帯びながら、どろりと心の中に滓のように沈み、色を帯びる。
こう書くと毒親のように聞こえるかもしれないが、決して世間で騒がれているようなおかしな親ではない。
桜井さんはきっと男女間の話を書いたのだろうが、親子間でも同じだ。
いつまで経っても適切な関係がわからず、もがいて葛藤して喧嘩になる。
「あぁ何処まで行けば解りあえるのだろう? 目の前に詰まれた絶望と希望」
「どうしてあんたは私の事、わかってくれないの?」
過去に恋人に投げた言葉は、過去に母が私に投げた言葉だったのだ。
なんだ、同じ孤独を抱えていたのか。
同性だからこそ違いにイラッとくるし、同じであって欲しいのだろう。
「あとどのくらいすれば忘れられるんだろう? 過去の自分に向けたこの後悔と憎悪」
実家を離れたって、街を離れたって、たとえ国を離れたって。
血はきっとどこまでも追ってくるのだ。純粋に血を分けた者ではなく、土地の記憶や家族の記憶、風習や無意識のどこかで「それ」がいつまでも追いかけてくるのだ。
自分自身と、いや。内なる恐怖と向き合うということはそういうことなのかもしれない。
別の肉体と精神を持っているのに、どこか「お揃い」を見つけて安心したくなる。
お揃いなのかもしれないという夢を見たいだけなのかもしれない。
正解が欲しくてもがき続けるけど、見つからない。
探しても探しても見つからない。まさに、「NOT FOUND」だ。
でもいつか。生きてるうちに見つけられたら、いいと思う。
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