Adria Blue

歌から出た話。

今回は、bohemianvoodooの「Adria Blue」を。

初のインストだ!

いつも歌ものだったから新鮮だなぁ。

一言で言うと、わかりやすい恰好良さ。

夏らしく軽くて爽快な感じがいい。

弦楽器好きだったらきっと嵌る。

青空に合わせようか、それとも汗ばみながら熱を放出する宵にかけようか。

どっちにも合う音なのが憎いところだ。

アドリア海なんて、見たことないけど。


このベースの音を聞いていると、昔のことを思い出す。

正確には、ベース弾きの手を思い出すのだ。

手の皮が分厚くて、大きくて、指がごつごつしている職人の手。

そこから色気のある音を奏でてゆく。

フレットを全部削って、硬い硬い音の響かないハワイアンコナの樹で作った

じゃじゃ馬のようなベースを時に荒く、時に優しく、かき鳴らす。

ステージの熱と照明の熱が合わさって、堪らない色気が溢れてくる。

私の知るベース弾きは、そういう男だ。

ギターとは違う、渋さがいい。


この曲は軽い。

走り去った過去を振り返るには丁度いい軽さだ。

腹の中でどう思ったって、遠い日はもう帰ってきやしない。

この青は、海の青さなのか、空の青さなのか、それとも私自身の青さなのか。

思い出は「今」じゃないから、ただひたすらに甘いのだ。

歳を取ったら、たまにはそんな日だってある。


胸の裏側のひりひりした部分を冷ますには、この音の青さは丁度いい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る