section2 Malie's origin〜変わり者の魔法使い part5
「魔道士風情が調子に乗りやがって……お前達、やれ。」
それに応えるように、アッシュは部下に指示を出しました。
「ウーケケケケケケケケケッ!」
部下の魔物達が一斉にお父さんに襲いかかりました。しかし、お父さんは、
「まとめて掛かってこようと無駄な事を。Wワイド・ハイサンダー!!」
冷静に杖を振りかざし、辺り1面に雷を起こしました。魔物達は一撃で倒されました。
「少しはやるようだな……なら今度はお前達だ。いけ。」
今度は炎を纏った龍戦士2体に指示を出しました。でも、お父さんはそれも意に介さず、
「俺を誰だと思っているんだ……デュアルキャスト……ダブルメガウォータ!!」
的確に弱点を判断し、龍戦士たちを軽々と倒していました。
「さあ、どうだ?降参でもするか?お前1人で、この状況をひっくり返せるとでも?」
お父さんは心理的に圧力をかけていきます。
「確かにお前を見くびっていたようだな。」
しかし、アッシュは全く気にしてはいなかったようで……
「だが、ただの魔法使いが俺に勝てるわけねえんだよ。」
「強がりはよせ。一撃で終わらせる。ライブラ……」
お父さんは弱点を分析する魔法を使い、アッシュの苦手とする属性を探りました。
「炎か……私の最も得意とするところだ……安心しろ、痛みは一瞬だ。」
「だからただの魔法で勝てるとでも……?」
弱点を暴かれ、お父さんの得意魔法ですぐ吹き飛ばされるのがわかっているはずなのに、なぜかアッシュは余裕を持っていました。
「これで終わりにする……ブーストギガファイア!」
お父さんは最大の魔法を放ちました。が、その瞬間、アッシュの不気味な余裕の理由がわかりました。
「マジックキャンセル!」
アッシュはいとも簡単にそれをかき消しました。
「馬鹿な……なぜ魔法が消失した…!」
「は、この技を1回使う事に1回魔法をかき消すことが出来るんだ。」
「ならば、デュアルキャスト…」
「遅い!」
「ぐほっ!!」
アッシュの拳がお父さんの溝うちに刺さりました。
その後はほぼほぼアッシュが優勢で戦闘が進んで行きました。いくらお父さんが魔法を撃ってもマジックキャンセルで防がれる。勝ち目は見えませんでした。
私たちは茂みでずっと戦いを無言で見ていました。が、一方的な戦いを見て、ついにステファニー姉さんが口を開きました。
「あの野郎……ただの魔法は効かないとか抜かしてたよな……」
「そうですね。もう、どうしたらいいのでしょう。私たちが加勢したって、状況は何も変わらな……」
「いや、変えられるさ。マリー、あんたなら」
姉さんの突然の発言で驚きました。
「え?私?いやいや、私、みんなよりも魔法が下手なのに…」
「ストームマジック」
「え、姉さん、なぜその名を……」
誰にも見せたことのないはずの技の名前が姉さんの口から出てきて、私は動揺を隠せませんでした。姉さんは続けました。
「はは、私が何も知らないとでも?やっぱりマリーはすごいや。こっそり練習して、みんなを驚かせようとしたんだろ?私にはあんなことできないや。ただの魔法じゃない、自分だけの魔法。これなら、あいつにも、でかい一撃を食らわせられるんじゃないか?」
「そうかも知れませんが……自信ないです……」
「大丈夫大丈夫、私とロミアも近くでステルス使って潜伏してるから。思いっきりやってきな!」
「あ……はい!!」
村を、そしてお父さんやみんなを守るために、自分がやれる精一杯を。その一心で、私達は戦場にかけていきました。
「お父さんを傷つけないでください!私が、相手です!」
「無茶だ……マリー……よせ……まだ、お前じゃあ……」
「へ、お父さんよりもしょぼいお嬢ちゃんに、何が出来る!」
アッシュの挑発に腹が立つのを抑えつつ、私はストームマジック・ファイアの下準備をします。
「さあこいよ……まあ、無駄な足掻きだろうがな……フウーーフェーッヘッヘッヘー!!」
アッシュが余裕を見せている今がチャンスです!!ストームマジック……
「ファイア!!」
火の玉がアッシュに向かって一直線に飛んでいきました。
「へ、しょぼい魔法だ。余裕で消せるわ。マジックキャンセル!!」
やはりその魔法はかき消されてしまいました。だけど、それは1発だけだった場合です。
残り4つの火の玉が、油断していたアッシュに直撃しました。
「ぐはあ!」
弱点を突かれ、ダメージが大きかったみたいです。
「く、くそ……スケルトン部隊!」
彼はまだ隠し玉を持っていたようです。彼が叫ぶと、私は地面から出てきたスケルトンに囲まれていました。
「へへへ……どういう理屈か知らんが一撃もらってしまったが、これは対処できないだろう……ワイドじゃあこの囲まれた状況はなんともできないだろ……はあはあ……」
確かに魔法は広域化しても、指定した範囲全体に影響が及ぶようにするだけ。囲まれた状況はなんともできません。が、私は大丈夫です。なぜなら……
「スプレッドマジック・ファイア!」
この技を使えばいいだけですから。頭上に炎の魔力を凝縮させ、複数のスケルトン目掛けて一斉に拡散させました。スケルトンは一気に燃え尽きました。
「馬鹿な……こんなの想定してない!」
スケルトンの輪を抜け出した私は、一気に距離を詰め、トドメを刺しにかかります。
「燃え尽きてください……!ストームマジック・ファイア!!」
五つの火の玉がアッシュに向かって飛んでいきました。マジックキャンセルではストームマジックは対策できない。これで終わりです。
そう、思っていました。
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