section2 Malie's origin〜変わり者の魔法使い part6
「だがな、理屈がわかっていれば、対策はいくらでもできるんだよぉ……」
アッシュは五連続の火球を全てかき消してしまいました。
「え……なんで……マジックキャンセルは1回だけしか効果を発揮しないはず……」
「いや、だったら5回使うまででしょ。さっきはわからなかったからくらっちまったが、もうくらわんよ。これはお返しだッ!!」
「がはっ!!」
私は思い切り蹴りをくらい、動けなくなりました。非情なアッシュは、さっきとは逆に私にトドメをさそうと、
「これでお前の命は終わりだ!」
思い切り力を込め、腕を振り下ろしました。
「キャーーーーーーーーーーーッ!」
「危ない!パラライズ!」
が、ステルスで隠れていた姉さんがいつの間に現れ、麻痺の魔法を唱え、アッシュの身動きを封じていました 。
「くそ……いつの間に……」
「頭数は悟られないように隠しておくものだよ。あんたがやってたように!」
そして、痛みで動けない私に、ロミアが、
「はい、お姉ちゃん、薬草」
薬草を使い、その効能で痛みが引き、何とか動けるようになりました。
「く……あと少しで痺れが引く……そしたら」
「その時は来ない」
アッシュが麻痺から懸命に回復しようとしていたところに、お父さんがやってきました。
「お前……いつの間に……」
「あれだけ時間があれば痛みは当然ある程度までは引く……よくも娘を!!」
「お、おい……やめてくれ!!命だけは!!」
お父さんは先程かき消された特大魔法をもう一度準備していました。今度は相手が麻痺しているので、確実に当てれるでしょう。
「情などかけぬ……ブーストギガファイア!!」
「ぐはあああああああああああああ!」
アッシュは灰塵と化しました。
指揮官が欠けたことで、周りの大人たちと戦っていた部下は撤退を余儀なくされました。
お父さんは私たち姉妹に向かって語りかけました。
「いや、よく助けに来てくれた。ステファニー、麻痺魔法もしっかり使えててよかったぞ。」
「ありがと」
姉さんは褒められて嬉しそうでした。
「ロミアも、ステルスを上手く使えててよかったぞ。」
「えへへ」
ロミアも同じように嬉しそうな顔をしていました。そして鼻歌交じりでスキップしながらロミアは家へ帰っていきました。
「そして、マリー」
私も褒められるのかな、そう思ってわくわくしていました。が、次の瞬間聞こえてきたのは、
パチーン
平手打ちの音でした。
二人とも予想もしていない展開に目を疑いました。私の頬の痛みがだんだんと自覚させられます。お父さんは続けました。
「今回、一番役に立たなかったのはお前だ。勝手に出てきて、下らない魔法でピンチを大きくして。ステファニーがいなかったらどうなっていたか、もう少し考えろ」
「いや、そんなこと言うなよ父さん!マリーのあの魔法で状況が変わったじゃないか!ダメージだって…」
「だったらステファニーがやったようにステルスからパラライズ、そしてファイアを撃てばいいじゃなかったのか?」
「そんな事言ったら父さんだって魔法反射されてたじゃないか……!」
「いや、隙を見てパラライズ叩き込むつもりだったぞ。トドメを刺す瞬間、そこが一番油断するポイントだ。そこを見計らっていたところでお前達がやってきたんだよ」
「くっ……」
姉さんは言い返せませんでした。
「とにかく、マリー、お前は下らない魔法のために時間を無駄にし、本来覚えるべき魔法の練習を怠っていた。そしてその魔法を強いと勝手に過信し、結果、ピンチを拡げた。型通りの魔法が使えなくて迷惑をかける魔法使い。」
「それを、無能な魔法使いと言うんだよ。」
この一言で、私の自身や誇りといったものは、全て粉々に砕け散りました。
「父さん!言いすぎだ!」
「事実を言っただけだ。そしてステファニー、マリーのようになりたくなかったら、これまで通り、しっかりと魔法の勉強をしろ。道に沿った学びのお陰で、今回のお前の活躍があったのだからな……」
姉さんはこれ以上何も言いませんでした。
私は、たまらず駆け出していきました。
「マリー、待て……」
「放っておけ」
私は、必要ない。私は、無能。私は、ここにいてはいけない……
その言葉が頭の中を駆け巡っていました。
そして、私は思いました。
旅に出よう。そして、魔法使いとは何か、自分の生きる価値とは何か、自分で見つけよう。そう、決心しました。
荷物を取りに、一旦家に向かいました。家には、ロミアが先に帰ってきていました。
「ふんふんふふんふーん」
何も知らず、上機嫌なロミアを横目に、自分の部屋に向かいました。
そして、着替えや杖、魔導書、今まで貯めていたお小遣い。必要だと思うものを鞄にまとめ、部屋を、そして家を出ていきました。
しかし、
「お姉ちゃん?リュックに荷物まとめてどこ行くの?ピクニック?ロミアも連れてって!」
後ろから、ロミアの呼ぶ声がしました。
「だめ。お姉ちゃん、1人で行ってくる。」
「えーーー。んじゃあ、いつ帰ってくる?」
「もう、帰ってこないかもね……」
「え………………」
突然悲しい顔をしながら私はそういったので、ロミアは激しく動揺していました。
「待って!お姉ちゃん!行かないで!」
「ロミア、ごめんね……」
呼び止めるロミアの叫びを聞きながら、私は、この場から駆け出していきました。どういう話が家で行われたのかわかりませんが、誰も追っては来ませんでした。
私は、少ないお金や、本で読んだ食べられる植物の知識、そして魔法を駆使して、旅を続けていきました。が、やはり限界は来るもので、
「アリア?」
数ヶ月したら、私はボロボロになっていました。
「おい、アリア」
そして、限界が来て道端に倒れていた所を、あの人が……
「おーーーーーーーい、アーリーアー、聞こえてる!?」
「フェ!?あ、ライラスさん!うわ、いつの間にこんな所に……」
私が昔を思い出していたうちに、既に私達はセントウェスティアの宿屋についていたみたいです。
「どうしてたんだ?ずーっと暗い顔して……」
「いや……ちょっと昔を思い出していて……」
「ふーん、だってよ、ヘンリー。多分気にしてないぞ?」
呼ばれたヘンリーさんはこっちに来て、
「アリア、ごめんね……僕のせいで嫌な思いをさせてしまったね……」
「いやいや、大丈夫です、気にしてませんから」
「ほんとにそうだといいんだけど……で、どんな事を思い出していたの?」
「話せば長くなるので後で話します」
と、いうか……
「後ライラスさん!邪魔したおかげで続き思い出せなくなったじゃないですか!どうしてくれるんですか!」
「おい……おっぱい揺らしながら激しく動くなよ……」
「今おっぱいと言いました!?ライラスさんの変態!スケベ!」
「変態じゃねーし!?」
ヘンリーとガンドウさんは微笑みながらこの様子を見守っていました。
この後は、夕食を食べ、風呂に入って、そのまま寝ることになり、こうして、この時代に来た初めての1日が終わっていきました。
わからないことだらけで、次に目が覚めた時にどうなっているかもまだわかりません。だけど、私は、精一杯頑張って、私がこの時代に来た意味を、私の生きる価値を、見つけていきたいと思います。
期待と、ちょっぴりの不安を抱きながら、私は眠りに着きました。
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