section1 突然の事ですが巨乳になりました。 part5

 麓の村に到着しました。

 ウェスティア中央山脈の麓の村にある導きの石碑は、ちょうど登山道の入り口付近にあり、すぐ山に登れそうです。

 私が元いた時代では、どんなに辺鄙(へんぴ)な村でも、機械が少なからずありました。少しこの村の様子を見渡してみても、機械がありそう、もしくは使われてそうな雰囲気は微塵も感じられなかったです。どの家も不揃いな丸石の土台の上に木で作られていて、屋根は麦わらで覆われていました。本当に過去、それも数十年、数百年前に来てしまったのだと思います。が、それを知ったところで何も変わらなさそうなので、今は気にしないでおきます。


「では、ここから登りますよー。」


 ライラスさんが呼んでいるので考えるのをひとまずやめてついていきます。


 この山は登る人は多いのでしょうか、登山道はある程度整備されていて歩きやすい気がします。これで登山道が岩だらけで激しい運動を要するものだったら、と思うと少し安堵してます。激しい運動....例えば岩と岩のあいだを飛び写ったり、崖登りをする所を想像してみてくださいよ....こうまで露出が多い格好だとふとした調子にあんな所やこんな所がチラ見えしてしまうんですよ....恥ずかしいじゃないですか。

 そんなところで登山道を少し歩き、傾斜が少し緩やかになったところで休憩をとることにしました。ライラスさんはガンドウさんと話をしているみたいです。何の話をしているのでしょうか。気になっていると、


「ふぇ!?」


 隣から急に肩を叩かれ、驚いて変な声が出てしまいました。肩を叩いたのはヘンリー。


「あはは、びっくりしたでしょ。元のアリアにやったらノータイムでぶん殴られるからね~。やっぱり違う人格なんだね。」

「全く、驚かせないでください!」

「あはは、ごめんごめん。」


 うん、絶対反省してない。


「ところでアリア、君が今使える魔法ってどうなってるの?そこら辺の変化も気になっていてさあ。教えてくれない?」


 なんだ。それを聞きたかっただけですか。だったら驚かせないでください。


「あ、はい。一応全属性の攻撃魔法は使えるはずです。」

「へ!?そ、そんなことがありえるのかい!?」

「え!?」


 私達の世界の魔法について語り始めると時間がかかるのでここでは省きます。

 ヘンリーはここから魔法についてくどくど語り始めました。今必要な情報だけ要約すると、各属性には相性があって、相性が悪い属性の魔法を同時に覚えるには相当な素質があるか相当な努力をする必要があるみたいです。よって、私がこの時代に来る前はアリアさんとヘンリーとライラスさんで足りない属性を補い合っていたようです。


「んで、ほかは...?」

「あ、これだけです。強いていえばスプレッドマジックとかがありますが....」

「何それ聞いたことない、どんなの?」

「えっと、数発分の魔力を集めて一気に拡散させるだけです」

「何それ聞いたことない」

「そうですか....」


 スプレッドマジック。これは私が考えた応用魔法です。でも同じような技っていくらでも作れそうな気がするのですが。


「んでは休憩終わらせて目的地向かいますよー。」


 とライラスさんが言うので移動を始めました。ライラスさんは地図とコンパスと周りの景色を見比べながら先導して下さるようです。そして、ヘンリーが話の続きを始めました。


「んで、ほんとにそれだけ?補助魔法とかはなんにも使えないと?」

「そうですね....すみません....」

「珍しいな....補助魔法使えない魔法使いって....魔法使いって大体は攻撃魔法と何かしらの補助魔法をセットで学んでから旅立ちを迎えるから....」


 そういうと彼はまた魔法使いの常識について語り始めました。長くて要点がつかみにくいから聞いててうんざりします。ホントやだ。しかも大切だったのは最初に話したことだけであとはどうでもいいことでした。途中から話半分で聞いてましたよ。


「んっとまずいみんな!!魔物に囲まれた!!」


 グダグダとした話を聞いている最中そうライラスさんが叫んだので周りを改めて見渡すと、確かに魔物に囲まれてました。凶暴化した狼型の魔物が数体。走っても逃げれそうにはありません。


「行くしかない!!戦闘用意!!」


 ライラスさんの合図で全員が武器を構えます。


 魔物達は私達を包囲し、隙を見て私達に攻撃を仕掛けるみたいです。しかも茂みに隠れたりしているので位置が掴みにくいです。どうすればいいでしょうか。


「狼種は動きが素早いからね……なんとかして動きを止めたいところだよ。たとえば僕のハイウィンドで吹き飛ばしたところをフリーズとかサンダーで叩き落としたり、そもそもフリーズで凍らせるか、意表をついてクエイクを噛ましたりはたまたファイアで茂みを焼いたり……」

「最後の山火事になりそうだから流石にないだろ。というか1番目に出たやつが一番良さそうだからそれでいく……っておいヘンリー」

「弓矢で狙撃したり、ブーメランで一気に薙ぎ払ったり……」

「話聞いてねえ……」


 ライラスさんと2人で苦笑いするしかありませんでした。


「おいヘンリー!!」

「ふぉえ!?今いい作戦考えてたのに邪魔しないd」

「そんなにのんびりしてたらやられるぞ!!もうおまえの最初の案でいいから!」

「あ、そっすか……」


 それならばとヘンリーは狙いを定め魔法を放つ。


「吹き飛べ!ハイウィンド!さあアリア、ライラス、これに合わせて!」

「はい!悪しき魂に天罰を!サンダー!」

「はいよ、くらえ!ワイドサンダー!」


 作戦通り空中にいる魔物を撃ち落とす。


「ガンドウさん、最後お願いします!」

「承知した」


 動けなくなったところを見計らってガンドウさんは構えた大剣を力いっぱい、回転しながら振り抜きました。そしてこれがトドメになりました。


 この連携の滑らかさ、本当にすごいな、と思いました。私が足を引っ張らなくて本当に良かったです。


「じゃ、アイスドラゴンのところに行きますか!」


 そうして私達は襲いかかってくる魔物達を捌きつつ、アイスドラゴンのいる洞窟へ向かったのでした。

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