section1 突然の事ですが巨乳になりました。 part4


 ヘンリーの下りですっかり朝ごはんを食べるのを忘れていました。今目の前に並んでいるのは茶色が濃いめのパンと、卵のスープと焼いた骨付き肉。少しシンプルながらも美味しそうな食事です。パンを手に取り頬張ると、少し硬めの感触があり、噛みごたえがありますが、麦の旨みがしっかりと感じられて美味しいです。そうして食べ進めていると、


「ところでライラス、今日はどこら辺で魔物退治をするんだ?」


 ガンドウさんが今日の予定である魔物退治に話を戻しました。私も気になっていましたので、ちょうどよかったです。ライラスさんの返答は、


「そうですね......アリアの戦力変化も気になるが、次の冒険に向けてお金も貯めていきたい......ウェスティア中央山脈のブルードラゴンでも退治に行きますかね。」


 ブルードラゴン......記憶を辿ると、ぎりぎり知識が出てきました。


「あ、もしかして、あのドラゴンですか?飛龍種で、氷のブレスを吐いてくる。」

「そうそう。ここら辺は覚えているんだね。」


 ライラスさんが手を顎に当て、さらに考察を深めているみたいです。ヘンリーは無視されているのにまだ有名な記憶喪失についてのエピソードについて延々と話を続けています。誰も聞いていないのに話し続けるなんて飽きないのでしょうか。

「と、いうわけだ。ウェスティア中央山脈の麓の村まで転移の石で飛んで、そこから山を登り、ブルードラゴンがいる洞窟に向かう。そういう予定でいきます。」


 ライラスさんが総括しましたが、『転移の石』ってなんでしょうか?ライラスさんに聞いてみました。


「ああ、こっちは知らないのか。転移の石は魔力を込めて使う魔法道具の一種で、『導きの石碑』という物の位置を記録しておけば、屋外にいればいつでもその場所に行ける、という代物さ。」


 なるほどですね。私が元いた場所でも似たようなものがあったので、だいたい想像がつきました。

 ライラスさんは私に説明を終えた後、にっこりしながら未だにマシンガントークを続けるヘンリーの肩を叩きました。彼にとっては突然の出来事だったのか、驚いてようやく話を終えて、ライラスさんを怖がりながら会話を始めました。


「な、なんだよ......そんな含みのある笑顔をして......」

「おいヘンリー、ちゃんと今日の魔物退治についての話、聞いてたかい?」


 ライラスさんは笑顔で言ってますが、少し不気味さが感じられます。絶対話を聞いていないでしょ?そう問い詰めているような笑顔でした。まあ、私もそう思いますね。


「え、ご、ごめん、つい話に夢中になって聞いてなかった......」

 やっぱり......こういう人は嫌われますね。だけど、


「今日はウェスティア中央山脈でブルードラゴン狩りに出かけるため、麓の村まで転移の石で飛んでそこから山を登るところまでしか覚えてなかったから続きを頼む」

「全部聞いてんじゃないかよ」


 ちゃっかりライラスさんの話を聞いていたようです。なんなんでしょうかこの人。変人なのか超人なのかわからなくなってしまいました。


「ご馳走さん。俺は食い終わったから先に準備してる。」

「あ、ガンドウさん。すみません、できるだけ待たせないようにするので......」

「はは、気にするな。準備終わったらゆっくりしてるから。」

 そうしてガンドウさんは少し口元を緩め、そのまま自分の部屋に向かいました。ライラスさんの言う通り、ガンドウさんってそこまで怖くなさそうですね。少し緊張が解けました。


「んじゃ、すこーし急いで飯食うぞ。」


 ライラスさんのその一言から、私達は無言で料理を食べ進めました。

 卵のスープは鳥や野菜の出汁が効いている上、いい感じの塩加減で飲みやすかったです。具材も野菜が多めに入っていて健康に良さそうです。骨付き肉は、スパイスを使って臭みを消しており、食べやすかったです。ここの食事も口にあっていたので、うまくやっていける自信がまた着きました。


 食事を終え、部屋に戻って荷物を整理します。荷物の中には武器が何種類も入ってました。杖に魔導書、ムチ、短剣。その中でも私がすぐ取り出せるようにしたのは、杖。このアリアさんの身体になる前は杖をメインで使っていました。やはりこの体でどこまでやれるかまだわからない以上、武器種だけは使い慣れたものにしておきましょう。そして残りの武器や部屋にあった残りの荷物をかばんにしまい、玄関に出ます。

 入り口には既にライラスさんとガンドウさんがいました。


「すみません!少し遅くなりました!」

「あー、気にしなくていいよー。」


ライラスさんは優しくフォローをしてくれました。


「いやーごめんごめん遅れたー」


 軽い調子でヘンリーもやってきました。


「全く、ヘンリーめ。」


ヘンリーには厳しいんですね....。まあ仕方ないでしょう。あの性格ですし。


「まあいいや。よし、ではいきましょう。『転移の石よ!!我らを定められし導きの石碑へと導け!!』」


 そうしてライラスさんは転移の石を天にかざすと、私達は青色の光に包まれ、目的地へと飛んでいきました。

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