第3話 ルイさんの家に行ってみた。
プールや海水浴にも行ってないのに、顔や腕が真っ黒になった八月後半頃のある日、社長がいつもの軽い口調でぼくに言ってきた。
「今度、ゴンドラ免許講習あるから西嶋君行く?」
仕事が終わり、挨拶して事務所を出てようとしたときに突然言われ、反射的に「はい」と答えていた。
「それじゃ申し込んでおくよ。終わったら事務所まで戻ってきてね」
よく分からないまま、今度ゴンドラの免許講習に行くことになった。
――ゴンドラ免許の講習当日、事前に場所を調べていたので迷わず会場には着けたが、やっぱり緊張する。来る前にみんなから色々な話を聞けたが、どれもこれも「眠たかった」という感想だった。最後にテストがあるらしく、八十点以上取らないと免許はもらえないらしい。役に立つようで立たないアドバイスを受けたが、昨日ルイさんも講習が終わったら事務所に戻ってくるように言ってたけど、なにか用事でもあるのだろうか? もしかしたらお祝いに飯でも奢ってくれるのかもしれない。そして、良い雰囲気を作って、ぼくからの告白を待っているとか――などとつまらない妄想をしてしまった。
――そんなくだらん妄想をしているうちに、講習も進む。
ゴンドラ免許といっても、実際にはゴンドラの操作に必要な資格のことである。労働安全衛生法第59条(ゴンドラ安全規則第12条)により、事業主は従業員にゴンドラを操作する業務に就かせる時は、安全のための特別教育を実施することを義務づけられていて、ゴンドラの操作をしない場合でもゴンドラに乗るときには必要とされるものである。講習内容は、一、ゴンドラに関する知識。二、ゴンドラ操作に必要な電気に関する知識。三、関係法令。四、実技(ゴンドラの操作方法・設置方法・基本操作について勉強していく。
授業は、玉部さん達のいうとおり、とにかく眠たいだけで睡魔との戦いに苦しめられた。チラっと周りを見渡すと、完全に寝ている人やウトウトとしている人などがチラホラと見受けられた。
――授業の終わりにテストを受けたが、普通に授業を聞いていたら簡単に解ける問題であった。その日のうちに、すべての講習が終わり、ゴンドラ取扱業務特別教育修了証をもらって終わった。これでは身分証明証にはならないらしい。
長い一日を終え、社長やルイさんに言われた通り、電車を乗り継ぎ事務所に戻ると電気が消えていた。
――あれ? 戻ってくるように言われていたけど、誰もいない。
誰か待っていてくれるものと思っていただけに期待はずれな気持ちになった。それでも一応事務所のノブに手をかける。――すると、あっけなく開いた。電気が消えていて扉が開いているなんて、どこかの殺人事件のような展開に、少しの高揚感と少しの恐怖とたっぷりの好奇心で、おそるおそる中を覗く。
事務所は薄暗く、誰も居ないようだったが、奥で灯る青白い光が、女の人の影を浮かび上がらせていた。思わず悲鳴を上げそうになったが、よく見るとルイさんだった。
「お帰り西嶋、どうやった?」
「ただいまです。取れましたよゴンドラ取扱業務特別教育修了証」
ぼくはブイサインと一緒に修了証を見せた。それを見たルイさんは、優しく微笑んでくれた。
「それじゃ行こうか」
スマホをしまい事務所に鍵をかけてスタスタと歩き出す。
「どこに行くんですか?」
「ついてくれば分かるよ」
ルイさんは、しっかりとした足取りで歩いていく。遅れまいと後を追いかけた。
近くの駅に行き、そこで、梅田までの切符を買って乗り込んだ。ルイさんと電車に乗るなんて初めてで、何かしゃべらないといけないと思い一生懸命考えてみた。
「西嶋は起きていられた?」
「え? あ、はい! かなりきつかったですが……」
「やろうな、うちなんて、前のオッサンがデカかったからその陰に隠れて寝てたけどな」
ルイさんは、イタズラっぽい笑顔を浮かべる。
「最後のテスト大丈夫でした?」
「隣のオッサンのを盗み見たよ」
豪快な人だと感心するべきか悩んだ。でも、魅力的な人なのは間違いないと思った。
「今度は西嶋の運転でゴンドラ乗せてもらうわ」
「ルイさんより安全運転で操作します」
「生意気なこと言うようになったな」
ルイさんは、軽くぼくの右肩を叩く。なんて幸せな時間なんだろうと、電車に揺られながら、まったりしたハッピータイムが流れているのを肌で感じた。ルイさんと、こんな時間を何度も味わいたいと思いながら、電車は梅田駅へと着いた。
さすがに大阪一賑やかな場所である。人が多く、しっかりルイさんについて歩かないと、はぐれそうな勢いだった。
「――どこまで行くんですか?」
不安になってルイさんに問う。
「もうすぐやから」
そういうだけで、ただひたすら歩く。
そして一軒の居酒屋に入ると、そこには長峰美装の全員が集まっていた。
「おう、きたきたこっちや!」
社長が大きな声でぼくらを呼ぶ。
「無事免許とれたか?」
社長に言われ修了証を見せる。――それを見たみんなから、賛辞の言葉をもらった。
「それじゃ、西嶋くんのゴンドラ免許習得と歓迎会を兼ねた飲み会を開催する」
社長の音頭で、飲み会が始まった。まさか、歓迎会までしてもらえるとは思っていなかったので、凄く嬉しかった。
飲み会での会話の流れは、自分たちがゴンドラの免許を取りに行った時の話で、大いに盛り上がる。ぼくが、何度も寝オチしそうになった話をすると、全員が分かると頷いてくれて嬉しかった。
――宴も盛り上がってきた頃、社長がルイさんに言った一言が、ぼくの心を鷲掴みにした。
「そろそろルイちゃんに、いい男紹介したらんといかんなぁ」
全員が条件反射のように、肩を震わせる。
「そんなんまだええよ」
ルイさんは、アルコールで顔を赤らめながらもグラスのビールを一気に飲み干す。
「主婦って柄じゃないわなルイちゃんは」
バカ笑いをする社長の言葉に、みんな頷く。
「ほっとけ!」
「ルイちゃんに合いそうな男なんて……西嶋くんぐらいじゃないかしら?」
事務員のオバサンがポツリと呟いた言葉が、この場の空気を一瞬にして戦場へと変えた。
「いや~西嶋はないやろ~」
「西嶋じゃルイちゃんにコキつかわれるだけやで」
「もし付き合っても一週間もせず捨てられるで!」
酔っぱらっているせいもあるのだろうが、みんなボロカスに言うので、さすがにへこんだ。
「西嶋とか、絶対にないわ!」
とどめはルイさんに強く否定され、心が砕ける音が聞こえた。そして、外野の男たちからは、ざまあみろという顔で見られた。――しかし、ルイさんに、今は彼氏がいないという情報を得たのは大いなる一歩である。ぼくでも頑張り次第では、ルイさんの彼氏にもなれる可能性が、残されているのだからだ。
「――そうや、ルイちゃん独立の準備すすんでるのか?」
「ぼちぼちですよ」
何気ない社長とルイさんの会話は、まさに青天の霹靂であった。
「――え!? ルイさん独立するんですか?」
我が耳を疑い、もう一度ルイさんに問い直す。
「今すぐってわけやないけどな。それがうちの夢やからな」
夢という言葉を使った後、ルイさんは、ぼくの方をチラリと見た。前にぼくが、「マンガ家になるのが夢です」って言った言葉を覚えていてくれたんだと、嬉しくなってビールを一気に飲む。
「――ぼく、ルイさんにまだまだ教えてもらわなあかんことあるのに、まだ居て下さいよぉ……」
ルイさんが長峰美装を辞めて独立するのは残念で寂しくて、つい愚痴のように呟いていた。
「だからすぐってわけやないから!」
「じゃあいつなんですかぁ?」
「分からん言ううてるやろ!」
ウザくなったのだろう、ルイさんはぼくの頭を叩き立ち上がる。
「すみませんルイさん。どこにもいかないでください」
酔っているせいもあり、感情がうまくコントロールできず、情けない自分を晒している自覚だけはあった。
「うっさいねんトイレや!」
「早く戻ってきてくださいよ」
うるさい! と最後に怒鳴って行くルイさんの後姿を、なんだか本当に遠くに行ってしまうような気がして、泣きそうに見送った。
「西嶋くんは、ルイちゃんのことが好きなんか!?」
社長が笑顔を浮かべ訊いてきた。そんなにはっきりと聞かれると、否定しずらかったが、肯定する勇気もなく俯く。
「……こいつ、ほんまに分かりやすいなぁ」
玉部さんの言葉で、みんなが同意するように頷く。それを見て、ぼくの気持ちがみんなにバレている事が分かり、恥ずかしくて、穴があったら入りたい気分になった。
「ルイちゃんの方はどうなんや?」
「さぁな、その辺りはまったく読まれへんからなルイは……」
山岸さんの一言に、みんな大きく頷く。そんな話をしていると、トイレの方でなにか大騒ぎしている声が聞こえてきた。覗いてみると、ルイさんが男と何か揉めている様子だった。
「ルイさんがケンカしてる」
「あいつまたか!」
誰が言ったか分からないが、みんなでルイさんを止めに向かう。
「かかってこいボケェ!」
ルイさんは、店員に羽交い絞めにされながらも、足で男を蹴ろうと振り回す。ぼくたちが間に入り、ルイさんを宥めようと話した。しかし、そんなことで止まらないのがルイさんだ。
店員さんによると、ルイさんがトイレに入る前から男がナンパしてきて、トイレからでてもしつこくナンパしてきたので、ルイさんが突き飛ばしたらしい。それに男が怒り掴みかかると、ルイさんは拳で男の顔面を殴った。そこからは、男がブチ切れ、ルイさんも狂犬ぶりを発揮して、ここまで騒動が発展したそうだ。
店員やぼくたちで、向こうの男を宥め、事なきを得たが、席に戻ってもルイさんは不機嫌にお酒を飲んでいた。
「お前ら何で止めたんや。もっとルイちゃんにやらしたったらよかったのに!」
お酒を飲みながら、無責任な言葉で社長が茶化す。
「気にしないで飲み直しましょうルイさん」
ぼくの注いだビールを一気に飲み干す。
「……気分悪いんでお先に帰ります社長」
「なんや、ルイちゃんもう帰るんかぁ」
みんなに軽く会釈して、ルイさんが席を立った。
「ぼ、ぼくも帰ります」
ルイさんが心配で、送っていこうと後を追いかけた。
「西嶋ぁ、送り狼になるなよぉ~」
「そんな根性あるかいな!」
冗談と笑い声が飛び交う宴会ブースから、逃げるように離れると、店を出たルイさんに急いで追いつこうと走る。
「――ま、待ってくださいルイさん、送りますよ」
「お前に守ってもらわなあかんようになったら、うちも終わりやな」
冗談かマジなのか分からないことを言いながら、ルイさんは待ってくれていた。
夜行性の人たちにとっては、まだまだ宵の時間だろうが、ぼくたち掃除屋は朝が早い分、夜は早めに就寝する人が多い。久しぶりに歩く繁華街は、大勢の人がお酒に酔い楽しそうに雑談をしながら歩いていた。そんな中をルイさんと歩いていると、気になるのはすれ違う人の視線だ。みんなルイさんを見てくる。それほど綺麗なのだが、綺麗な薔薇にはトゲがあるを具現化したようなルイさんには近づかない方がいい、特に、今は誰も近づかない方が絶対にいい、と思いながら繁華街を歩いていた。
「――ほんまよかったな、ゴンドラ免許取れて」
喧騒が響く街中で、ルイさんがポツリと呟いたのを、かろうじて聞き取れた。
「ありがとうございます」
「……あのままゴンドラ乗れんようになってたら、うちのせいやったからな」
ルイさんは、ぼくがゴンドラから落ちそうになった事件を、今も気にしていたんだと、この時はじめて知った。やっぱり、優しい人なんだ。
「でも、こうやって無事免許取れたんで、気にせんといてください」
「……悪酔いしたみたいやな、あんたに慰められるなんてな」
「まだまだ頼りないかもしれないけど、話ぐらいならいつでも聞くんで、言ってください」
「生意気言うな!」
おもいっきりケツを蹴られた。――でも、一瞬だけど、ルイさんが照れているように見えた。でも、それは、アルコールで顔が赤く見えていただけなのかもしれなかったが、ぼくは、照れたのだと思うことにした。
家まで送ると言ったのだが、駅まででいいと頑なに断られ、駅までルイさんを送り、そこで別れた。
――帰り道、複雑な思いに思考が巡る。
それは、ルイさんに彼氏いないのは嬉しい情報なのだが、いずれ独立するって情報は、とても寂しものだった。タイムリミットがいつなのか分からないが、ルイさんともっとお近づきになりたい。ならなければならないのだが、どうすればいいのか、まったく見当がつかなかった。
「――で、こんな時間に俺に電話してきたと……」
「こんな相談できるのお前だけだろ~聞いてくれよ……」
ベッドに横たわり、中学時代からの親友で、ぼくのマンガなどのアドバイスをしてくれる井上に電話で相談していた。すると、井上の呆れた様子が電話越しにでも伝わってきた。
「頑張れとしか言えないな」
「なんだよそれ、こっちは真面目に悩んでるんだぞ」
「……マンガのアドバイスはできるが、彼女のいない俺に何を求めているんだ」
「マンガのアイデアだと思ってアドバイスしてくれ~」
「なるほどな……盛り上がるためにはもう一波乱あるほうがいいと思うぞ。例えば、焦った主人公がヒロインに告白して振られるとかどうだ」
「ぼくに死ねと言っているのか」
「何を言っている。この告白はヒロインに主人公を意識させるために必要な布石じゃないか!」
本当にマンガのアドバイスをしてきた。
「もうええわ!」
「――んだよ、話が盛り上がってきたとこやのに……まぁ、頑張れや」
何を頑張ればいいのか分からないが、とにかくルイさんがいる間は、仕事について色々教えてもらおう――そして、告白できるところまで頑張ろうと思った。
――ゴンドラの免許を取ってから一週間、特にルイさんとの仲が進展するでもなく、何事もないまま過ぎていった。仕事では、何度かゴンドラに乗せてもらったりして、多少トラウマを克服しつつはあった。
そんな中、ぼくは六尺の脚立から足を踏み外して落ちた。不運なことに右足のふくらはぎを切り、さらに捻挫をしたのだった。
「大丈夫か西嶋」
近くにいたルイさんが、すぐに駆けつけてくれた。ルイさんにばかりミスしてるところを見られて、本当に自分が嫌になる。
「……大丈夫です!」
すぐに立ち上がろうとしたが、痛みでよろけたぼくをルイさんが支えてくれた。
「無理すんな、車にバンドエイドがあったはずやから連れてったる」
ルイさんになるべくよりかからないように踏ん張って歩こうとしたが、それが余計に歩きにくくしてふらついた。
「遠慮せんと、こっちに体重かけや」
ルイさんの方へ引き寄せられ、ぼくの顔がルイさんの髪に埋もれる。その時、ふわっと、いい匂いがして、理性が羽根を生やして飛んでいきそうになった。
「寄り掛かり過ぎや!」
ルイさんは、頭でぼくの顔を押しのける。
「す、すみません……」
そのお蔭で、理性はぼくの心に留まることが出来た。それでもルイさんと密着している状態は変わりなく、服の上からでもルイさんの肌の柔らかさや温もりが伝わり、邪な気持ちが鎌首をもたげ始める。――しかし、例え、ぼくがルイさんに襲い掛かったところで、逆にボコボコにされるのがオチだろう。なんてことを妄想しながら、その妄想に一喜一憂しながら、ルイさんの肩を借りてハイエースに辿り着いた。
荷台に座り、傷口を綺麗なタオルで拭いている間に、ルイさんがバンドエイド探してきてくれた。
「そんなに深く切ってない見たいやから、良かったな」
傷口を見ながら、ルイさんはぼくの顔を見て微笑を浮かべてくれた。
「……こんなドジなぼくが、この仕事やっていけますかねぇ」
自分の不甲斐なさに嫌気がさして、つい、ルイさんに愚痴ってしまう。
「男がウジウジすんな!」
落ち込んでいるぼくを励ますように、傷口を思いっきり叩きハッパをかけてくれた。――ルイさんの励ましは、かなり痛くケツが少し浮いた。
「……ウジウジするのはみっともないと思うんですが、それでも自分が情けないですよ」
好きな女の人の前では恰好良くしたいし、頼られるぐらいはしっかりしたいと思う。それだけに、理想と現実がかけ離れずぎて落ち込んでしまう。そんなぼくを見かねたようにルイさんは立ち上がり、自販機でジュースを買ってきてくれた。
「……うちなんかもこの性格やから、よく怪我したもんやで」
「ルイさんが!?」
「うちだけやなくて、この会社にいる全員が大小の違いはあっても、ケガの経験はしてるんやで……千石さんなんて三尺の脚立から落ちて、アゴに怪我したことあるんやから」
含み笑いを浮かべながらルイさんが話してくれた。
「アゴって痛そうですね」
つられてぼくも含み笑いを浮かべる。
「他の会社の人なんか、ビルとかにある間仕切りの透明なガラスあるやろ、それに全速力でぶつかって、割った人もいるんやで」
笑い声を殺しながらお腹を抱え笑うルイさんに、ぼくも同じように笑っていた。
「――で、その人の股間にガラス片が刺さったんやて!」
ここで大爆笑するルイさん。男としては、その出来事は笑い事では済まず、自分のまで痛くなった気がした。
「いろいろあるんですね……」
「他にもいろいろあるでぇ……時間があるときにゆっくり話たるわ――そんな訳で、みんな失敗やドジな事はやってるんや気に病むことないからな」
涙を浮かべるほど笑った後、ルイさんは慰めるように締めてくれた。そう言われてもやっぱり落ち込んでしまう。
「――ルイさんは、どうやって怪我したり失敗した時立ち直っているんですか?」
「……うちは帰って酒飲んで寝るとか、他には……これは誰にも言ってないねんけどな、夢を話してくれた西嶋やから教えたるけど、誰にも言ったらあかんで」
口元に人差し指をたて、微笑を浮かべ話してくれた。
「――中学卒業して高校も行かずパチンコ屋でバイトしていた時、そこで出会った男と付き合って一緒に住んだんやけど、ケンカばっかりで上手くいかず半年ぐらいで別れて、その時は自分でも驚くほど落ち込んだんや」
ルイさんから、以前付き合っていた男の話をされると、胸の奥が焼けつくような感じで嫌だったが、昔の話だと何度も自分に言い聞かせ、黙って話を聞いた。
「――そんな落ち込んでた時に、商業ビルをプラプラしていたら、気がついたらビルの最上階から街を見下ろしてたんや……そしたら、目の前にゴンドラが現れて、めっちゃビックリしてな――」
微笑を浮かべながら話すルイさんは、今まで見たことがないほど素敵な笑顔を浮かべていたので、ぼくも微笑を浮かべながら聞いていた。
「元々高い所が好きやったから、ゴンドラ見た時にはいっぺんに惹かれてな――んで、この仕事はじめてん」
語り終えたルイさんは、まるで、やんちゃな男の子のような笑顔を浮かべていた。その笑顔に、今日の失敗や自分の不甲斐なさが消し去られるような、そんな気持ちを味わえた。こういうのを、癒されるというのだろうと思った。そして、ルイさんもぼくと同じような体験で、この仕事を始めたと知り嬉しかった。
「それ以来、この仕事をしていても嫌なことがあったら、時々高層ビルの最上階から景色を見に行ってる」
「――ぼくも行ってみたいな、その場所」
自然と口をついて出た言葉に、自分でも驚いた。
「――そのうちな!」
ルイさんはぼくの膝を叩き、仕事に戻る合図をして立ち上がる。少し休んだおかげで痛みは治まり、激しくは動けないが、普通に動く分には問題がなかった。前を歩くルイさんの背中を見ながら、ルイさんが、「そのうちな」と言ってくれた言葉を、心で反芻してニヤけていた。
――家に帰りルイさんの話を思い返してみた。すると、何かが降りてきたようにインスピレーションが湧き、それを思いつく限りノートに書き留める。そこから、より鮮明に形づける為にキャラクターデザインをする。思うままに描いたヒロインは、ルイさんに似ていた。――でも、これでいいのだと思った。今までこれほどしっかりとイメージできたキャラクターはいなかったのだから、その思いがきっと読者に伝わるんじゃないかと思えた。とにかく今は、思いのまま描き、それを井上に見てもらって感想を聞けばいいと思いながら描き進めた。
――ルイさんが思い出話をしてくれた日から、自分の中でルイさんとの距離が近づいたような気がして気分がよく、嫌味な警備の人の対応や内部に入ってブラインドを開けて文句を言われたり、仕事でミスして玉部さんに怒られたりしても、すべて聞き流せるほど心に余裕があった。プライベートのマンガの方も順調にストーリーが浮かび、怖いぐらいすべてが順風満帆だった。
そんなある日、社長がいつもの「近くの中華やでメシでも食う?」ぐらいの軽いノリでぼくに聞いてきた。
「西嶋くん、今度ルイちゃんとロープ講習いくかい?」
「……ぼ、ぼくなんか行っていいんですか?」
「今年からロープ作業するのに免許がいるようになったんやけど、今まで日程が合わず、うちだけまだ取れてなかってな。どうせやったらあんたもどうかってうちが言ったんよ」
ルイさんがぼくを誘ってくれたと聞いて舞い上がり、二つ返事で了承した。
――それから二週間後、ロープ講習当日、ぼくとルイさんは講習が行われる駅前で待ち合わせをした。こんな風に駅前で待ち合わせなんて、まるでデートをするような錯覚にとらわれ、落ち着かない気分で、何度もショーウインドーのガラスに映る自分を姿を確認する。
「早いな西嶋……」
「いえ、今来たところです」
女の人に一度言ってみたかったセリフが言えて、心でガッツポーズをとる。
「西嶋……頑張ってお洒落してきたのは分かるけど――それ場違いやで」
黒いシャツにグレーのベストを着てカーゴパンツと、この日の為に揃えた服装だったが、明らかに場違いな格好に、ルイさんは笑いを堪えていた。ルイさんはいつもの作業着だったので、顔から火が出るほど恥ずかしかった。さらに会場に着くと、講習を受けに来た人たちも全員が作業着であった。
周りからヒソヒソと忍び笑いが聞こえ、穴があったら入りたい気分だった。ひとしきり笑った後のルイさんは、周りの様子を気にするそぶりも見せずに、ぼくの傍らにいてくれた。
――ロープ講習とは、ロープ高所作業特別教育のことを言い、その概要は高さが二メートル以上で作業床を設けることが困難な箇所において、労働者が昇降器具を用いて、当該昇降器具により身体を保持しつつ行う「ロープ高所作業」。その危険防止を図るため、労働安全衛生規則が一部改正され、平成二十八年七月一日からロープ作業をする者はロープ高所作業特別教育を受けることが義務付けられたのだった。
学科四時間と実技三時間の計七時間の講習を受ける。学科はゴンドラの時と同じで、眠たくなり寝そうになったが、なんとか起きていた。その要因は、隣でルイさんが熟睡していたからだ。学科でテストがあったらぼくの答案を見るつもりで、誘ったのではないだろうかと、少し疑ってしまった。
午後からは実技で、メインロープ等の点検、ロープ高所作業の方法、墜落による労働災害の防止のための措置並びに安全帯保護帽の取扱いについて学んだが、実際に足場を組んだところから一人ずつロープを降りる。ルイさんはもちろん経験者なので、流れるような段取りでスムーズに降りていたが、ぼくはモタモタとしてしまい教官から何度か注意を受け、ようやく降りることが出来た。
――すべての講習を終えた頃には、仕事をしている時よりも疲れが全身を覆う。
「終わった終わった」
大きく伸びをするルイさんの横で、ぼくは鉛を背負っているような足取りで歩いていた。
「講習は受けたけど、実際にロープを降りるのは、まだまだ不安ですよ」
「大丈夫やって、昔はこんな講習なくて、先輩に教えてもらいながら覚えていったもんなんやから」
弱音を吐くぼくに、ルイさんは励ましの言葉をかけてくれた。このままじゃ、ただのかまってちゃんのような男になってしまいそうな自分を否定する為に、高層ビルからゴンドラに乗り込むぐらいの覚悟で、ルイさんを食事に誘おうとした。
「――あ、あ、あのルイさん」
「ん?」
ルイさんは立ち止まり、正面からぼくと向かい合う。まっすぐルイさんの目を見るのが恥ずかしくなり、目を逸らしそうになったが、ここで逃げたら一生後悔しそうだった。
「あのですね、ルイさん……」
「だからなんやの?」
「その、ですね……」
たかだか食事に誘うだけで、こんなに勇気がいるものかと、自分のチキンぶりに内心苛立ちを感じた。
「用事ないんやったら帰るで!」
しびれを切らしたルイさんが、足早に駅へと向かう。その後姿を見て、このままルイさんが遠くに行ってしまうような不安な気持ちが心を覆い腕を伸ばした。
「待ってくださいルイさん」
「用事あるんやったらさっさと言いや」
「よ、よければお食事でもどうですか!」
ついに言えた。全身の毛が逆立つような、ひりついた感覚が、奥底から湧き上がる。後はルイさんがどう応えてくれるかだが、――その答えを聞くまでの時間が、とても長く、まるで、死刑宣告を受ける囚人のような気分で、とても息苦しかった。
「――メシ食べるだけで大袈裟なやっちゃなぁ」
ルイさんは、呆れ顔でぼくを見つめる。
「ぼく、ルイさんみたいに慣れてないですから――いてッ」
聞き終える前にルイさんは、不機嫌な顔でぼくの頭を叩いた。
「うちかって、そんなに慣れてないわ!」
「す、すみません……」
気まずい沈黙が二人の間に横たわる。フォローしようと焦れば焦る程、なにも思い浮かばなかった。
「……で、どこに連れて行ってくれるの?」
「あっ!? ルイさんが行きたいところならどこでも」
「じゃ、フランス料理が食べたいわ」
「フ、フランス料理ですか……」
フランス料理っていくらぐらいするんやろ――今持っている所持金を思い出して、それで足りるかどうか考えた。それからフランス料理ってどこで食べれるか検索して、お店を決めてから予約をしなければならないんだよなぁ――など色々な事を考える。
「……冗談や……どれだけ真面目なんや、本当に大阪人か?」
ルイさんは呆れた表情を浮かべ、大きくため息を吐いた。その後は、小動物を見るような目つきで、ぼくを見つめ微笑みを浮かべる。
「……それじゃ、何にしましょう?」
「それぐらい男やったらビシッっと決めたり」
ルイさんにハッキリ言われ、目が醒めたおもいで決心する。
「じゃ、焼き肉でもどうですか!」
「お! いいねぇ、それにしよう」
一発でOKがもらえて嬉しくなり、小躍りしたい気分となった。
「どこの焼肉屋にします?」
「だから自分で考えろってゆったやろ!」
またまたルイさんに叩かれた。本当に学習能力のない男だと、自分でも殴ってみた。
――どこの焼肉屋に入るかは、三十分ほど時間をかけぼくが決めたが、お店に入ってからは、ルイさんのイラ立ちが頂点に達していたのだろう、イニシアチブを取って注文をする。
それから、ルイさんとロープ講習での話で盛り上がり、焼き肉を食べてビールを飲んで楽しい時間を過ごせた。ルイさんも上機嫌そうに焼き肉を食べ、いつもより
帰り道も、仕事の話をしながら歩いていると、時間を忘れるほど楽しく濃密なものに感じられた。
――最寄駅を降りてから、ルイさんの家は歩いて十分ほどの距離であった。
「ここがうちの家や」
ルイさんが指し示した家は、三階建てのハイツで、そこの二階に家族と住んでいるそうだ。家族は両親と弟の四人らしい。お母さんは長距離ドライバーで、時々しか家にいないみたいで、お父さんは土木関係の仕事をしていて、二つ下の弟は夜勤のバイトをしているそうだ。
「……それじゃ、ぼくは」
後ろ髪を目一杯引かれながら、帰ろうとした。
「――ちょっとよっていきや」
まさか、ルイさんから誘われるとは思わず、かなり複雑な顔をしていたんだろう、ルイさんがぼくの顔を見て笑った。最近は心臓の鼓動が速く打つことにも慣れたと思っていたが、この予想外のお誘いは、また違った鼓動の速さで戸惑う。ルイさんの後をついて階段を上がっていると、目の前にルイさんのお尻が飛び込んできて、頭は邪な妄想を展開させ、心臓が下半身に大量の血液を流す。
――気が早い! 落ち着け、収まれ!! と何度も何度も念じた。
そして、ルイさんの部屋の扉が開くと、中は真っ暗だった。もう家族は寝ているのだろうかと思い静かにお邪魔した。部屋は2LDKでタンスとテレビと本棚があるぐらいで、あとは意外なほど散らかっていて驚いた。
「誰もおらんみたいやな……その辺適当に座っててな」
ルイさんの言葉に、ぼくの心臓はうるさい程脈打ち緊張のあまり大量の汗があふれ出てきた。この部屋に二人っきり――これは邪な考えを起こすなという方が無理な相談であろう。ぼくは、ここでドーテーから卒業するのかと思うと、卒業する場所がどういう所か、しっかり見たいという欲求で、見てはいけないと思いつつ色々な物を見てしまう。
「ビールしかないけど飲む?」
リビングの方から声が聞こえた。
「いえ、結構です」
これ以上飲むと、初めてを覚えていないことになりそうだし、しっかりデキなかったら困ると思い断った。
「散らかっててごめんな」
ビールを片手に、ルイさんが戻ってきた。
「そんなことないですよ」
「みんなあんまり家にいないんや」
そういった時のルイさんの顔には、少し寂しさが浮かんだように見えた。
「ぼくの部屋より片付いていますよ」
「意外やな、西嶋の部屋って片付いてそうなイメージやったわ」
笑いながら、美味しそうに缶ビールを二口ほど飲む。部屋が片付いているとか片付いていないとか、今はそんなことなどどうでもよかった。掃除屋の仕事を初めてした時よりも、ゴンドラに初めて乗った時よりも、どんな経験よりも今が最高に緊張していた。
「ようやくロープの免許も取れたし、一安心やわ」
その言葉に、ルイさんの独立話を思い出す。このままルイさんが独立したら、こうやって食事する機会や一緒に話す機会がぐんと減ってしまうと思うと、臍の下から熱いものが込み上げ、ぼくを衝き動かそうとしていた。
「あ、あのルイさん……ぼ、ぼく――」
「――入って入って」
玄関の方から男性の声が聞こえた。
「おじゃましま~す」
男の声に続いて、甘い女性の声も聞こえた。
「またか……」
ルイさんの声のトーンと表情は、今までみたことがないほど険しく恐ろしいものだった。
「――なんや、ルイおったんか」
ぼくたちのいる部屋に、日焼けした屈強なガタイの男性と、いかにも水商売風の着飾った女性が現れた。
「あんたも珍しく帰ってきたんやな」
親子の会話とは思えないほどギスギスした空気が漂っていた。ルイさんの親父さんが何かを言いかけた時、ぼくの存在に気づき、三日月形に口を開いて泥酔した濁った眼でぼくを見る。
「お前、珍しく男連れ込んで、ええことしようとしてたんか?」
親父さんは、下卑た笑顔を浮かべ、ぼくとルイさんを交互に見る。
「お嬢ちゃんのお楽しみ邪魔したら悪いから、どこかいこうよぉ」
「気にせんでええわ、どうせこいつらもはじめよるんやろうからな」
お父さんは、水商売風の女性に抱きつき首筋にキスをする。それに少し抵抗を見せながらも、まんざらでもなさそうな声を出す。
「一緒にすんなボケ!」
ルイさんは、落ちていたライターを親父さんに投げつけた。
「父親に向かって何さらしとんじゃ!」
親父さんが声を荒げ、ルイさんの胸倉をつかむ。
「親父らしいことなんてしたことないくせに偉そうに言うなボケェ!」
「誰にボケとかいっとんじゃ!」
お互いの胸倉をつかみながら、激しくののしり合うルイさんと親父さんに、ぼくと水商売風の女の人はなす術なく見守っていた。
「オカンが仕事でおらんからって、いろんな女連れ込んでええ加減にせいよ!」
ルイさんが親父さんを蹴り飛ばすと、テーブルに激しくぶつかり、いろんなものが散らばった。心配した水商売風の女性が親父さんに駆け寄る。
「このガキ親に手あげてどうなるか分かってんのか!」
駆け寄った女性を突き飛ばして親父さんが立ち上がり、右手を大きく振りかぶる。それを見たぼくは、ルイさんが殴られると思って自然と体が動いた。
鼓膜に骨が軋む音と、肉が叩かれる乾いた音が聞こえて、今まで味わったことがないほどの痛みが顔中に広がった。咄嗟にルイさんをかばって殴られたが、勢いが強く、そのままルイさにぶつかり一緒に倒れた。
「なんじゃいおどれ邪魔すんな!」
倒れたぼくとルイさんに罵声を浴びせる親父さん。
「お前なにしてんじゃあああ!!」
荒れ狂う大型犬のような勢いで、親父さんに向かおうとするルイさんを、しがみつき止めた。
「ダメですよルイさん、よしましょう!」
「こいつお前殴ったんやぞ、放せや!」
「ぼくは平気ですから!」
止めるぼくを振り払って、親父さんに襲い掛かろうとするルイさんを、必死に止める。ケンカして、ルイさんが怪我するのを見たくなかった。その気持ちだけで、ぼくはルイさんを止め続けた。
「ケンカするんやったらあたし帰るで」
水商売風の女性が立ち上がると、親父さんは腕を引っ張り引き倒した。
「怒んなって……早くこっちで楽しもうか」
娘の前だというのに、他の女と平気でイチャつくこの神経はどこかおかしいと思った。
「クソが!」
ルイさんは吐き捨てると家を出た。急いで後を追う。あまりに衝撃が大きすぎて、理解が追い付かないまま一階にある自転車置き場にきていた。ルイさんはそこにあるスクーター型のバイクにまたがる。
「はよ乗り」
ヘルメットを渡され、その流れでバイクの後ろにまたがった。バイクの振動をお尻に感じながら、ルイさんの後姿を見つめた。もし自分の父親があんな風だと思うと、ブルーな気分になった。ルイさんはそれをずっと見て育ったんだと思うと、何かしてあげれることはないかと、ルイさんの後頭部を見つめながら真剣に悩んだ。
ルイさんは、バイクを走らせている間一言もしゃべらず、ぼくもなんて言っていいか分からず、黙ったままバイクの後ろに乗っていた。
夜の街の風は冷たく、どことなく切なく感じた。深夜の道は車の数も少なく、三十分ほどで家に着いた。
「――あんた、殴られたトコ大丈夫か?」
心配そうに殴られた頬を見てくれた。
「たぶん大丈夫です」
「そうか」と言うと、ルイさんは俯き黙り込んだ。こんな時なんて声をかければいいか分からず、一緒に黙ってしまっていた。――すると、ルイさんは突然噴き出す。
「普段は頼りないのに、時々無茶するよな西嶋は――」
ルイさんは思い出したように笑い出す。そんなルイさんを見て、少し安堵する。
「無茶の度合いでは、ルイさんには負けますよ」
「うちのは、無茶というよりめちゃくちゃなだけや」
笑いを収め、どこか寂しそうに微笑んでいた。
「最後はこんなんになってワルかったな……でも、楽しかったわ。ほなお休み」
ルイさんがヘルメットをかぶり直す。
「ルイさんはどうするんですか? 家に帰るんですか?」
聞いてどうするんだと思いつつも聞かずにはいられなかった。
「うちか……うちはマンガ喫茶でも入って時間潰すわ」
微笑を浮かべるルイさんに、なんて声をかけていいか分からず、この時ほど独り暮らしをしていたら呼べたのにと思えたが、そんなことで、男の家に上がるルイさんではないとも思えた。今、ぼくにできることは、ルイさんの傍にいてあげる事だと思い、おもいきって口にした。
「……ぼくもマンガ喫茶付き合いますよ」
「そんなんええわ」
「でも、ぼく……」
「そんなんに付き合わせて、寝不足のあんたが怪我せんともわからんからな」
「……す、すみません」
自分の信用のなさに、心がポッキリ折れた思いだった。
「……冗談や、マジでとるなや」
ルイさんは、軽くぼくの胸を叩いた。そんなセリフがでるってことは、どこかでそう思っているんだと、全面的にルイさんの言葉を信じれなかった。
「――あの、ぼく、頼りないかもしれないけど、その、た、頼って下さいルイさん!」
なけなしの勇気を総動員して、どもりながらも、なんとか伝えることが出来た――と思う。
「ありがとうな……でも、しっかりロープ降りれるようになってからやな」
少し、いつもの笑顔が戻ったようにみえた。
ルイさんはエンジン音を響かせ、颯爽とバイクを走らせていった。
その後姿を見守りながら、ぼくは一人暮らしをする決心をした。
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