第10話:純情ラッパー

 冗談だろ……?

 オレがラップ。

 そんなのやった事がないんだ。

 出来るはずがない。


「やれってボーイ。」

 ヤスが焚き付けた。


「そ~だ。やれやれ~童貞ボーイ

!!」

 ダンサーにキララ様。


「童貞じゃないですって……。」

「だっから、それをラップで

表現するンだよ。」

 と先輩。


 何を言ってンですか……。

「無茶ですよ…。

オレ、ラップなんか、やった事も

ないンだから……。」


「そんなの関係ね~よ。

お前の怒りや感情……、

素のままのソウルを吐きだしゃ~

いいんだ。」


「ソウルって……。」

 ビーズじゃないンだから……

あれは、ウルトラか……?


「ラップなんか、元々、

ストリートで燻(くすぶ)ってる

ヤツらの魂の叫びなんだ。」


「魂の叫びって、そんな……、

大ゲサですよ……!!」


「いいから、行くぞ。」

 ってヤスが見切り発車。

 ボイパを始めた。


『テュク テュク テュ~🎵』

 おいおい、オレの気持ちも知らずに、イイ気なモンだ。


 キララ様たちも

ヒュ~ヒュ~っと囃し立てる。

 ヤスのボイパがリズムを刻む。


 一瞬、愛梨と飯野が、

「童貞ボーイ」

 と揶揄(やゆ)する光景が

脳裏を過(よぎ)った。


 オレは、半ばヤケくそになった

「あ~ーーー、もぉ~、

わかりましたよ。やりゃぁ

いいんでしょ。」


「よ、頑張れよ。童貞ボーイ。」

 ダンサーが横で踊ってくれた。

 たわわなオッパイが揺れる。


 だが、見惚(みと)れている

ワケにもいかない。


「く、も~、どうにでもなれって

……。は~~!!」

 とオレは、大きく息を吸った。








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