第12話「僕と私の夏祭り」

 僕が待ち合わせ場所に来たのは15分前だった。

 『僕』は5分前にやって来た。

「ごめん、待った?」

「いや、今来たところだよ」

 これは打ち合わせしていたわけじゃないが、デートっぽさを出すためのアドリブだった。

「それじゃあ、行こうか」

 そういって『僕』は歩き出し、僕は『僕』の15センチ手前を歩く。

 その15センチの距離が、何だかあまりにも遠く思えた。

「とりあえず、何食べようか?」

「リンゴ飴とかどうかしら」

 僕はお祭りの時のリンゴ飴もそれなりの楽しみだったため、こう答えた。

「それじゃあ僕が買ってあげるよ」

 結局それは僕のお金なわけだが、予算は守ってくれているので文句はいえない。

 実際、こういう時は男性の側がリードする物だし。

 すると屋台のおじさんがこういってきた。

「かわいこちゃんを連れているから、張り切っているんだね」

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