第8話「僕と私のプール日和」

 ともかく、僕達はプールに居た。

 更衣室でも女性はやはり隠すところを隠していたし、そもそも僕は極力他人を視界に入れないよう努めた。

 よって他人の更衣については触れないし、書けない。

「しかし、何だってあなたも来たの?」

 僕は『僕』に聞いた。

「記憶を失う前は気楽に来れなかった気がするからね」

 吹雪は何をやっても目立ってしまうので、こうしてプールに居ただけでも騒がれるのだろう。

 今吹雪の身体になってる僕は彼女の友人であるかなの誘いを受けて来たのだが、

彼女はそうでもないといけなかったのかもしれないと思った。

 もし友人とであれば、騒ぎになってもフォローして貰えるのだろうし。

 とにもかくにも僕達はあくまで『赤の他人』でしかないが、

事故にあった者同士という感じになっていた。

 なのでこうして話していてもあまり違和感は持たれないのだが、

いかんせん長時間接触しているとボロを出しかねない。

 人目につかないところであれば別段構わないのだが、こういう人の集まるところでは不味い。

 さすがに入れ替わりが現実となっているなんて思わないだろうが、

それでも燻がられる羽目になりかねない。

「ともかく、また会おう」

 僕は『僕』にそういって別れた。

 入れ替わりの原因は分かっているのだが、伝承を鑑みればすぐには戻れない。

 だから僕達は偶然会ったとしても、機が来るのを待つしかなかったのだ。

 なので、僕は予定通り流れるプールで泳ぐことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る