第4話「僕と私の学校生活」

 幸いだったのは、僕たちの入れ替わりは二学期の末だったことだ。

 なのであまり学校に行かなくても済んだ。

 記憶喪失のふりをすることにしていたとはいえ、長期間学校に通っていたらバレそうだったし。

 メッセージアプリの指示に従い身支度を整え、僕は学校へと向かった。

「吹雪さん、記憶喪失なんだって?」

 女子は噂話が好きだっていうのは本当みたいで、

翌日の朝であったにも関わらずもうそんな話題が飛び交っていた。

「海翔くんがクッションになったおかげであまり傷は負わずに済んだけどね」

 とりあえず、僕はそう返した。

 自画自賛しているみたいでなんかこそばゆかったが、

あの伝承をいうわけにもいかなかったので仕方ないと思った。

 そんなこんなでたわいのない話をしていたわけだけど、三時間目に事件は起こった。

「そういや、今日は体育だった!」

 そう、僕は女子更衣室に向かわねばならなかったのだ。

 とはいえ僕も女子更衣室が男子更衣室の隣であることは知っていたし、

そこに行くまでは迷わなかった。

 着替えの時もある程度身体を隠しているし気にはならなかったが、

僕の着替え方があまりに無防備だったのだろうか。

「吹雪、そんなに無防備でいいの?」

 女子の一人がそういうや否や、隙ありといわんばかりに胸を揉んだのだ。

「ちょ、ちょっと!?」

 何というかよく分からない感覚だが、女の子同士ならスキンシップなのか?と思った。

 女の子同士でもセクハラになる場合もあるとは思うが、このレベルならスキンシップだろう。

 違っていたなら済まないと思うが、僕はその辺の境界線が良く分からなかったのだ。

 ともかく、こんな騒動の後僕は体操服に着替えた。

 しかし、体操服だとボディラインが目立つ。

 ブラを付けているので揺れることは無い。

 よくアニメキャラは胸を揺らしまくるが、よっぽど胸が大きいのだろう。

 平均的なカップであれば、ブラで胸が押さえつけられるのでそんなに揺れない。

 吹雪はブラのサイズを見たところDカップだったので、よほどのことがなければ揺れなかった。

 人のスリーサイズは本来デリケートな部分だろうが。彼女には許可を貰っている。

 入れ替わりの体験を書くんだったら身長とスリーサイズくらいは公表していい、

とのことだった。

 体重はさすがに駄目だといっていたが、吹雪の身長は160cmで僕の身長は170cm。

 身長差は10センチといったところだろうか。

 とはいえ吹雪は女子として考えればそれなりに長身だし、

僕は男子の中でそんなに背が高くなかった。

 ともかく体育はバレーボールであったが、それなりに上手くできた。

 身体の感覚の違いを男性としての感性で何とかカヴァーしただけだが、

女性の身体なのであまり無茶はできなかった。

 却ってそのお蔭で目立たずにも済んだわけだが。

 多少吹雪本人とフォームが違っただろうが、その辺は記憶喪失の影響で済んだ。

 入れ替わりの違和感を記憶喪失だからで済ませられるのは大いに助かった。

 そんな折に僕は柿澤かきざわ かなと共に昼食を取ることになった。

 僕達は日替わり定食を頼んだ。

 その中身はご飯と春巻き、野菜スープだったのだが。

 それはさておき、僕はかなにこんな紙を渡された。

『あなた達、入れ替わっているよね?』

 僕はこう書き返す。

『もしかして、君が吹雪のいっていた友達?』

 彼女はこう返してくる。

『教えて貰っていたのね。なら話は早いわ。私も協力するよ』

 そしてその放課後、僕はかなにショッピングセンターへ連れて行かれるのだった。

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