#12 あがき(06)
ドクン! ドクン! ドクン!
あの忌まわしい音が何度も響く。しかしジーウィの身体に変化はない。
「……限界が来たんだ。使いすぎて薬が効かなくなっている。それでも強くなる快感が忘れられない……」
ジーウィの雄叫びが轟き響く。
「……勇司くん、提案があるの」
夏美さんは宝石コーディをそっと手で包みながら自分の考えを話し始めた。徐々にコーディから吹き出し続けていた煙が徐々に収まっていく。
「駄目だ! そんなことっ!」
「不可能じゃないよね、コーディ?」
「……できるけど、おいらもにーちゃんと同意見だよ。危険すぎる」
夏美さんが手を開くと明滅が収まったコーディが現れた。
「でも、強力な……ファイアーボールでないとあの子には通じない。それも充分に集中した強力な奴が」
夏美さんの言葉が終わる間際、ジーウィがこちらに飛びかかってきた。
「コーディ、もう大丈夫だな!」
「うん!」
コーディ自身が飛び退き、入れ替わるように僕が主導権を握る。
「くそっ!」
ジーウィは闇雲に殴りかかってくる。パワー差があるため防戦一方。モーションが大きくなっているので避けることは容易だが、当たったらタダでは済まない。
こちらは左腕を失ったため、身体のバランスが取れない。コーディが咄嗟に接続を切ってくれたおかげで痛みは最小限で済んだけれど、腕一本ないということがこれほど大変だとは思わなかった。遠くにある左腕は全く反応せず、沈黙したままだ。
同様にジーウィの身体に入った無数のヒビは完全に回復していない。ボロボロになったふたりの巨人の戦いは死闘と呼ぶに相応しいものになっていた。
「しまった!」
際限なく続く攻撃に、ついにジーウィのパンチをモロに受けてしまった。そのパワーは凄まじく、一瞬にして周りの景色が吹っ飛ぶほどだ。まるで小石のように吹き飛ばされるコーディは、地面に数回叩きつけられ、ランペットの手前でようやっと停止した。激しいショックで目眩がして立ち上がれない。
「勇司くんっ!」
「くっ……仕掛けるならここか……」
ジーウィが追ってきた。慌てて身体を丸め、地面に這う。完全なる防御の姿勢だ。
「コーディ、早くしてくれ」
「……もうちょっと待って」
ガシッ! ガシッ! ガシッ!
コーディの背中を蹴りまくるジーウィ。今はとにかく耐えるしかない。
「よし、にーちゃん! オーケーだ!」
こちらも目眩が収まってきた。ジーウィの足が上がった瞬間を狙って、横に逃げる。コーディの身体にかなりのダメージが残ってしまった。眼の前に、折れたコーディの大剣が落ちている。
「完全に賭けだな、これは……」
「にーちゃん、来るぞ!」
襲いかかるジーウィの足を引っかけ転ばせる。そして大剣を拾い上げ、フルパワーでジーウィの足に突き刺す。苦痛の声を上げるジーウィから距離を取る。
「ここだな……」
両腕をあげて襲いかかるジーウィ。ギルトは力ずくで物を解決する傾向がある。その力を逆手に取るのだ。力任せの左腕を掴み、コーディの身体全体を沈める。そして、その巨体の腹に左足を添える。そして真後ろに転がるようにしてジーウィの身体を浮かし、左足で高く蹴り上げる。
巴投げだ。
宙高く舞ったジーウィは何もできない。そのまま地面に叩きつけられるのを待つだけだ。
「こんなものっ、ジーウィに効かん!」
ギルトが叫ぶ。
「でも、これはどうかしら?」
僕とギルトを結ぶ延長線上に、コーディの左腕があった。そして動かないはずの手のひらには巨大な魔法の炎球が作られつつあった。ジーウィを倒すに十分なパワーを持ったファイアーボールが。
そしてそこには彼女の姿が。
「なぜ? なぜお前がそこにいる……ルティ!」
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