ひとりの女性をめぐる、二種類の愛の形をえがかれた短編小説です。
匿名企画についてはまったく存じ上げないのですが、前半部分がコンテストに参加された部分だったのでしょうか?
まずは彼女と同じ施設で育った(ということにしておきますね、ネタバレ回避のため)男性が閉園する遊園地で語らう物語が展開されますが――
私はそれも愛と呼んでいいと思う……!
本当の愛って何なんだろうな?
二人は寂しさゆえに身を寄せ合ったのかもしれないけど、二人にとってそこが終着点だったなら、思春期の時のその気持ちを大事にしてこれからも生きていってくれればいいと思うのですね。
十代の頃の綺麗な記憶はきっと二人の心の柔らかい部分で眠り続けるのだと思います。
後半の作品では、その彼女の現在の様子が描写されますが――よかった。彼女は今もひとりではないのですね。
確かに、現時点では、生産性のない関係かもしれない。だけど二人きりの閉じた世界であっても当事者である二人が幸福ならそれでいいと思うし、何かをきっかけに次へつながっていくかもしれない。そんな希望に満ちた終わり方で、幸せになれそうでほっとしました。