一章【アウルス侵略】
【アーリナス①】
――この世界が間違っていると思ったのは、つい最近の事だ。
前の世界で死に、こちらの世界に転生した時は、第二の人生だと思いとにかくやりたい事をやった。幸いにも、力があった。かつての様な非力な力ではなく。世界を変革できるだけの強大な力だ。だが、それを己のために使おうとは思わなかった。いや、そもそも自分のために使うという発想が出てこなかったのだ。
なぜって、それは勇者だから。
「勇者さまー!」「勇者様が来てくれたぞー!」「ありがとう、ゆうしゃさま!」
そんな賛辞の言葉を言われて、悪い気がしなかったのもある。
この世界では、皆が俺をチヤホヤしてくれる。俺を求めてくれている。そうして、皆を苦しめる魔王を倒せればいいと、思っていたのだ。
しかし、そんなのはただの綺麗事でしかなかったのだ。
俺はこの異世界に来てから、1つだけ疑問があった。見る女性、見る女性、全てが巨乳なのだ。いや、普通の大きさの娘も居たが、全体として見れば圧倒的に巨乳が多かった。
魔王を倒すために世界を巡った。でも、やはりというか、巨乳ばっかりなのだ。
「貧乳……? なんですかそれは?」
夕飯がてらに立ち寄った酒場でレーヴルに聞いてみる事にした。女性の事は女性に聞いた方が早いのではないか? という判断であった。しかし、レーヴルはまるで何を言っているのか、理解できないといった顔をした。今日も豊かなおっぱいだ。
「それってアレじゃないか?」
同じパーティメンバーである、”戦士”フォルネスが話に割り込んでくる。屈強であり、男の中の男というのは、こういう奴の事を言うのだと、思ってしまう様な筋肉と人柄を持つ。
「あぁ、アレですか」
「そう、アレアレ」
「二人で分かってないで、俺に説明してくれ」
そう言うと、二人は顔を見合わせる。
「アヤトはアレ知らないのか?」
「驚きです。まさかアレを知らずに、生きている人がいるとは」
ムッとしてしまう。そりゃ、この世界に来たばっかりとはいえ、そんな言い方はないだろう。
「分からないから聞いてるんだ」
そう、少し強めに言うと、二人は同時に声をそろえて言った。
「「アーリナス」」
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