彼ノ魔王は胸の膨らみに想いを馳せる
土塊ゴーレム
序章【魔王君臨】
――俺は、おっぱいが好きだ。
「勇者! なぜだ? なぜ、私に歯向かう。良い条件ではないか、世界の半分だぞ。一生かけても世界の半分を手に入れる事など出来はしない! それなのになぜだ!?」
魔王は言う。その何も理解してはいない、己の保身だけを優先する言葉を。勇者である俺に。
「魔王……1つ勘違いをしている」
「なに?」
「いつ、俺が世界の半分だけで満足すると言った?」
みるみる魔王の顔が蒼白になる。所詮はそんなモノだ。この世界を己のために征服せんとする輩など、その程度の器に過ぎない。
だから、つい一年前まではただの高校生であった凡人に負ける。
「俺が欲しいのは、この世界全てだ!」
魔王は倒れる。この魔法と不思議に満ちた世界を脅かす魔王は力尽きる。最期の最後まで、己の間違いに気づかぬまま。
「あ、あの、勇者さま? 先ほどの言葉は?」
パーティメンバーの一人である――“神官”レーヴルは言う。金色の髪が美しく、修道着の上からでも分かる程に豊かで豊満なバストを持つ女性だ。
「レーヴル、今日も素敵なおっぱいをしているな」
「な、な、なにを急に! 下劣な!」
「だろう? 俺は最低で最悪な世界の敵になることにした」
「え?」
レーヴルはきょとんとしている。俺が何を言っているのか理解できないと言っている顔だ。他のパーティメンバーも同様に、まるでおかしな人間を見ている様な眼で俺を見る。
――それで、結構だ。道化に、狂人にならなければ事をなすことなど不可能だ。
「今日で、勇者は辞めだ」
そう言った直後、まるで肩の荷が下りた様な解放感を覚える。だが、まだ気を抜くな。ここからだ。ここから、始まるのだ。世界の改革は、彼女との約束は。
「そして、今日から、俺が魔王だ!」
――全ては、愛しきおっぱいのために。
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