第一章
その日から、俺達は夜中に会って遊ぶようになった。
旧校舎を探検したり、広い庭を駆け回ったり。
お互いのことは名前しか知らないけれど、楽しかった。
ハルと出会って数日がたっただろうか。
寮を抜け出した俺の足は、旧校舎の方へと向かっていた。
旧校舎で唯一入れる教室に足を踏み入れようとして止まる。
ピアノの音が聞こえたからだ。
クラシックではなく、J-POPでも童謡でもない。
その音は甘く、切ないメロディを奏でている。
少しだけ開いていた扉から中の様子を伺うと、そこにいたのはハルだった。
「ハル………?」
「! ……シグレ、やっと来たんだ!」
「あぁ……遅くなって悪い。 それにしても、ピアノ弾けたんだな。」
そう言うと、ハルは悲しそうに笑った気がした。
「上手く弾けてるかわからないけどね」そう言うとピアノから離れ、入り口付近にいた俺の元まで駆けてくる。
「さぁ、今日は何して遊ぼうか?」
そう言ったハルの表情は楽しそうだ。
先程の悲しそうな笑みは気のせいだったのだろう。
「ならさ、宝探ししようぜ。」
「宝探し? なんだか子供みたい」
「俺達さ、お互いのこと話したことないだろ?
お互いのことについて、学校中探すんだ。 それで、何か分かったらメモをとって、明日になったら自分のことについて話す!
俺さ…家が大っ嫌いで自分のこと話したく無かったけど、ハルには自分のこと話してもいいかなって思ったんだ……」
だから、駄目かな?
と訪ねてみると、ハルは少しだけ何かを考える仕草をして……頷いてくれた。
「いいよ。 帰省期間が終わったら、こんな風に夜抜け出して遊べないもんね。」
「よしっ、じゃあここからは別れて探そうぜ!」
「うん……じゃあまた明日」
そう言うと、お互い背を向けて歩き出した。
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