第二章
ハルと別れてから数分。
俺は旧校舎をでて、新校舎へと向かっていた。
旧校舎はほとんどの扉が壊れていて入れないし、図書室や職員室などに置いてあった資料もすべて新校舎に移されていると聞いたことがあるからだ。
広い庭を突っ切ると、新校舎が見えてきた。
旧校舎と比べると小さいが、とてもキレイだ。
月明かりに白い壁がよく映える。
「なにか調べるなら職員室と図書室に行かなきゃいけないよなぁ……」
今の時期は帰省期間。
教師も、寮の管理人も、いまはいない。
施錠されているのは屋上と裏手の門。
職員室と図書室くらいなら入れるはずだ。
「あ、窓開いてんじゃん。」
警備員も、いい加減な警備の仕方だ。
誰もいなくなるとわかっている学校の窓が開いているなんて。
「まぁ、ラッキー……だよな。
ここが開いてなかったら、校内に入れなかったもしれないんだし。」
余計なことは考えず、窓から校内に入ることにした。
校内は暗く、しんと静まりかえっている。
「あ、ここ丁度 職員室前だったのか……。
職員室の中に入れば、懐中電灯くらいあるよな……」
いくら月明かりがあるからといっても、校内では月明かりが当たらない所もある。
電気をつけようと思っても、電力管理室は校長が鍵を持っているから無理だ。
電池切れしてない懐中電灯があればいいな……。と思いながら、職員室のドアに手を掛ける。
すると、カラカラ…と乾いた音を立てながら職員室の扉はすんなり空いた。
「……あ、懐中電灯。」
職員室に入ってすぐ、右手の所に懐中電灯はあった。
調べてみたところ、壊れた様子はないし電池も充分ある。
「よし、とにかくこれがあればなんとかなるよな……」
明かりだけでは何も見えないし、何かを探すことも出来ない。
明かりを手にすることが出来て安心した。
「っし、まずはハルが何年何組なのかを調べなくちゃな。
先生の机を全部漁らないとわかんないよなー……」
明かりを灯しながら、一つ一つの机を探っていく。
出席簿、座席表……全学年、全クラス すべて見たはずなのに、ハルの名前はない。
「おかしいな……下の名前に『ハル』がつく生徒が一人もいない……」
どのクラスを見ても、ハルという名前がつく生徒は一人もいない。
顔写真を見ても、ハルの顔はない。
まるで、ハルが存在していないみたいに。
「図書室にあんのかな……。
えっと、図書室はB棟だから……渡り廊下渡らねぇといけないのか。」
職員室から渡り廊下までは2メートルほど。
渡り廊下を渡って目の前に図書室がある。
移動に手こずらないから、調べものをする時間も十分にあるだろう。
しかし、職員室にハルの個人情報がないとなると、ハルが俺より先に来て隠したんじゃないかと思ってしまう。
職員室での調べをほどほどに、俺は図書室へと足を進めた。
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