また、この場所で。
@Aoihinata
序章
あと数センチ。
あと数センチで、俺は奴等から解放されるんだ。
惨めな思いをすることも無くなるのだ……。
「ねぇ」
不意に、フェンスの向こう側から中性的な声がした。
帰省期間中で人がいないせいか、その声はよく響いた。
仕方がなく振り返ってみると、藍鉄色の瞳が目にはいった。
少年は続ける。
「僕と友達になってよ」
突然おかしなことを言う奴だ、と思った。
しかし、俺は頷いていた。
少年の瞳の中に、微かな孤独感を感じたからだ。
もしかしたら、この少年は自分と同じなのかも知れない。
そう思ってしまったのだ。
「そっか、ありがとう。
僕の事はハルとでも呼んで。君のことは何て呼べばいい?」
「………シグレ。 俺は天野 時雨(あまの しぐれ)だ。」
「シグレ……ん、よろしく、シグレ」
そう言うと、ハルと名乗った少年はにっこりと笑った。
お互いの素性も知らないけれど、悪くない。
これが、彼と俺の出会いだった。
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