第18章
第十八章「ただの猫」
「おーい、猫や! 何処へ行った? ミルクの時間じゃ。ばあさん、猫は何処へ行ったかのぉ」、じいさんは部屋の中を探していた。
「ソファーの下に隠れていますよ」、おばあさんはじいさんに猫の居所を教えた。
じいさんがソファーの下を覗き込むと、猫は目を閉じたまま欠伸をしていた。
「こっちにおいで。美味しいミルクじゃよ」
猫はのそのそとソファーの下から出てきて、陽の当たる窓側で丸くなった。
「じいさん、もう猫は元に戻らないのか?」、幽霊少年はじいさんに尋ねた。
「死んで幽霊の期間を経て、また猫に戻ってしまったから、記憶が消えてしまったんじゃな」
「もうムタチオンでは無くなったのかな」、幽霊少年は心配しながら尋ねた。
「それはわしにも分からん。少なくとも、この猫の間は普通の猫のままじゃ。猫の生涯を終え幽霊になったらムタチオンに戻れるかもしれんが」、じいさんは以前の猫でなくなったことをさほど気にしていない様子だった。
「しばらくは彼に会えないんだね。僕は余計なことをしてしまったんだな」、彼は嘆いた。
しかし、バンダナは言った。「彼はちゃんとここにいるわ。記憶を無くしたとしても、彼は私の一番の友達よ」
「お前さんは猫の命を救ったんじゃ。いいことをしたんじゃよ」
幽霊少年は小さく頷いた。
ーー全く、この毛深い獣は何なんだ。いちいちペロペロと俺の顔を舐めやがる。だいたい首に巻いている赤い布は何だ。全然似合っていないぞ。それに白い毛の二匹の巨人もやたらと俺を撫で回す。あんまり構って欲しくないんだが。まぁ、どいつも敵でないようだから我慢してやるか。それにしても、もう一つの声の主は何処に居るんだ? 姿が見えないんだけど。まぁ、居心地も悪くはないし、しばらくここに居てやるか。
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