第15章

第十五章「天使」


 また夢を見た。夢の中にいたのは、小さくて丸くて白くて髪がくりくりの女の子。僕はすぐに彼女がバンダナの娘だと分かった。

「ママが言ったのよ、私は天使だって。だけど、病気の天使なんていないって言ったの。でもね、ママの言う通りになったのよ」

「どういうことだい?」

 彼女は背中を向け、服を少し捲り上げた。服の裾から白い物が見え、そこから一枚がひらりと風に舞った。それは左右にゆらゆらと揺れ、僕の頭の上に着地した。

「あら、お似合いよ」

 僕は頭を左右に揺すった。すると、それはくるりと一度旋回し、ゆっくりと僕の足元に落ちた。

「本当に天使になったんだね」

 それは水鳥の羽毛のような真っ白で柔らかな一枚の羽根だった。

「そうよ。ママの言った通り。病気もすっかり消えちゃったわ」

「ママの所に戻らないのかい?」

「戻りたいけど、やらなければいけないことがあるのよ。それはママも同じよ」

「どういうこと?」

「ママが私を助けたように、私も助けなきゃ」

「その羽根でどこまで行けるんだい?」

「どこへでも行けるわ。遠いところ、ずっと先にも、ずっと前にもね」

「未来や過去にも行けるのかい?」

「みらい? かこ? 分かんないけど、子供の頃のママに会ったわ」

「ママは君の未来を知っていたんだね」

「そうなの?」

「君は誰を助けるの?」

「おじいちゃん。ママのパパよ」

「ママは誰を?」

「あなたよ」

「そうか、彼女は僕を助けるために来たのか」

「そうよ。ママはあなたのことが大好きなのよ。だから、助けるのよ」

「僕も君のママが大好きだよ」

「ならよかったわ」

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