第14章
第十四章「青林檎島」
ある日の午後、いつものように僕とバンダナは公園でお昼寝をしていた。ここのところ面白いことは何も起こらない。強いて言えば、夢の中で赤いリボンの女の子に再開したくらいだ。もっとも、女の子はおばあさんになっていたけれど。
「ねえ、バンダナ。心の中に宇宙を作るには、どうすればいいか知ってる?」
バンダナは、僕のトンチンカンな質問に、チンプンカンプンな表情をした。
「そんなの簡単よ。美味しい物を沢山食べるとか、昼間の公園でお昼寝をするとか、恋をするのもいいんじゃない」、バンダナはふざけてこう言った。
そのとき、ベンチの後ろで声が聞こえた。
「そういう研究を島で行っているんですよ」
僕たちは声の方へ目をやった。
「あ、博士だ!」、僕とバンダナは同時に言った。
「心の中に宇宙を作るということは、心の中に『無』の状態にするということなんだ」
「バンダナの頭の中は美味しい物でいっぱいだから、無理だね」
「まぁ、失礼ね」と、バンダナはふくれっ面をしてプイとそっぽを向いた
「美味しい物だけの小さな宇宙は存在しているみたいだよ」
博士の言葉に僕が笑うと、バンダナは僕を睨みつけ、慌てて素の表情に戻した。
「二人とも元気だったかい?」
博士は僕たちに「二人」という数え方を使った。
「うん、僕もバンダナもこの通り。博士、島の暮らしはどうですか?」、僕は博士に尋ねた。
「快適さ。ところで二人とも、島に遊びにこないかい?」
やはり、博士は猫と犬に「二匹」ではなく「二人」と言った。バンダナは気がつかなかったようだが、僕はそれが何故か気がかかりだった。もしかしたら、僕たちが元々は人間だったことを知ってるのかもしれない。
「私、行きたーい!」
ここのところ退屈な日が続いていたので、バンダナのテンションは一気に上がっていった。
義理堅い博士は、飼い主のじいさんに、僕たちを島に連れて行く許可を貰いたい、と言うので、家に案内した。
「はじめまして、私は小笠原列島の南にある島で研究を行っている学生で、オカチマチといいます。二人を島に連れて行きたいのですが……」
博士は緊張した趣でじいさんに尋ねた。
「青林檎か?」
「え、グリーンアップルをご存知なんですか!」、オカチマチは驚いて、テーブルに手をついて、前のめりにになった。
「わしは行ったことはないが、わしの母はそこの一期生じゃ」
「そうでしたか。大変失礼しました。では、校長もご存知なんですか?」
「いや、母から話は聞いたことがあるが、会ったことはないんじゃ」
「そうですか」
「母は、わしが生まれる前にあの島にいたそうだが、わしを身籠った時、島を離れたそうだ」、じいさんは母親から聞いた昔話を話した。
「じゃ、お父様も島の人間だったのですか?」
、ピカソじいさんは、その質問に答えなかった。
「お前たち、世界の真実と自然の偉大さを学んでおいで」、じいさんはすぐに二匹を島に行かせる許可を出した。
「では、一か月ほど、息子さんと娘さんをお預かりします」
博士はまた僕たちを人間として扱った。島には一体何があるのだろうか。僕たちが動物になった原因が見つかるかもしれない。
その午後、早速、僕たちは港から船で青林檎島に向かった。船の外観は小さな漁船ではあったが、船内に入るとキッチンやシャワーも完備された豪華なクルーザー仕様であった。どうやら漁船の外観でカムフラージュしているようだ。ところで、船には博士とバンダナと僕だけだったが、一体誰が操縦をしているのだろう。きっとその答えも島にあるのだろう、と、あえて博士に尋ねなかった。
目覚めるとそこはまだ海の上だった。ベッドに博士はいない。甲板に出てみると、立ち込めた霧の中で、博士はラジオ体操をしていた。
「何も見えない」
「イッチ、ニッ、サン、シー。あ、おはようございます。ニーニッ、サン、シー。この辺りは海流の影響でいつも霧がかかってるんですよ。サン、シー」
博士は腕を大きく振りながら答えた。
「ふぁー。おはよう」
バンダナも欠伸をしながら起きてきた。
「あと、38分24秒で、着きますよ」、博士は体操を終え、汗を拭きながら言った。
「ご飯にしましょう。部屋にもう用意されているはずです」
部屋に戻ると朝食がテーブルの上に、パンと目玉焼き、ソーセージにサラダ、美味しそうな朝食が用意されていた。この船には博士とバンダナと僕しかいないはず。誰が朝食を作ったのだろう。
「ねえ博士、このご飯誰が作ったの?」
「あー、これだよ」
博士は棚から三種類のプラスチックの容器に入った錠剤を取り出して見せた。
「これが炭水化物、こっちがタンパク質、もう一つが脂質。これらをあの箱に入れて、タイマーをセットすれば自動で食事が出来るんだ。合成食材だけど、結構美味しいよ。アイジョウの調味料は入ってないけどね」、博士は四角い銀色の箱を指差して言った。
「あら、博士って意外にロマンチックなのね」、バンダナは博士をからかった。
「いや、そうじゃなくてね。アイジョウという食材の旨味を増加させる素粒子のことだよ。母親の手料理が美味しいのは、この素粒子のおかげなんだよ。学会には発表されてないから、正式名称は無いんだけど、僕たちはアイジョウ素粒子と呼んでいるんだ」
島には僕たちの住んでいる世界に存在しない物が沢山あるようだ。到着までもう少し。僕たちは上陸の準備を始めた。
船の外は霧が立ち込めていて、周りの景色が見えなかった。だが、ある一線を越えたとき、霧が一気に消え、目の前に島が突如として現れた。
「この島は、上空から見ると林檎の形をしているんだ。島は沢山の植物の緑で覆われていて、青林檎に見えのさ」、博士は説明した。
「それで青林檎島、グリーンアップルなんだね」
島の船着場の近くに高い煙突が見えた。
「あれは海水を浄水に変える工場の煙突さ。島のエネルギーの天然水素プラズマを作っているのさ」
「電気じゃないの?」
「島でのエネルギーは60%が天然水素プラズマなんだ。工場で浄化された水を気化させ、高温の真空状態で水蒸気を電気分解すると、水素プラズマができあがるんだ。そいつを燃焼してエネルギーを生み出す。排気ガスは水蒸気だから環境に悪影響はない。単純な製法でしかも無限に存在する資源なのさ。しかも、同時にできる副産物の酸素プラズマは、水蒸気を熱するのに利用するんだ。排出された二酸化炭素は島の緑が光合成をして酸素を生み出してくれる。浄化後に残った食塩は、イオンエネルギーを利用して自動車なんかを動かす。島では、ガソリンエンジンの車じゃなく、ソルトカーで移動するんだ。つまり、この島のエネルギーは廃棄物なんて出ないし、エネルギーの完全循環で全く無駄がないんだよ」
僕とバンダナはチンプンカンプンで口をポカーンと開けて聞いていた。
「ゴムエネルギーってのもある」
「ゴムエネルギーだって?」、バンダナと僕は同時に言った。
博士はバッグから何か取り出した。
「これがゴム電池 」
見た目には普通の乾電池のようだった。
「この中には金属ゴムが入っていて、上部をクルクルと十回ほど回転させて金属ゴムを巻き、それが戻る動力でエネルギーを発生させるのさ。この船は、このゴム電池で動いているんだよ」
僕は島への好奇心がどんどん高まり、心臓のドキドキが止まらなかった。
船が島に到着し、僕たちは上陸した。船着場のすぐそばまで森の木々が生い茂っている。人が住んでいる様子は無い。島の自然の中にある人工的な工場の高い煙突には、違和感を感じる。
工場の塀の前にボロい軽トラックが止まっていた。
「さぁ、二人とも乗って」
その軽トラックは、潮風のサビで赤茶けていて、足元にはパンクしたタイヤのゴムが、半分劣化してかろうじてまとわりついていただけだった。
「これに乗るの?」
軽トラックに乗ると、運転席にあるはずの物がなかった。
「博士、ハンドルは? タイヤもないんだけど」
「ああ、ボロい車ね。ダメージファションだよ。この島で、今流行ってるんだ」
博士は運転席の赤いボタンを押し、ツマミをクルクルと回した。すると、車体が地面から十センチほど空中に浮かんだ。
「わお!浮いたぞ!」
「車の下の空間波動をコントロールして、浮かせてるんだよ。自動運転だから、ハンドルはいらない」
「これがソルトカーなの?」
「その通り! 食塩水のイオンエネルギーで動くのさ」
軽トラックのソルトカーは、海岸沿いを走り、あっという間に目的地に到着した。
そこは、古い木造校舎の田舎の学校のようだった。
「もうすぐ授業だ。見学してみるかい?」、博士は二匹に尋ねた。
「うん。どんな勉強をしてるのだろう」
「私も見たいわ」
見た目には普通の学校だった。校舎に入ると教室の方から声が聞こえてきた。
「まずはこの教室から」
博士の案内で、僕たちはある教室に、後ろのドアから入った。僕たちが教室に入ると、十五人ほどの生徒が、一斉に後ろを振り返った。
「あ、猫君と犬さんよ」、誰かが言った。
「僕は猫だけど、こっちはバンダナっていうんだけどな」、僕は小さな声で呟いた。
「バンダナちゃんか。かわいいな」、誰かが答えた。
「え? 僕の言葉が分かるの?」、僕はキョロキョロと周りを見渡した。
「タイガ、おいで」、博士は一人の男の子を呼んだ。
「みんな赤いバッヂを付けてるでしょ。あれは翻訳チップなんだ。動物の言葉を訳すんだ」、男の子が言った。
「君は付けてないね」
「僕は動物の言葉を理解出来るんだ」、男の子は自慢している風でもなく、当然のように答えた。
「そもそも、動物の殆どは言葉を使って意思を伝達しないから、言語そのものを持っていないんだ。しかし、人間に育てられたペットなんかは、人間の言葉を理解してはいるんだけど、骨格や筋肉や舌の構造ちがいから、言葉を発することは不可能なんだ。僕は振動や表情や行動から言葉を推測して理解するが、彼は動物が発した音そのものを分析できるのさ」、博士は解説した。
「あのチップは博士の考案で開発し、僕が言語解析プログラムを組んだんだ」、タイガが付け加えた。
「何だかすごいわね」、バンダナは言った。
「君たちが来ると聞いて、みんなにもチップを付けてもらったんだ」、タイガはニコニコしながら、僕とバンダナを交互に見た。
チャイムが鳴り、白衣を着た白髪の先生が教室に入って来た。
「今日はタイムマシンの話をしよう」
授業が始まった。
「先生!」、生徒の一人が出を上げ、「アインシュタインの相対性理論で、本当に未来に行けるのでしょうか?」と質問した。
すると別の生徒が、「理論上は可能だから、この島の技術で光速の乗り物を作って、実験できるのではないでしょうか?」と答えた。
「そうだね。光速の乗り物の件は後にして、理論を分析しましょう」、先生が言った。
「光速の乗り物に乗ると、時間がゆっくり進むという理論ですが、僕たちも何かに夢中になって忙しく動いていると、あっという間に時間が経ってしまいます。つまり、自分自身の時間がゆっくり進み、周りの時間が速く動くということがあります。僕たちはすでに経験しているのではないでしょうか」、生徒の一人が言った。
「しかし、それは夢中になっている人自身が感じる感覚で、周りの人から見れば、実際に時間がゆっくり動いているのではないのだと思います。相対性理論も同じではないでしょうか」
生徒たちは、それぞれ自由に発言している。
「では、時間は一定に進んでいるのかな?」、先生が言うと、
「もしかしたら、人それぞれが違う速さで動いてるってことか!」
「そうです。時間の間隔は速度に依存するのが相対性理論なのです」、先生は言った。
「ならば、やはり未来に行けるのですか?」、誰かが尋ねた。
「では、時間の正体は何でしょうか?」、先生が生徒たちに質問した。
「はい!過去から未来に流れている物です」
「時間は物質なのですか?」
「物の大きさに、縦と横と高さがあるみたいに、時間は過去と現在と未来を繋ぐ、尺度ではないでしょうか」
ここにいる生徒たちは、小さい子は小学校の低学年くらい、大きい子でも中学生くらいだ。こんな少年少女たちが、科学者でも難しい問題を自由に発言していることに驚いた。
「その尺度を計測するのが時計ですよね」
「時計は地球の自転、もしくは公転で決定しているので、地球そのものが時間を計測しているんだと思います」
僕とバンダナはチンプンカンプンで生徒たちの発言を聞いていた。その時、教室の隅の女の子の肩の上で白い物が動いているのが見えた。
「あ、サルだ! あのサル、会ったことがある」、僕は授業の邪魔をしないように、バンダナにこっそり話した。
「では、地球が止まれば、時間も止まるのかな」、先生は更に質問をつけ加えた。
「いえ、地球が止まったとしても、僕たちは動いているはず。つまり、時間は止まらない」
そのとき、サルの肩に乗せた女の子が発言をした。
「私は、時間とは変化だと思います。何かが動いているのを見て、時間を感じるのだと思います。過去という空間は無く、ただ人の記憶に残っているだけ。同じように未来という空間は無く、人が想像しているだけなのではないでしょうか」
僕は彼女に会ったことがある。僕が猫になった日に、サルを探してた女の子だ。あのサルは僕を事故から救ってくれたんだ。
「じゃ、時間は存在しないってこと?」
その発言を聞いて、教室の生徒たちはざわついた。
「ならば、時間は存在しないと仮定して、もう一度相対性理論を検証してみよう」
「光速の乗り物に乗ると、時間ではなく、ゆっくりとした変化が起こる」
「光速の乗り物から周りの景色を見れば、周りは光速で動いているように見える。しかし、乗り物の中の自分は普通の速さで動いている。つまり、周りは速く、自分はゆっくり。これが相対性理論の正体ではないでしょうか」
生徒たちは、あっという間に「時間は存在しない」という仮説を立て、相対性理論に応用した。
「これは、あくまでも仮説です。では、光速の乗り物について話し合いましょう」
「光の速さの乗り物は、直線的に距離を確保するのも困難です。だから、遠心力を使ってはどうでしょう」
「だけど、遠心力を利用したとしても、もの凄い遠心加速度がかかって、たちまちペチャンコに潰れてしまうよ」
「なら、その内側にもう一つ逆向きの遠心力を発生させたら、遠心加速度は消えるのでは?」
「両方を同時に逆回転させるなら、それぞれ光の速さの半分で済むはず。相対的に光速が得られるよ」
「さすが、みなさんグリーンアップルの生徒です。実は、それと同じ原理ですでに光速の乗り物は完成しているのです」
「えーっ!」、生徒たちは一斉に驚いた。
その声を聞いて、白いサルは一瞬ビクッと体が痙攣し、周りをキョロキョロと見渡した。そして僕と目が合うと、首を傾げながら僕の顔をじっと見つめた。サルは、僕を思い出したようで、女の子に何やら合図を送った。
「では、ここで時間の仮説をまとめてみましょう」
「時間は存在しない」
「時間は物の変化である」
「過去は記憶の中にある」
「未来は想像の中にある」
「今という瞬間だけがあって、その中で物体が変化しているだけである」
生徒たちは次々に発言をし、時間の概念の仮説をまとめあげた。
「では、明日の授業で光速の乗り物、つまり、タイムマシーンを見せてあげよう」
先生はそう言って、授業を終えた。
授業が終わると、サルを肩に乗せたあの女の子が僕のところへやって来た。
「あなた、おサルさんを助けてくれた猫さんね」、女の子は僕に言った。
僕は彼女の胸に赤いバッヂを確認して、
「それは逆だよ。僕がそのサルに助けてもらったんだ」、僕がそう言うと、サルは首を振って、「キキー」と何かを訴えた。
「ところで、あの時より前にあなたに会った気がするの」、女の子が言うと、
「実は僕もそう思ってたんだ。でもどこで会ったんだろ。どうしても思い出せないんだ」
「あっ、私、ヒカリっていうの。よろしくね」
そこへ先生がやって来た。
「オカチマチ君、ゼロ校長がお呼びです。猫さん、バンダナさん、ヒカリさんも一緒に」
「はい、おサルさん!さぁ、行くわよ」、ヒカリは教卓で飛び跳ねていたサルに合図を送った。
僕たちは、 階段を下り、長い通路を抜け、空中連絡通路を渡り、続く階段を上がった。そこに学校には似つかわしくない赤いドアの校長室があった。僕はここへ来たことかある、と何となく思ったのだが、はっきりとは思い出せないでいた。
博士はドアをノックした。
「入りたまえ」
中から声が聞こえた。
赤いドアを開け僕たちは部屋に入った。部屋は四方の壁一面に赤いカーテンが掛かっており、奥には大きな黒いデスクがあった。デスクのあちら側には革張りのチェアーが背を向けて置いてある。その横には、不気味な大男が白いうさぎを抱えて立っていた。博士は大男に会釈をすると、彼は歯を剥き出しにして笑った。その大きな歯には、有刺鉄線のような矯正器具がつけられていた。サルはヒカリの肩からピョンと跳ね、大男の足元に駆け寄り、彼の体を伝って頭の上に乗っかった。
「皆さん、島はいかがですか」
チェアーの後ろから声が聞こえ、それがゆっくりと回転した。そこにいたのは小さな子供、いや、小さな大人だった。彼は禿げあがった頭髪に、口元には髭をたくわえ、白いタキシードを着た初老の紳士という感じだった。
「私が校長のゼロです。猫君、お久しぶりですね。バンダナさんは初めてだったかな」
「え、僕を知っているの?」、僕はゼロ校長に尋ねた。
「そうだった」ゼロ校長は、大男に合図を送った。
すると、大男は頭の上のサルの目の前で、太い指をパチンと鳴らした。
僕とヒカリはお互いの顔を見合わせた。
「あ、君はヒカジ!」
未来へ行った時の記憶が戻り、忘れていたゾンビのヒカジのことを思い出した。
「猫さん!私たち、無事に現実世界に戻れたのよ。あなたのおかげだわ」
サルは巨人の上でジャンプしながらクルクルと空中回転し、キキーと鳴いて喜んでいた。
「巨人だ!」
僕は巨人のことも思い出した。
「ねえねえ、バンダナ。彼女はヒカジ、いや、今はヒカリ。未来で会った友たちだよ。僕の命を救ってくれたんだ。それから、大きいのが、巨人。こんな怖い顔をしてるけど、とっても優しくて力持ちなんだよ」
「うちの猫がお世話をおかけしました」、バンダナはお姉さん風を吹かせて、頭をペコリと下げた。
僕はこの島に来て、一つ気になることがあった。「ところでゼロ。ここには天然水素プラズマエネルギーやソルトカーなんて、すごい技術があるのに、どうして世界に公表しないのですか? この技術があれば、エネルギー問題なんて、あっという間に解決するのに」、僕はゼロに尋ねた。
「ふふふ。世界の首脳陣や企業は、既にこの技術を知っているのだよ」、ゼロは含み笑いを浮かべて答えた。
「なら、どうして使われていないのですか?」
「それは、一円にもならないからだよ。ここのエネルギー技術は廃棄物も出ない完全循環型。しかも、製造は簡単でコストも殆どかからない。つまり、利益を生み出さない。儲からないから、誰も手を出さないのだよ」
僕は納得出来ず、黙り込んでしまった。
「そういう人たちが住む世界だから、2314年9月15日、人類は滅んでしまうのだ」
「なんだって!」
ゼロの言葉に僕たちは衝撃を受けた。
「あなたは、タイムマシンで未来を見たのですか?」、今度は博士がゼロに尋ねた。
「君たちも既に未来を見ているのだよ」、ゼロは巨人を指差した。
「彼の名はゼット。最後の人間だ」
「え、どういうこと?」、バンダナはゼロに尋ねた。
「私は今から三十年後の未来に、タイムマシンを完成させた」、ゼロは未来の話を過去形で語り始めた。
「タイムマシンで未来に行ったのだ。しかし、2314年9月15日。この日に人間の歴史が終わるのを見た。ここにいる最後の人間ゼットの死に遭遇したのだ」
「死んだって、巨人はここに生きてるじゃないか」
「それは三百年後の未来の話だ。私は彼が死ぬ前の未来から連れてきたのだ」
「タイムマシンがあるなら、過去に行って未来を変えることができるのでは?」、博士が言った。
「そう。私もそう思い、過去の人類絶滅に繋がる様々な出来事を正したのだよ。しかし、何度正しても最後にゼットだけが残り、彼は死ぬのだ」
「ならば、ゼットの子孫を残すことは?」
「私も同じことを考えた。そこで、私の娘の卵子とゼットの精子を交配させ、未来の技術を使って豚の子宮に植え付け、人類滅亡の未来に残した。しかし、結果は同じ。やはりゼットは最後の人間となってしまうのだ」
「だとすると、未来は決まっているということなのでしょうか?」、博士が質問した。
すると、ゼロの目がキラリと光り、「皆さん、先程の授業を思い出してください」と言った。
「そうだ!時間は存在しない。今があるだけなのだ」、僕は答えた。
「私は未来や過去の旅を続けているうちに、あることに気がついたのです。三百年後の未来には、私の存在は無くて当然。もう死んでいますからね。だが、十年後、五年後、一年後、あるいは十分後、どこを探しても未来の私がいないのです」
「え?三十年後にタイムマシンを完成させたんでしょ」、バンダナが言った。
「そう。そこで過去へ行ってみた。現在、私は存在しているのですから、十分前、一年前、五年前、あるいは十年前にも、当然、私は存在しているはずです。ですが、どこへ行っても過去の私がいないのです」
「どういうことですか?」今度はヒカリが尋ねた。
「そもそも時間なんてものは無いのです。今という瞬間の中で変化が起こっているだけなのです。変化を早めたり、逆に変化させることはできるのだが、三百年後の未来も、十年前の過去も、私にとっては『今』なのです。つまり、十年後に変化を早めても、そこでは十年後の自分として存在するだけ。時間を飛び越えて、未来の自分に会うことなどできないのです」
僕とバンダナはもうお手上げで、ゼロが何を言っているのかチンプンカンプンで、ポカーンと口を開けているだけだった。
「それでは、自分の寿命より先には行けないのではありませんか?」、博士は尋ねた。
「タイムマシンで三百年後の2314年に行くのに、たった三十分しかかからないのですよ。三百年後の2314年に行ったところで、私にとってはほんの三十分しか経過していないのです。私が行った三百年後は、時代こそ2314年だが、私にとっての『今』であって、これから来るはずの2314年とは違うのです」
「じゃ、ゼットが最後の人間ではなくなることもあり得るのですか?」、博士が尋ねた。
「私が行った三百年後は、今ある現在の時間経過の成れの果てなのだろう」
「ならば、今を正せば人類滅亡から逃れられるのでは?」、博士は答えた。
「その通りです。さすがオカチマチ君。だから私はこの島の学校を作ったのです」
「ところで猫君、バンダナさん。私の孫は元気かね?」、ゼロが僕に妙なことを尋ねた。
「お孫さん、誰のことですか?」
「この顔に見覚えはないかね?」、ゼロは自分の顔を指差し、僕はゼロの顔をじっと見つめた。
「どこかで見たような気がするんだけど。誰だっけ?」バンダナが言った。
僕はゼロの顔がある人にそっくりなことに気が付いた。
「あっ!ピカソじいさんだ!」、ゼロはコクリと頷いた。
「だけど、じいさんよりゼロの方が若いのはどうして?」、バンダナが尋ねた。
「私は、何度もタイムトラベルを繰り返すうちに、不思議なことに年を取らなくなったのだ。私の子孫にも何らかの影響が出てきている」
「ゼロの娘というのは、じいさんのお母さんなのですね」
博士は、じいさんのお母さんがここの一期生だ、と言っていたことを思い出した。
「そういえば、じいさんの家に息子さんの写真があるわよね」、バンダナが言った。
「私には娘の他に、もう一人、息子がいた。二人とも亡くなってしまったが。その息子には孫娘がいた。つまり、私には二人のひ孫がいるということだ。現在、そのひ孫は二人とも行方不明になっているんだ」
「タイムトラベルと何か関係があるのですね」、博士が言った。
「猫君、バンダナさん、ヒカリさん、あなたたち三人はタイムトラベル経験者だ」
「バンダナも過去や未来へ行ったことがあるのかい?」、僕はバンダナに尋ねた。
「ええ」、バンダナは短く返事をした。
「この三人は、ゼロ校長のひ孫さんかもしれないということですか?」、博士は言った。
「でも、僕にはちゃんと父がいます。ピカソじいさんではありません」
どうやら、ゼロは僕とバンダナが人間だったことを知っているようだ。
「私のおじいさんは今も生きているわ」、ヒカリが言った。
「実は、あの・・・」、バンダナが真剣な表情になった。
「どうしたんだい?」、博士が尋ねた。
「私が人間だった頃、娘が行方不明になったのよ。今も見つかっていないの」
僕はバンダナに娘がいたことを初めて知った。そういえば、僕自身も人間の頃の話を彼女に話していないのだった。
ゼロはデスクの引き出しを開け、中から写真を出して僕たちに見せた。
「あっ、この人たち、夢に出てきた」
写真には、小さなゼロの隣に、おかっぱの髪に赤いリボンを付けた女の子と、グレーのスーツに紫のネクタイをつけた男性が写っていた。
「私の息子と娘だ。二人も行方不明になったことがあった。これは、二人が戻った時に撮った写真だ。二人とも行方不明の間の記憶がない」、ゼロは写真を見ながら言った。
「私の娘も帰ってくるのね。でも、私は犬のまま」、バンダナは下を向いて呟いた。
「記憶がないのは彼らだけではない。私も記憶を失くしていた。私は、彼らが行方不明になったことすら覚えていない」
「なぜ記憶が戻ったのですか?」、博士が尋ねた。
「タイムマシンだ。未来の私がメモを残し、私に知らせたのだ」
「僕とバンダナが動物になったのも、タイムスリップの影響なんでしょうか?」
「何かが起こっている。そう感じた私は、全てをリセットさせるために、人類誕生の昔へ戻った。そこで、私は会ったのだ」
「誰に?」
ゼロの指の先には、巨人、ゼットがいた。
「ゼットは最後の人間なんじゃ?」
「そして、最初の人間でもある。三百年後の未来に残したゼットと私の娘の受精卵が、人類誕生の過去で産まれていた」
「何ですって!ってことは、人類はゼットと娘さんの……いや、ゼロ、あなたの子孫ということですか」
「待って、どういうことなの? 分からない」、バンダナは頭を掻きむしって言った。
「メビウスの輪。ゾンビ化した未来で言ってましたよね」、僕は思い出した。
「未来と過去が裏側で繋がった。そういうことですか」、博士がゼロに尋ねた。
「猫君とヒカリさんのおかげで、メビウスの輪は解けたのです。ゾンビ化の未来はもうありません。だか、そのせいで問題が起こったのです」
「このまま未来へ進んでも、人類は誕生しない」、博士が言った。
「そういうことです」、ゼロは頷いた。
「なぜ?」、ヒカリが尋ねた。
「私が初めて未来でゼットに会った時には、まだゾンビ化の未来は存在していなかった。やがてタイムスリップを繰り返すうち、この世界の裏側に猫君とヒカリさんが見たゾンビの世界が生まれたのです」、ゼロが説明した。
「ゾンビの世界はおサルさんが作ったのですよね」、ヒカリが尋ねた。
「そうです。私は実験のため、サルを未来に、ウサギを過去に連れて行ったのです。タイムスリップをした者には、ある現象が現れるのです。未来に行った者は未来に、過去に行った者は過去に引き寄せられるのです」
「それは、僕がゾンビの未来から元の世界に戻るのに使った方法だ」、僕は言った。
「その通りです。私は未来から戻ったサルと、過去から戻ったウサギを、一つの檻に入れてしまったのです。未来と過去に引っ張られたサルとウサギは、この世界の裏側に落ちてしまった。彼らは元々私の娘が飼っていたペットです。未来や過去へ連れて行ったのは、娘の死の直後だったのです」
「それで死のない世界を作ったのね」、ヒカジは言った。
「そうです。だが、やはりそこに娘はいない」、ゼロは続けた。
「だから、この世界と裏の世界を繋げた」
「その通りです。私はそのことに気づかず、ゾンビ世界の終わりに娘とゼットの受精卵を残してしまったのです」
バンダナは何が何だか分からず、頭を抱えてしまった。そこで、博士は一本の帯を持ち出し説明した。
「ここに一本の帯があります。表は白色、これが私たちが住んでいる現実世界です。本来、一本の線であり、白帯の端っこがこの世界の始まり、もう一方の端っこがこの世界の終わり。ゼロ校長はここでゼットにあったのです。この帯の裏側は黒色です。これがサルとウサギが作ったゾンビ世界。この帯を一回捻って輪っかにします。これがメビウスの輪。白の始まりから辿って行くと、やがて白の終わりが来ます。しかし、その続きに裏側の黒い色が続くのです。つまり、現実世界が終わった後に、ゾンビ世界が続きます。そして、黒の終わりには、また白が続いています。ゼロ校長は黒の終わりに受精卵を置いてきたのです」
「なるほど、分かったわ」、バンダナが大きく頷いた。
「だけど、メビウスの輪は解かれたんだよね。ゼロが受精卵を残したのは黒の終わり。だから、白の世界に人間は現れない。そういうことだよね」、僕は博士の説明に付け加えた。
「猫君とバンダナさんが動物に変化したのは、その影響かもしれない」、ゼロはさらに付け加えた。
「いずれ、現実世界から人間が消えていく。そういうことですね」
博士が言うと、ゼロは黙って頷いた。
「はじめに言ったように、過去や未来は存在しない。過去を変えたからといって、現実の今が変わるわけではない。だが、人間が猫や犬に変化するといった現象が起きている。奇妙な形で過去の影響が現れたのだ。私は、人類誕生の過去に戻って、元通り人類を誕生させるつもりだ」、ゼロが言った。
「でも、過去を変えたところで、今が元には戻らないんですよね」、僕はゼロに言った。
「そうです。だが、一つだけ方法があるのです」、ゼロは答えた。
「まさか、ゼロ校長!」、博士は何かに気づいた。
「過去に戻って、今を続けるのです。今の先には未来がやってくる」、ゼロは言った。
「もう、戻らないってこと?」、バンダナがそう言うと、ゼロは深く頷いた。
「受精卵はあと一つ、冷凍保存されている。私はゼットと共に過去で生きていきます。うまく行けば、猫君とバンダナさんは元の人間に戻るはずです」、ゼロはゼットの方を見ると、ゼットも深く頷いた。
「オカチマチ君、この学校の校長を引き継いでくれないか」、ゼロはそう言って、博士の返事を待たず、チェアーを回転させ、後ろを向いた。
「我々は、明日、出発する」、チェアーの後ろから、ゼロの決意が聞こえた。
「島のことは、僕に任せてください」、博士はゼロの決意に答えた。
翌日、全校生徒が体育館に集まった。体育館の中央には、巨大な卵型の物体があった。
「あれがタイムマシンです」、昨日の授業の先生が、僕たちに説明した。
「私も初めて見たわ」、ヒカリが言った。
体育館の正面の入り口から、小さな体のゼロと巨人のゼットが入って来た。ゼットは片手に大きな花束を掴み、体のあちこちには、子供たちがしがみついていた。肩に一人、腕に二人、足には四人の子供たちが、山のようなゼットの体の頂上を目指している。そんな様子をゼロは穏やかな眼差しで見ていた。
「あの子たちはみんな天才児でね。人と接するのが苦手なんです。親たちも天才児の不可解な言動を気味悪がって、育児放棄したんです。ところが、ゼットにだけはああやって子供らしい姿を見せるんですよ」、博士は僕とバンダナに説明した。
やがて、ゼットは持っていた花束から一本ずつ抜いて、子供たちに手渡していった。先生によると、あの花はゼットが校庭の花壇で育てたものらしい。
「諸君、聞いてください」、ゼロは演説を始めた。
「私たちの輝かしい今のために、過去に戻ってある計画を実行することになりました。ゼット、君はここに残るべきだ。私ひとりで計画を遂行する」、そう言うと、ゼロは早足でタイムマシンに向かった。
ゼットは、持っていた花束を床に投げ捨て、ゼロを追いかけた。ゼロがタイムマシンの梯子に足をかけ、登り始めたとき、ゼットが彼の足を掴んだ。ゼットはゼロを見て、大きく首を横に振った。
そのとき、体育館の入り口で誰かが叫んだ。
「それは、私たちの役目よ」、女はそう言うと、隣にいた男と一緒にタイムマシンに近づいた。
「父さん!」それは、僕の夢に出てきた女の子とスーツの男、つまり、ゼロの娘と息子だった。
「お前たち!どうしてここに?」、ゼロは言った。
「新たな能力が動き出したのよ。とにかく、父さんとゼットは未来を作って下さい。過去は私たちに任せて!」
「説明している時間がないの。猫と犬はどこ?」、彼女は僕とバンダナを探している。
「僕たちのこと?」
「息子が言ってたのは、あなたたちのことね。彼らが新たな能力よ」
「何ですって!」、バンダナが叫んだ。
「どういうこと?」、僕は尋ねた。
「私たちにも分からないの」、彼女は答えた。
「待って! 彼を知ってるわ!」バンダナはゼロの息子を指差した。
彼はバンダナに小さく手を振った。
「とにかく、時間がないの」、二人は急いでタイムマシンに乗り込みエンジンをかけた。
「父さん、受精卵は?」
「マシンの冷凍庫にあるが。お前たちに任せていいのか?」
タイムマシンは、卵型に機体の底から白い煙を吐き、キーンという金属音を放った。
「息子が知っているわ!」
娘はそう言い捨てるとタイムマシンのドアが閉まり、回転を始めた。金属音はどんどん高くなり体育館に響いた。そして、次の瞬間、跡形も無く、消えてしまった。
皆は呆気に取られ、ただ体育館の中央のタイムマシンがあった場所をぼんやりと眺めていた。
「ピカソじいさんが知ってる、って」、僕は呟いた。
「新たな能力って何だろう?」、ヒカリが言った。
「三十年後に完成するタイムマシンで、私はここに来て、そのままここにいる。彼女たちは、二十年前に死んでいる。つまり、タイムマシン無しで、未来に来たということだ」、ゼロは説明した。
「私たちもタイムマシンを使わずにタイムトリップしているわ」、ヒカリが言った。
「それが新たな能力っていうこと?」、僕は付け加えた。
「あの男の人、未来に行ったとき、私のパパって言ってたの。でも、父はもう死んでいるし、顔は別人よ」、バンダナが言った。
「一体、何が起こっているんだ?」、ゼロは腕を組んで天井を見上げた。
ゼロとゼットはそのままグリーンアップルに残ることとなった。博士とヒカリは、研究を続けるために島に残り、僕とバンダナは数日を島で過ごした後、ピカソじいさんの家に戻ることにした。
みんなが船着場で見送りに集まった。この島が知っている世界の現実は、きっとこの島を知る一部の人しか知らないのだろう。彼らはその現実を知り、何とか科学の力で乗り切ろうとしている。僕が人間だったころには考えもせず、ただ『世界のことなんてしるかよ。未来や過去なんて僕には関係ない』と言い放つだけだっただろう。だが、猫になった今も僕は何もできないでいる。島のみんなが手を振るのを見ながら、僕はそう考えていた。
帰りの船の中で、僕とバンダナは二人きりとなった。
「ねぇバンダナ。聞いてもいい? 君の娘さんってどんな子だい?」
「んとね。小さくって、丸くって、白くって、髪の毛がくりくりで可愛くって、まるで天使。でもね、病気だったのよ。一生治らないの。私は罪悪感でいっぱいだった。神様も恨んだわ。『何で私の子なの?』ってね。寿命は十年って言われたわ。でも、寿命が来る前に彼女は消えてしまったの」
「きっと、娘さんが君を選んだんだと思うよ。君が『何で私の子なの?』って思う前に、彼女の方が『何で私なの?』って思ったんじゃないかな。だから、君のところに来たんだよ」
「彼女が私を選んだの?」
「そうだよ」
「でも、何もしてあげられなかった」
「これから、するんだよ」
「帰ってくるのね。どうして分かるの?」
「ただ、そう感じるだけだけど」
夕暮れの日の光が差す船の上、二本の影が甲板の上に伸び、それがもうすぐ消える頃、港に着いたことを知らせる汽笛が、夕陽のオレンジ色と共に空に吸い込まれていった。
船が港に着いた。僕とバンダナが船を降りると、自動運転の船は一つ汽笛を鳴らし、暗い海の向こうに消えていった。それと同時に街の方から一つ明かりが近づいた。それは僕たちの前で止まった。
「おかえり」
車の窓が開き、ピカソじいさんの笑顔が覗いた。
「ただいま」僕とバンダナは同時に言った。
車の中で、ピカソじいさんが語り始めた。
「この世の中は、左脳優先の教育ばかりが進められておる。それも、資本を得るための教育が殆どじゃ。結果は、物の価値も分からん、善悪の判断もできない人間が増えるばかり。島の教育の自然と共存した科学教育は素晴らしいが、足りないものがある。考えることも必要じゃが、感じることの方が重要なのじゃ。感性を育てることの重要性に誰も気付いていない。わしとお前さんたちは感性で繋がり、それを広げていかなければならんのじゃ。猫の姿であれ、犬の姿であれ、魂の価値は命ある者すべてに存在する。つまずき、傷つき、迷いながらも、己の魂を捨ててはいかん。相手の魂を見下してはならん」
じいさんは、新しい能力のことを言ってるのだろうか。僕とバンダナは車の後部座席で、うとうとしながら聞いていた。
「いずれ、全てを話す時が来る。疲れたじゃろ。そのままおやすみ」
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