第10話

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カムチャツカの少年を直江津港から喜望峰経由でいろんな話をしながら地球をグルッと一周した後、カムチャツカで出会った場所に送り返しました。彼のおばあちゃんと話したかったんですがおばあちゃんに僕は見えないらしく、僕はおばあちゃんと少年をしばらく見送り、直江津の関川と保倉川の合流するところに戻って来ました。


そうか、ジャズは宗教になったんだね。音楽ではお金儲けが出来なくなってしまったんだね。でも人類は音楽を手放さなかった。そして音楽はつまらなくなってしまったけど、カトリックもプロテスタントも、浄土真宗も曹洞宗も真言宗も、シーア派もスンニ派も世の中の宗教を全部ひっくるめて認めながら、大きな大きな宗教になってしまいました。


そう、カムチャツカのおばあちゃんが言うには、音楽は世界の平和と引き換えに、つまらなくなったんだそうです。人類はちゃんと考えていたんだね。バッハもラフマニノフもショパンも、この時代を夢に見ていたのかも知れない。エルビス・プレスリーもジョン・レノンも、マイルス・デイビスも、スティービー・ワンダーも、桑田圭祐も、人類は最後の最後まで、メロディを紡ごうとした。でも、ある時、音楽は最後の音を残して終わってしまったそうです。それがつまり、トゥーーーーーでした。

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