第2話

(2)


2つのハーモニクスは交互に鳴り響き、穏やかなリズムを伴って音楽になりました。

彼は飽きたように、1弦や2弦や3弦の12フレット上のハーモニクスを一気に鳴らしたままギターをギタースタンドに立てかけて立ち去って行きました。ハーモニクスはまだ鳴り止みません。今から64年後の音楽はどうなっているのか確かめに行きましょう。


僕らはただの意識。さっきまでハーモニクスを鳴らしていた彼に僕は見えない。そしてこの文章を読んでいるあなたの事にも絶対に気づく事はありません。スーッと全てを通り抜けて、彼のやる事なす事覗き見出来ます。ここはどこでしょうか。おそらく上越市直江津だと思われます。関川と、保倉川が合流しています。今ちょうど夕暮れ時に差し掛かろうとしています。前方に灯台が佇んでいます。夕方7時くらいでしょうか。静かです。


釣り人がじっと、釣り糸を垂れています。


もう1つ確かめに行きたい事があります。本来音楽は誰のものでも無い。ドを鳴らしたきゃいつ鳴らしたっていいし、D7の響きが欲しけりゃいつでもそこにある。うるさかったらごめんなさい。だけどそれでも僕らは音楽を楽しむ事に関して、誰からの許しも要らない。この時代もそうであって欲しい。と強く思います。それがこの時代も変わっていない事を、一緒に確かめに行きましょう。



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