2081年のドナ・リー

@ITOPAN

第1話

(1)


僕らはどう足掻いても、未来の事は分かりません。今日は2017年5月25日です。つい先日イギリス、マンチェスターのアリアナ・グランデさんの公演を狙ったテロがありました。知っていたら、行かなかった人もいるでしょう。僕らは未来の事は分かりません。


だけど、想像する事は出来る。今から64年後の2081年5月25日を想像してみます。


ご覧ください。部屋に一本のアコースティックギターがあります。5弦のちょうど半分のところを軽く指で触ってピックで弦を弾くと、実音のA音の1オクターブ高いA音がなる事でしょう。見知らぬ男性が今、鳴らした音をハーモニクスと言います。


次に、同じ5弦の全長の1/4の点。5フレットの真上に指で軽く触って、ピックで弦を弾くともう1オクターブ高いハーモニクスが出ます。どんなに人類が進歩しても、そこは変わらないはずです。


その頃、音楽はどうなっている事でしょう。見知らぬ彼はつまらなそうに、5弦の2種類のハーモニクスを交互にゆっくり鳴らし続けます。


おそらく、街並みも人のスタイルも行き交う車のデザインも想像出来ないほど変わっている事でしょう。だけど、彼がこうして鳴らしているハーモニクスは今と全く変わらない。


僕は、その昔ジャズを生み出したのはギタリストだったんじゃないかと思っています。ハーモニクスがこんなにも簡単に弾ける楽器は他に無いですから。


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