第35話モブキャラだってデュエルくらいする3
俺は一体何を見ているんだろう、突然とんでもない虚無感に襲われる。
『このアニメのキャラなんて言うの~?』
『こっこここここれは今期の覇権アニメと言われてる、おおおおお俺の妹がカラオケリモコンで力士の後頭部を殴ってしまった件についてのヒロインですぞ!』
『しかもネット注文で数量限定のリミテッドエディションでデュフフフフフフフ』
『見てくだされ!この記者会見を開いているヒロインの姿を!素晴らしいでしょう!』
眼前に広がるのはいかにもオタサーの姫って感じの絶妙にかわいくない女の子と、それに群がる悲しいオタクという名の草食動物たちの戯れだ。
お互いの需要と供給が噛み合い、関わる者全員が幸せな天国のような場所のはずなのに、見ていると無性に悲しくなってくる。
俺は数分前、カードゲームによる決闘の結末を見届けてくれと頼まれてここにいたはずだ。
ドラゴンやカッコイイ騎士、多彩なモンスターたちが織り成す戦いを最新の立体映像で見れると思っていたのに・・・
「なぁ・・・遊一・・・これって・・・」
「あぁ!理系男子大学生がフィールド上に三体以上いるときに特殊召還することができるモンスター・・・サークルプリンセス 姫だ!」
「いやある意味モンスターみたいな顔面だけど!」
「こいつがフィールド上にいることで『サイエンスナイト』と名のつくモンスターはDP(童貞ポイント)が1000アップするんだ!」
「本家の遊○王みたいな効果だな・・・ところでYP(ヤリ○ンポイント)は上がらないのか?」
「いくら身近に女の子がいるからって、アニメ研究会に入部している奥手な理系男子学生が女の子に手を出す勇気を出すわけないだろ!いい加減にしろ!」
「なにその理系男子学生に対するとてつもない悪口・・・」
「フフフ・・・さぁどうする山馬!これで俺のフィールド上のモンスターは2対ともDP3000!これは30歳童貞の貞操の堅さに匹敵するゼ!」
「嫌なものに匹敵してるな・・・」
ふとモンスターのほうを見てみると
『デュフフフフフフフ姫たそは僕らが守りますぞ!』
『ななな、なんたってぼぼぼ僕らは姫たそを守るななナイトですからwwwwww』
『ふぇぇぇぇ・・・二人とも頼りになるぅ☆姫のこと守ってニャン☆』
『フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
とても気持ちの悪い光景が広がっていた。
姫と呼ばれるモンスターを二人のオタクが守っている。
ここまでのやり取りからこのゲームがどういった類のものなのか、大体検討がついた。
たぶん山馬の出すモンスターもこんな感じなんだろう、一刻も早く終わらせてほしい。
「俺のターンは終了だ!さぁ山馬!お前の力、見せてもらおうか!」
「フゥン・・・見事だ遊一!だがこの勝負勝つのはオレだ!!いくぞ!ドロー!」
さて・・・今度は一体どんなモンスターが出てくるのか・・・
「いいカードを引いた・・・出て来い!我がモンスター!
センテンスナイトアキラ!」
再びフィールドが光に包まれる。
そしてその中から現れたのは・・・
『ウェェェェェェェイ!』
とんでもなくハイテンションの金髪男だった。
「くっ・・・そうきたか山馬・・・」
遊一が苦そうな顔をする。
「えっ?何なのアレ?」
「あれは俺のサイエンスナイト・・・理系男子大学生の天敵・・・
センテンスナイト・・・つまり文系男子大学生だ・・・」
『ウェェェェェェェイ!うぇーーーーーいwwwwwwwwwwww』
「この超絶に頭が悪そうなのが・・・?」
「そう・・・文系男子大学生だ・・・」
とりあえず・・・文系は英語でセンテンスじゃない気がする。
「このゲームの作者男子大学生に恨みでもあんの!?」
「このゲームの作者であるペガサス・J・ブロフォードが大学受験を失敗してキャンパスライフを送っている人間全員を呪っているらしい」
「純度100%の私怨じゃないか!というか・・・こんなのが天敵なの?」
「ああ・・・まずいことになった・・・フィールド上のサイエンスナイトを見てみろ」
「え?」
言われるがままにフィールドを見てみると、
先ほどまで完全に調子をこいてた二体の理系学生が完全に沈黙し、斜め下を向いたまま視線が泳ぎまくっている。
「理系男子大学生は自分のホームだとめちゃめちゃイキるが、近くにちゃらい文系男子大学生がいると怖くて縮こまってしまうんだ」
「なんでそんなとこまで無駄にリアルなんだよ!」
「フゥン・・・甘いぞ遊一!まさかこれで終わりだと思っているのか!?」
「何っ!?まさか!?」
「そのまさかだ!魔法カード発動!『心変わり(NTR)』」
山馬の宣言と共にフィールド上のセンテンスナイトアキラが光りだす!
「遊一っ!これは?」
「これは魔法カードといって使うことで特殊な効果を発動できるカードだ・・・そして『心変わり(NTR)』の効果は・・・見ろ」
そう言って遊一はフィールドの方を指さす。
その先では・・
『ウェーーーーイ!君かわいウィィィねぇ!』
『えっ?そ、そんなことないですよぉ』
『いやいや!イケてるってマジ!どう?この後オレとワンチャンどう?』
『えーっ・・・じゃあ・・・ちょっとだけ・・・』
『イエェーイ!じゃあ行こうか!』
『えっ?姫たそ?』
『そ、そんな得体も知れないおおおお男の所へ行ってはダメですぞ!』
『二人ともゴメンね・・・大丈夫!ちょっと遊んでくるだけだから・・・さぁ行きましょ!』
『ウェェェェェェェイ!』
『『ひっ、姫ェェェェェェェェェェ!』』
「クックック・・・そう・・・このカードによって俺は相手モンスターのコントロールを得ることができるのだぁ!」
「絶対いらないよねこの茶番!」
無駄に心が痛んだ。
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