第32話 ヒロインだって出会い方は選びたい2

「ともかく!パロ・スペシャルは禁止だ!わかったな」

「はーい・・・」

「ハイデース」

二人ともガッカリした表情で承諾してくれた。

というかよくこの作戦でいけると思ったな・・・

「じゃあどうすればいいんだよ兄貴ー」

「そうだな・・・さっきみたいなインパクトだけじゃなくて、もっと引き込まれるような出会い方じゃないと運命的な出会いにはならんだろ」

「引き込まれるか・・・そうだ!」

再び妹が何か思いついた表情になった。

今度こそまともなアイディアだといいんだが・・・

「アナスタシアちゃんこっち来て・・・えっとね・・・ごにょごにょ・・・」

「フムフム・・・ナルホド・・・ソレハイイアイディアデース!」

「でしょ!よし!これでいこう!」

「・・・」

ほんとに大丈夫だろうか・・・

なんとなくだがいやな予感がする。

「よし!兄貴!もう一回曲がり角から来てくれ!」

「さっきみたいなことにならないだろうな・・・」

「大丈夫大丈夫!安心して!」

「アンシンデース!」

二人が親指を立てながら笑顔で太鼓判を押す。

これだけ気持ちのいい笑顔なのだから・・・まぁ・・・大丈夫・・・か?

不安もあるがここまできたら二人を信じるほか無い。

もう一度先ほどと同じ曲がり角でスタンバイしていると、

「オッケー!こっちに来てー!」

妹の合図の声が聞こえた。

先ほどのトラウマがあるが勇気を出し踏み出す。

すると、先ほどと同じように曲がり角でアナスタシアさんとぶつかりそうになる。

一瞬先ほどのトラウマがよみがえり距離を取ろうと後ろに引き下がった、その時であった。

「なんだとっ!」

まるでアナスタシアさんに吸い込まれるように、自分の体がアナスタシアさんに近づいていく!

そして体勢が崩れ前かがみになった俺の頭をアナスタシアさんは自分の股で挟み込んだ!


おお・・・これは・・・もしや夢に見たラッキースケベなのでは?

やわらかい餅のような肌が自分の頭にぴたりとくっついている感覚がする。

なんだ・・・やればできるじゃないか・・・そう思った瞬間だった。

「ん?」

アナスタシアさんは続けて俺の胴体を両手で抱え込み、腕を俺のへその辺りでクラッチしたのだ。

もしかして・・・

一気に嫌な汗が体中から吹き出た。

俺はこの技を知っている・・・確かあのゲームの・・・

「ちょ・・・ちょっとまっ」

俺の制止の言葉も虚しく、アナスタシアさんは俺の体を垂直に持ち上げていた。

そして・・・

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!

すさまじい轟音とともに俺の頭を地面に叩きつけた。

そう・・・この技は・・・


ストリート○ァイター2のザンギ○フでおなじみの投げ技、


パイルドライバーだ。



「アナスタシアさんは格ゲーのキャラか何かなの?」

ボロボロになりながら二人に放った最初の言葉がこれであった。

「ジツハロシアデ格闘技ヲナラッテマシテ・・・」

アナスタシアさんが照れたように言う。

「通りで技の切れがすごいわけだ・・・でもなぜわざわざ曲がり角でパイルドライバーを仕掛ける必要があった!?」

「えっ?だってさっき兄貴『引き込まれるような出会い方じゃないと運命的な出会いにはならん』って言ってたからザン○エフの吸い込まれるようなパイルドライバーならいいかなって・・・」

「引き込まれるようなって格ゲー投げ技のこと言ってるわけじゃねぇよ!?」

確かにあのパイルドライバーはすさまじかった、本当にザン○エフの投げ技のような吸い込みが発生していた。

だが、あの技をかけられた場合、伊織は間違いなくアナスタシアさんに対して恐怖を感じるようになるだろう。

実際俺は今恐怖を感じている。

「とにかく!パイルドライバーも禁止だ!」

「えーっ・・・あっ・・・もしかしてスクリューパイルドライバーのほうがよかった?」

「そういう問題じゃない!」

アナスタシアさんなら女子格闘技会に革命を起こせるのではないだろうか。

そんなことを考えているとアナスタシアさんが申し訳なさそうに口を開いた。

「フタリトモ・・・メイワクカケテホントウニゴメンナサイ・・・」

「そんな・・・迷惑だなんて・・・兄貴だってよろこんでやってることだし気にしなくていいんだよ?」

「おい」

確かに最初は下心があって協力していたが、このボロボロの状態を見てそんなことを言われるとは。

だがこの空気の中そんなこと正直に言えるはずも無い。

「イインデス・・・ヤッパリワタシミタイナ超人強度ノタカイオンナガ、スカレルワケナインデス・・・」

「アナスタシアちゃん・・・」

二人とも先ほどまでの元気のよさは何処かへ行ってしまったらしい。

・・・今日は散々な目にあったがこのままでは目覚めが悪い。

せっかく妹が頼ってくれたのだ、兄貴が一肌脱がないわけにもいかない。


「アナスタシアさん・・・別に特別なことはしなくていいと思うんだ・・・君はそのままでもかわいいし、きっと伊織も覚えてくれているさ」

「エッ・・・デ、デモ・・・何年モ経ッテイルシワタシノコトナンテ・・・」

「仮に忘れていたとしても、君の知っている伊織はこんなカワイイ女の子を雑に扱うような薄情なやつなのかい?」

「ソッソンナコトナイデス!」

「だろ、じゃあ何も気にせず一生懸命な君のままぶつかってみればいいさ。大事なのはこれからだよ」

「・・・ソウ・・・デスネ・・・・ハイ!全力ノワタシヲブツケテミマス!」

先ほどまでも泣き顔は何処へやら、満面の笑みがそこにあった。

「兄貴・・・たまにはいいこと言うじゃん」

「へっ・・・だろ」

どうやら一件落着したようだ。

妹にカッコつけられたし、兄の面子も守られたわけだ。

めでたし、めでたし。



数日後


「イッ、伊織オニイチャン!」

「ん?」

とある通学路、アナスタシアさんは憧れである伊織という男と出会っていた。

「ついにこの日が来たな」

「シッ!兄貴静かに!」

俺と妹は電柱の影からその様子を伺っていた。

どうやらアナスタシアさんは直球勝負でいくようだ。

緊張しているのかいつもは白い顔が赤くなっている。

伊織のほうはアナスタシアさんが誰だかまだわかっていないようだ。

「えっと・・・君は・・・?」

キョトンとした顔で問いかける。

「頑張れ・・・アナスタシアちゃん!」

妹が身を乗り出し、ひそひそ声で応援する。

俺も思わず生唾を飲み込んだ。

そして意を決したのかアナスタシアさんが目を見開いて前を向いた。

「アイタカッタヨー!オニイチャンー!」

そう叫んだ彼女は一直線に伊織の元へ走っていく。

どうやらこのまま伊織に抱きつくつもりのようだ。

そう、これでいいのだ、真っ直ぐな気持ちを伝えればそれでいい。

今現在繰り広げられている青春模様を優しい目で見守っていた・・・のだが・・・


「・・・ん?あれはなんだ?」

アナスタシアさんの両手に妙なものがついている。

そうまるでトゲのついたグローブのような・・・

そう・・・あれは


ウォー○マンでお馴染み、ベアークローだ。


なぜこのタイミングで?なんのために?そんな疑問が浮かんできたがそれすら吹き飛ぶ出来事が起きる。

「あっアナスタシアちゃんが両手にベアークローをつけて飛び上がった!えっ!?さらに回転をかけながら伊織さんのもとへ突っ込んでいく!?」

理解のできない展開が続く。

そしてアナスタシアちゃんの魂の叫びが聞こえてきた。

「両手ニベアクローヲツケルコトデ100万パワー+100万パワーデ200万パワー!イツモノ2倍ノジャンプガ加ワリ、200万×2ノ400万パワー!ソシテ、イツモノ3倍ノ回転ヲ加エレバ400万×3ノ1200万パワーデス!ワタシノ全力、ウケトメテ!伊織オニイチャン!」

「えっ、ちょまっ」

すさまじい勢いで回転する彼女は、そのままの勢いで伊織の股間の角へと突っ込んでいく。

そして・・・


「ギャああアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああ!」


伊織の叫び声が当たり一面に響き渡った。



「兄貴・・・アナスタシアちゃん全力でぶつかっていったね」

「・・・そうだな」


日本語って難しい、俺たち兄弟はそれを学んだ。

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