第28話 戦隊ヒーローだって愛車にこだわりはある2

「もう少しまともな車があったでしょう!?」


とりあえず一番言いたかったことをぶちまけた。

「うーむ、どれもイメージ通りでいいと思ったんだがなぁ・・・」

何故これがダメなんだろう、と言いたげなジェスチャーをしながらレッドは不満そうに言った。

「いやむしろなんでこれでいけると思ったんですか・・・」

5台ある車のうち2台が子供に「アレ何の車?」と聞かれても答えられないような車だ。

ヒーローとしてふさわしいわけが無い。

中でも一番の問題が、

「なんでマジック○ラー号が愛車なんですか!?」

AVの撮影で使われる例の車がこの場にあることだ。

この車が画面に映されるだけで世の中のお父さんたちはざわついてしまうだろう。

だがそんな事情を承知の上なのかピンクは悪びれもせずに理由を話す。

「だってー私この車よく使ってるしー☆」

「よく使ってるの!?」

「撮影とかー、プライベートとか☆」

「ささささ撮影とぷぷぷぷぷぷプライベート!?」

とてもヒーローとは思えない発言だ。

もし証拠のDVDとかがあるならぜひとも見せてもらいたい。


「ウォッホン!ともかく!こんな車じゃ子供の人気なんかとれませんって」

もっと聞きたいことがあったがこのままでは相談役としての役割を果たせない。

なんとか話をもとに戻さなくては。

「フッ・・・その決断はまだ早いぜ・・・」

そう言ったのはブルーだ。

「どういう意味ですか?」

「俺たちの愛車の真の姿をまだ見せていないってことさ!ピンク!見せてやれ!」

「え?おっぱいを?」

「違う!合体だ!」

「ええ?こんなとこで?・・・流石のアタシでも野外でしかもみんなに見られながらは・・・ちょっと興奮するかも・・・」

「そっちの合体じゃない!車だ!く・る・ま!」

「ちぇっ・・・なんだ~しょうがない・・・ポチッとな」

ピンクは残念そうにつぶやくと手元にある装置のボタンを押した。

すると

ゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオ!

と5台の車から炎と煙が噴出し、空へと舞い上がったのだ。

「こっこれは!?」

「フッフッフ・・・これが俺たちの新兵器、変形合体ジャスティスロボだ!」

レッドの掛け声とともに空中を舞う車が次々と変形していく。

ピンクとイエローの車は足の形に、ブルーの車は両腕に、レッドの車は上半身の形に変形した。

そしてそれぞれの車が合体し人型のロボットへと変化していく。

完成したロボットは大きく、都会のビルくらいの高さだ。

これなら巨大化した怪人相手でも負けはしないだろう。

「フッ・・・どうだ!これを見てもまだ子供の人気がとれないと言うか!」

「ぐっ・・・」

確かにブルーの言うとおりだ。

車単体であればとても子供人気がとれるものではなかったが、こうして合体した姿を見ると少し興奮している自分に気がつく。

ピンクの車には別の意味でドキドキしたが。

これならば子供からの人気もとれる


・・・はずなのだが

「なぁ・・・一個聞いていいですか?」

先ほどから気になることが一つある。

「ん?何だ?」


「グリーンの車は?」


そう、グリーンの車がロボに含まれてない。

最初煙とともに空中を舞っていたのだが、結局何もせず地上に降りてきたのだ。

「ああ!グリーンの車なら


邪魔だし別に合体しなくていいかなっと思って」

「酷くない!?」


戦隊ヒーローといえど、チーム内にヒエラルキーはあるようだ。

「だって~、5台合体にすると予算の範囲を超えちゃうし~、4台でもロボになれるって博士が言うから~じゃあグリーンの車合体しなくてもよくない?ってことになって☆」

「なんでそこで妥協するんですか!?グリーンもなんとか言ってくださいよ!」

チーム内で1人仲間外れはさすがに酷すぎる。

しかも正義を自称する戦隊ヒーローでだ。

グリーンも心のうちになにか秘めているに違いない。

パッとグリーンのほうを見ると。

「い、いや・・・別に僕はどっちでもいいし・・・みんながそれでいいなら別に僕もそれでいいです・・・はい・・・」

と、うつむきながらどんよりした空気を醸し出していた。

完全にクラスに1人はいるいじめられっこだ。

「で、でも流石にこれは何かしら言いたいことあるはず・・・」

「い、いえ、大丈夫です・・・ツイッターでこの仕打ちを拡散して他の4人のツイッターと個人ブログを炎上させればスッキリするんで・・・」

「結構陰湿な仕返しですね・・・」

確かに彼には黒塗りの高級車がお似合いかもしれない。

だがそれはそれ、これはこれだ。

「やっぱりメンバー1人だけあまるのはダメですよ。下手したら不仲説とか出るかもしれませんし、そんなことになったらますます子供人気下がりますよ」

「うーむ」

子供というのは意外と敏感だ。

下手をすると大人よりも人間関係の変化に気づきやすいのかもしれない。

せっかくロボットのできはいいのだ、どうにかしてこの欠点を直さなければ。

「・・・よし、わかった!博士に連絡をとってどうにかグリーンも合体できないか交渉してみよう!」

「れ、レッド・・・」

今までうつむいていたグリーンがようやく顔を上げた。

どんな表情かはわからないが、きっと喜んでいるだろう。

「あ、ありがとう・・・じゃあ僕も炎上させるのはツイッターだけにするよ・・・」

「あ、炎上はさせるんだ」



こうしてグリーンを含めた合体ロボの作成のため、動き出したジャスティスファイブ。

しかし、そんな彼らを待つのは過酷な現実だった。

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