第27話 戦隊ヒーローだって愛車にこだわりはある1

ここはとある採石場、普段の生活では絶対に寄ることのない場所だ。

俺の目の前には赤、青、黄、緑、ピンク、それぞれの色の全身タイツを来た5人の人間が立っている。

何故たかがモブキャラの俺がこんなところにいるのかというと・・・


「最近人気が落ちてる?」

「ああ・・・特に子供からの人気がな・・・」


俺らの町を守るヒーロー、ジャスティスファイブから相談を受けたからだ。

以前も「人気が伸びない」という相談に乗ったがまさかすぐに似たような話をすることになろうとは。

「・・・そもそも前に登場シーンを修正したとき人気上がったんじゃあ・・・」

当然の質問をするとレッドが言いづらそうに答えた。

「まぁ確かに等身大のヒーローとして一時的に人気は伸びたんだが・・・」

等身大のヒーローっていうか自分の性癖言いふらしただけな気がするが。

「フン・・・登場シーン以外にインパクトが無いからかその後伸び悩んでいるわけだ・・・」

ブルーが不服そうに言う。

「そこで・・・その・・・僕たちなりに新しいアプローチを考えてきたんで・・・」

グリーンがおどおどしながら発言する。

「それがアンタみたいなモブキャラから見たらどんな感じに見えるか教えてほしいってこと☆」

ピンクがキャピキャピしながら今回の相談の趣旨を教えてくれた。

「なるほど・・・もうどういうアプローチでいくのかは決めているわけか」

「そういうことだ!よろしく頼む!」

レッドがキッチリとしたお辞儀をしてきた。

アプローチがいいかどうか言うだけならそんなに負担はないか・・・

みんな真剣に悩んでいるようだし。

「まぁいいですよ、俺なんかのアドバイスでいいなら。」

「本当か!?助かる!ありがとう!」

レッドはそういいながらこちらの手をとり握手をしながらブンブンと振り回した。

「・・・ん?」

ここで一つの違和感を感じる。

何か足りないような気がする・・・どうでもいい何かが・・・

「あっ・・・そういえばイエローはどこにいるんだ?」

そう、ジャスティスファイブの1人であるジャスティスイエローの姿が見えないのだ。

いつもならカレーを片手に突っ立っているはずなのだが・・・

この疑問にはグリーンが答えてくれた。

「ああ・・・イエローなら


この前女子トイレに忍び込んでたのが警察にバレてまだ拘置所にいるよ」


「なるほど!納得した!」

そのままブタ箱に突っ込まれたままになってほしい。



「で、一体どんなアプローチをするつもりなんですか?」

人気をとるというのも簡単ではない。

今まで数多のヒーロー・ヒロイン・キャラクターがこの難題に立ち向かってきたが、未だに答えが出ない難問だ。

奇抜すぎても普通すぎてもダメ、オリジナリティが必要になる。

そんなまさしく個性が求められる今回の件に、特別さが一切無いモブキャラの俺がアドバイスなんてできるのだろうか。

結局当たり障りの無いコメントをして終わりな気がするが、せっかく頼ってくれたのだしやるだけやってみよう。

「俺たちの今回のアプローチはズバリ・・・合体ロボだ!!」

「・・・なるほど」


合体ロボ

それは戦隊ヒーローの要ともいえる。

戦闘の後半、なんやかんやで巨大化する怪人に対抗するための手段が合体ロボだ。

合体ロボはその戦隊ヒーローの特色を現す。

例えば恐竜をモチーフにしたヒーローであればティラノサウルスやトリケラトプスのロボットが合体するし、レスキューをテーマにしたヒーローであれば救急車や消防車が合体して人型ロボットになる。

このロボットが少年の男心をくすぐるのだ。

子供からの人気がほしいならこのロボットに力を入れるのが手っ取り早い。

全開のポンコツぶりからは考えられないようなまともなアイディアだ。

「今まではロボットはいなかったんですか?」

「予算の問題でな・・・」

「ああ・・・」

戦隊ヒーローも世知辛い問題と戦っているようだ。

「た、確かに・・・今まではロボットはいなかったんですけど、こ、今回けっこう予算をもらえて新しくロボットを作ってもらったんです!」

「しかもこの業界で有名な・・・ダイジョーブ・セイコウスール博士が開発してくれたのよ☆」

なんだか信用できない名前だ・・・

だが業界で有名な博士が携わっているならば大丈夫だろう・・・たぶん。

「今回は完成した新しいロボットを見てほしくてここに呼んだわけだ!」

「あーだからこんな採石場に呼び出したわけだ」

「そうだ・・・ここならロボットに変形しても被害が出ないからな」

呼び出された場所が妙だと思っていたがそういうわけだったのか。

たしかにここなら巨大なロボットが多少暴れたところで大きな被害が出ない。

周りには俺たち以外いないし、ロボットのお披露目にはちょうどいい。

「こ、今回のロボットは・・・ぼ、僕たちの個性を表現した車が合体するってコンセプトなんです・・・」

「まぁ見てもらったほうが早いわね、じゃあ早速☆」

そう言ってピンクが手に持った機械のボタンを押すと

ゴゴゴ・・・

と大きな音を立てて採石場にある山の向こうから一台の車が走ってきた。

「これが俺ことジャスティスレッドの車・・・ファイアーレッド一号だ!」

そう呼ばれた車は真っ赤な消防車だった。

「俺の情熱と同じ真っ赤だ!」

「あーなるほど、そういう感じね」

それぞれの色にあった車が合体するってことか。

「それじゃあ次いってみましょー☆」

ピンクが再びボタンを押す。

次に出てきたのは・・・

「フン・・・この俺の愛車、ブルースピードだ」

真っ青なスポーツカーだった。

「圧倒的なスピードの俺のイメージにぴったりの車だ・・・」

「あー、ブルーって早漏だもんね☆」

「いや、そういうスピードじゃなくて」

ブルーが早漏かどうかは置いといて、確かにこれならキャラクターのイメージとマシンを結びつけて覚えやすいかもしれない。

今回はこの前みたいに怒鳴り散らさなくも大丈夫そうだな。

「ほいじゃあ次はここにはいないイエローの車ね☆」

イエローか・・・カレー以外のイメージがないが一体どんな車なのだろうか・・・

そんな期待と不安が入り混じった状態で待っていると山の向こうから車が来た。

それは


「イエローはなんと!CoCo○番屋の宅配トラックでーす☆」


「なんか思ってたのと違う・・・」

まさかのコラボレーションだった。

「え?イメージどうりだと思ったんだが・・・」

レッドが首をかしげながら言う。

「いやまぁ・・・確かにイエローのイメージ通りなんだけどさ・・・その・・・正義のヒーローが乗る車がCoCo○のトラックって・・・その・・・良くないような・・・」

直接的にダメ出しするのではなくフワッとした注意をする。

すると4人が、ああ!みたいなジェスチャーをしてくれた。

表情がマスクで見えないがどうやら俺の言いたいことを理解してくれたようだ。

「権利問題なら大丈夫!許可をもらっているよ!」

「そうじゃなくて・・・」

「フン・・・心配するな・・・ちゃんと車の中にカレーはあるぞ」

「いやそこでもなくて」

「まぁ戦闘のたびに社内がカレーだらけになるけどね☆」

「あ、あと激しい戦いだと・・・そこら中にカレーが飛び散って苦情がくるかも・・・」

「欠陥だらけじゃないですかこの車!?」

なぜわざわざこんな戦いに向かない車をチョイスしたのか、コレガワカラナイ。

「じゃあ次いってみよー☆」

「え?俺の意見スルー!?」

俺の意見をかき消して次の車を呼び込むピンク。

もしかして最初から俺の意見を聞くつもりなんてないのではないのだろうか。

そんなモヤモヤが晴れないまま待っていると次の車が来る。

「次はグリーンの車だ!」

グリーンの車か・・・グリーンはイエロー異常に特徴がないが一体どんな車なのか。

山の向こうから来たのは


(怖い人たちが乗る)黒塗りの高級車だった。


「こ、これが僕の車、グリーンダークです・・・」

「いやグリーン要素一切入ってないんですけど!?」

「ハッハッハ!この車はグリーンの腹黒さを表現しているんだ!」

「グリーンの腹の中真っ黒じゃないですか!」

「れ、レッドさんったら嫌だなあ・・・僕そんなに腹黒くないですよ」

確かにこの自信なさげな話し方からそんなに腹黒くないように思えるが・・・

「こ、この前車運転してるとき追突してきたサッカー部に落とし前・・・じゃなくて、示談の交渉しただけじゃないですか」

「えっ」

「いやいや!だってお前俺たちに『この動画見てください!すっごく笑えますよ!』って言いながらサッカー部の子達が土下座しながら誤ってる動画見せてきたじゃないか!」

「ヒーローとは思えない真っ黒・・・」

不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまったサッカー部の人たちはグリーンから一体どんな示談の条件を言い渡されたのだろうか。

あまりこの話題は突っ込まないほうがいい気がしてきた。

「つ、つぎの車いきましょう!」

多少強引だが次の話題に進むことにした。

「じゃあ最後は私の車よ☆」

そういいながら装置のボタンを押す。

ピンクの車か・・・唯一の女子枠だしきっとかわいらしい車に違いない。

うん、きっとそうだ、これまでの流れをバッサリ打ち切ってヒーローらしい車を見せてくれるさ。

目をつぶりながら、そう自分に言い聞かせた。


「おっ、ピンクの車が来たようだな!」

「わぁ・・・い、いつ見てもすごいですね」

「フッ・・・ピンクらしいかわいらしい車だ」

「でしょでしょ☆アタシもデザインにこだわったの!」


そんな4人の談笑が聞こえてきた。

この反応なら間違いないだろう。

きっと素晴らしい車だ。

そう信じて目を開ける。


そこにあったのは


「じゃじゃーん☆これが私の愛車



マジック○ラー号でーす!」



「R-18じゃねぇか!!!!!!!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます