第19話 料理マンガの主人公になったからってオッパイが見れるわけではない5
「今!料理史に新たな1ページが刻まれました!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
なぜ・・・ねるねる○ねに水を入れただけでこの人たちはこんなに盛り上がっているのだろうか。
きっとみんな危ないハーブでもキメているんだろう、うん、そうだ。
会場の興奮が冷めないまま、ウィッチ村上は次の工程へと移るようだ。
「ヒッヒッヒ・・・ここからが本当の始まりだよ・・・」
そう言うとプラスチック容器に入った粉と水を混ぜ始める。
「ねるねる○るねは、ヘっへっへ。ねればねるほど、色が変わって・・・。」
「ウィッチ村上選手、いつものセリフを言いながら練っていきます!まるでこの姿は大鍋をかき混ぜる魔女のようだ!!」
あー、どこかで聞いたことあるよその台詞。
大丈夫なのかなー?
そんな心配をよそに料理?は順調に進んでいく。
ウィッチ村上は二つ目の袋に入った粉をプラスチックの容器に入れ、再び混ぜ始める。
「練る速度、2番目の粉を入れるタイミング、水の量・・・全てが完璧だ・・・こんなに美しいねるねる○るねを見たのは初めてだ・・・」
山原さんはまるで芸術品を見るように料理工程を眺めている。
どこにそんなに惹かれる要素があるのだろうか。
・・・もしかしたらあのねるねる○るねはものすごく美味しいんじゃないだろうか。
よく考えてみると俺はねるねる○るね自体10年以上食べていない。
もちろんプロの作ったねるねる○るねを食べたことなどない。
俺は固定概念で味を決め付けているのではないだろうか。
うん・・・そうだ、きっとそうに違いない。
このねるねる○るねは今までに食べてことのないようなすばらしい食べ物なんだ。
そう考えると食べるのが楽しみになってきた。
期待に胸を膨らませる中、ついに料理は最終工程へと差し掛かる。
「これが究極のねるねる○るねだよ!」
そう言うとウィッチ村上はプラスチック容器の空いた方に三番目の粉を入れる。
「つ、ついに完成しました!これが究極にして至高のねるねる○るねです!」
そのねるねる○るねは、そこらへんの小学生が作ったものとは違う、気品のような者があふれていた。
遠目から見て分かる存在感。
これはただのお菓子ではない、まさしく食べれる芸術品だ、思わずそう思ってしまった。
「それでは早速審査に入りたいと思います!」
四海さんがそう言うと、スタッフの人たちが審査員三人のテーブルにそれぞれねるねる○るねを配膳した。
近づいて始めて分かるその高貴な香り。
口の中が唾液でいっぱいだ。
「まず最初に山原先生!お願いします!」
「うむ」
山原さんは静かに、そして優雅にねるねる○るねを口に運ぶ。
口に入れた瞬間、
「\ うまいっ! /」
テーレッテレー!
そんな音が聞こえてきた。
「さわやかな酸味に、口の中を拭きぬけるフルーティーな香り、そしてしつこくない粘り気・・・これが究極と言わずに何を究極と言うか!!」
「山原さんも絶賛の味!これは優勝が決まってしまったかー!」
まさかねるねる○るねで料理評論家の山原さんの舌をうならせるなんて想像できなかった。
いや、何より想像できなかったのは
「山原さん・・・なんで服全部はじけ飛んでいるんですか?」
ねるねる○るねを食べた瞬間、山原さんの服がはじけ飛んでいたことだ。
山原さんは少しも動揺することなく、胸を張っている。
「美味い料理を食べたら服が破ける、当たり前のことだろう」
「いや、どこの世界の常識ですかそれ」
たぶん料理マンガの世界ではそうなのだろう、食戟の○ーマとか焼きたて!! ○ャぱんとか。
だが料理評論家がここまでのリアクションをとるのだ、期待せずにはいられない。
「それでは私とモブオさんもいただいてみましょうか!」
四海さんの声に合わせ、ねるねるね○ねを口へと運ぶ。
そして、味わう。
「・・・あー・・・うん・・・」
「うーん・・・なるほど・・・そういう感じですか・・・」
たぶん俺と四海さんが抱いた感情は同じだろう。
「ヒッヒッヒ・・・どうだい?究極のねるねるね○ねの味は?」
申し訳ないがここは正直に言おう。
「えっと・・・
あんまり美味しくないですね・・・」
俺は食べた感想を正直に述べた。
「!?」
「そんなバカな!?」
ウィッチ村上さんと山原さんが同時に驚く。
「わ、私のねるねるね○ねは完璧だったはず!一体何故!?」
「いや・・・そもそも
ねるねるね○ね自体が美味しくないんですよ・・・」
「!?」
「そんなバカな!?」
同じリアクションをするな。
「ねるねるね○ねが・・・美味しくない・・・?」
ウィッチ村上さんは信じられないものを見るような目でこちらを見てくる。
だが四海さんがさらに追い討ちをかける。
「私も同意見ですね・・・普通のねるねるね○ねとの違いが分からないというか・・・そもそもねるねるね○ねが不味いというか・・・冷静に考えたらねるねるね○ねって料理じゃないし・・・水入れるのがすごいとか練るのが上手いとか意味わからないですし、そもそもその程度のことで大して味はかわらないですよね?町内会の料理大会だからってこんなもの出されても・・・」
とてもさっきまでノリノリで司会をしていた人とは思えない冷たさだ。
こんな言葉の暴力を受けた二人は
「ヒ・・・ヒ・・・」
「・・・・」
KO寸前だった。
もう止めてあげて・・・
ウィッチ村上さんは顔が真っ青で顔が引きつっている。
山原さんに関しては今ボッコボコにされた料理をべた褒めしていたからか顔が真っ赤になっている。
まぁ正論だから何も言い返せないのだろうが。
「ま・・・まだじゃ・・・・」
「ん?」
ウィッチ村上さんが何か小さい声で言っているようだ。
「私の料理はまだ終わっておらん!!」
そう言うとウィッチ村上はローブのポケットから何かを取り出した。
それは真っ白い粉のようなものだった。
「おーっと!ウィッチ村上選手の料理はまだ終わっていないようです!!一体あの粉は何なのでしょうか!!」
四海さんが一気にテンションを取り戻す。
そしてウィッチ村上さんは粉を高々と上げ宣言する。
「この粉は・・・
舐めるだけ超ハッピーな気分になれるステキなお薬じゃああああ!この粉をつけて食べればみんなハッピ」
その言葉を言い終える前に1人の男性がステージに上がってポンとウィッチ村上さんの肩を叩く。
「警察だけど、ちょっとお話聞かせてもらえる?」
10分後
「ウィッチ村上選手は先ほど違法薬物所持の疑いで逮捕されたので失格です!!」
「どんなオチ!?」
ちなみにあの粉は合法だったらしい。
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