第18話 料理マンガの主人公になったからってオッパイが見れるわけではない4

「さて!大会が始まって10分で逮捕者が出てしまいましたが、気持ちを切り替えて次いってみましょう!!」

普通そんな簡単に切り替えられるものではないと思う。

始まる前から何か不安だったが、やはりこの大会は何かおかしい。

だが、審査員になってしまったからには逃げることはできない。

最後までモブとして参加しきろう。


「それでは選手番号2番の方!キッチンへどうぞ!」

「・・・やれやれ・・・アタシの出番かねぇ・・・」

そう言われて出てきたのは、いかにも「ヒッヒッヒ」という笑い方をしそうな真っ黒なローブを着た老婆だった。

キッチンまでの歩みもどこかおぼつかないようだが大丈夫なのだろうか。

司会の四海さんが意気揚々と進行する。

「それではお名前をどうぞ!」

マイクを向けられた老婆はどことなく邪悪な笑みを浮かべている。

「あたしゃ村上房子、そうさね・・・ウィッチ村上と言えば分かりやすいかね・・・ヒッヒッヒ・・・」

あ、やっぱり笑い方はそれなんだ。

というかウィッチ村上って気に入って使ってるのか、どんなセンスしてんだ。

まぁこんな老婆でも優勝候補の1人らしいからな・・・

一体どんな料理を作るのだろうか。


「ウィッチ村上選手、作る料理は一体なんでしょうか?」

「ヒッヒッヒ・・・それはね・・・こいつさ!!」

そう言ってローブのポケットから何かをキッチンに出した。

「こっ・・・これは・・・!?」

それは・・・


ねるねる○るねだった。


「ウィッチ村上選手の料理は、ねるねる○るねだああああああああ!」

「いやおかしいだろおおおおおおおおおおお!!」

料理大会とはなんだったのか、これは突っ込むしかない。

というか許せない。

「おや?どうかしましたか?審査員のえーと・・・うすい顔の人」

「茂部雄です!いやそうじゃなくて・・・料理大会で出す品目がねるねる○るねってどういうこと!?お菓子じゃん!」

「あーえーうーん・・・面倒くさいんでOKです!」

「ルールガバガバすぎない!?」

この司会者に頼ってはダメだ、もっと厳格な人に・・・そうだ!

「山原さんも何か言ってくださいよ!ねるねる○るねなんて料理じゃないですよね!」

日本料理会・常任理事長の山原さんならこの暴挙を許せるはずがない!

山原さんはカッと目を開き、

「ねるねる○るね・・・その歴史は古く、中国で2200年前に生まれたと聞く・・・」

「山原さん?」

「中国の始皇帝もその美味さに驚き、晩年は水銀といっしょにねるねるしていたという・・・」

「いや絶対嘘ですよね!どこで聞いたんですかそんな情報!」

「民明書房の本で読んだ」

「100%ガセじゃねぇか!!」

まさかこんなに簡単に情報操作されてしまっているとは。

というかちょろ過ぎるだろ・・・

「つまり・・・ねるねる○るねは立派な料理と言うわけだ!」

「欠片も納得できないんですが・・・」

だが日本料理会の重鎮が言うのなら仕方ない。

こんなただの高校生の意見が通るわけもないか。

おとなしく自分の席に座っていよう。

そう思って渋々席に座ろうとしたとき、ウィッチ村上が不敵な笑みを浮かべてこちらを見てきた。

「ヒッヒッヒ・・・坊やはどうやら本物のねるねる○るねを食べたことがないようだね・・・」

「は?本物の・・・ねるねる○るね?

「ヒッヒッヒ・・・いいよいいよ、これからあたしが味あわせてあげるからね・・・」

その不気味さに思わず身震いをしてしまった。

ねるねる○るねで一体何をしようというのか・・・


「それでは参りましょう!料理開始!!」

四海さんの掛け声が響き、ウィッチ村上が調理を開始する。

「ウィッチ村上、まずはねるねる○るねの袋を開けます!」

ウィッチ村上はゆっくりとした動作でビニールの袋を空け、中にあるプラスチック容器と三つの袋、スプーンを取り出した。

そしてすぐさま袋の一つを容器開け、その中身を容器へと入れる。

本来の工程であればこの後、プラスチック容器についている三角のトレイをはずしそこに水を入れるのだが・・・

「ああーっと!これはどうしたことでしょう!ウィッチ村上選手!三角トレイをはずさずにそのままキッチンの蛇口へと向かいます!」

こんなにどうでもいい料理実況は初めてだ・・・

だがこんなときでもモブとしての仕事を果たさなければ。

俺は大きく息を吸い大声で叫んだ。

「い、一体何を始めるんだー!」

これがモブの仕事の一つ、料理中の行動に対するオーバーリアクション。

これをすることによって調理者のすごさが際立つのだ。

そんでもってモブがこれを言うと次は・・・

「あっ!あれは!!」

「ご存知なんですか!?山原先生!」

解説役がわかりやすく解説してくれる。

これがこの世界のお約束の一つなのだ。

「あれは・・・アメリカで考案され、その危険さ故に世界で禁止されている伝説の調理法・・・『水道水直入れ』だ!!」

『な、なんだってー!』

これもお決まりだ。

「普通ならば三角トレイいっぱいに水を入れ、それを粉と混ぜることによってバランスのいいねるねる○るねが作り出される・・・だが!あの技は三角トレイに縛られることなく自分好みのねるねる○るねを作り出すことができるのだ!!」

今すぐにでも帰りたい、このしょうもない空間から早く脱出したい。

「そ、そんなすごい技がなぜ禁止に?」

四海さんも頬に汗をたらしながら真剣に聞いている。

山原さんは神妙な顔で続ける。

「あの技を使った者の多くは、水を入れすぎてばしゃばしゃのクソまずい液体を飲むはめになってしまうのだ・・・」

「それただ単にめんどくさがりな子供がよくする失敗例じゃないんですかね・・・」

もう突っ込むのも疲れてきた。

「そもそもあの技ははるか昔、三角トレイが発明される前、偉人たちがねるねる○るねを作るために編み出したわざだと言われている・・・中国の始皇帝も部下にねるねる○るねをあの技で作らせていたらしいが、もし水の分量を間違えると即死刑だったらしい・・・」

「中国の始皇帝器ちっちゃいな!あとこの技発明されたのアメリカなんだよな!時代考察ガバガバじゃねぇか!!」

「まさか現代にこの技を使いこなす者がいようとは・・・」

「え?おれの突っ込み無視ですか?」

無駄だとわかっていても突っ込んでしまう、悲しい性だ。

そうこうしている間にウィッチ村上が蛇口に手をかける。


それは・・・一瞬だった。

ヒュン

そんな風を切る音が聞こえた。

そして次の瞬間


粉の入った容器に、適量の水が入っていた。



うおおおおおおおおおおおおお!

会場の観客が一気に沸き立つ。

「な・・・なんという神業でしょうか!!私たちは今、歴史に残る偉業を見ているのかもしれません!」

四海さんもとてつもないテンションで実況する。

「私は・・・この瞬間のために生きていたのかもしれんな・・・」

山原さんにいたっては涙をながしている。


・・・ついていけない。

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