第17話 料理マンガの主人公になったからってオッパイが見れるわけではない3

「さぁ!いよいよ始まります!この町一番の料理人を決める戦い!その名も・・・『物語町お料理コンテスト」!!」


「そのまんまじゃないか・・・」

思わず自分の口からボソッと出てきてしまった。

ネーミングセンスはさておき、ようやく大会が始まったようだ。

会場のど真ん中にあるキッチンの右手に、三つのゴテゴテとした装飾がされた椅子とテーブルが置かれている。

そこには高校生くらいのショートカットで元気のありそうな女の子と、白髪の混じった60歳ほどの顔の険しい男が座っている。

先ほどの大会開始の宣言をしたのは女の子の方だ。

男の方は佇まいから只者ではない雰囲気を出している。


「司会進行は物語高校放送部の四海 真子が努めさせていただきます!!」

こういう司会進行は、なぜか司会するのが大好きな放送部員と相場が決まっている。

なぜプロの人を呼ばないのか疑問ではあるが・・・


「そして!審査員兼解説役はこの人!日本料理会の常任理事長!山原 雄海さんです!」

「山原 雄海だ・・・よろしく頼む・・・」


なんで審査員は無駄にすごい人を呼ぶんだ・・・

金の掛けかたおかしいだろ・・・

「いやー山原さん、今日はどんな料理が出てくるか楽しみですね!」

四海さんがオープニングトークとして簡単な話題振りをした・・・のだが、

「ふん・・・こんな片田舎の料理大会で私の舌を満足させられるような料理が出てくるとは思えんがな・・・」

「え・・・あ・・・ははは・・・」

海原さんは腕を組んだまま仏頂面で言い放った。


どう考えてもキャスティングミスだ・・・

雄海って人こんなしょぼい料理大会に何を期待しているのだろうか。

司会の人メッチャ困ってるよ、苦笑いしてるよ。

でもまぁこんな有名な人が審査してくれるんなら、こんな町内の料理大会でも出る価値はあるか。

もしかしたらあの人に認められて超有名料理学校とかに入学できるかもしれないし。

まぁ問題は憧がそんなすごい料理を作れるかどうかってことだが・・・


そんな心配をしている間も大会の進行は進んでいく。

「今回のお料理大会の審査員は私、海原さん、そしてもう1人の審査員によって得点がつけられます!」

なるほど、三人で審査するわけか。

これならば、1人の好き嫌いで判別されるわけではないということか。

だがあとの1人は一体誰なのだろうか。

「みなさんも残りの1人、気になりますよね!では発表します!審査員最後の1人は・・・なんと会場に来ているお客さんです!!」

おーー!

会場から軽い歓声が沸き起こる。

四海さんはその歓声に対しうれしそうにうんうんと頷きながら進行を続ける。

「これから私が無作為に1人のお客さんを指名し、その人に料理の審査をしてもらうって感じです!もちろん選ばれた方は自分の味覚に従って審査をしてください!」

まるでバラエティ番組のようだが、面白い試みだ。

選ばれた一人はとんでもないプレッシャーを感じるだろうが。

まぁモブを極めた俺が選ばれることはないだろう。

自慢ではないが、俺はある程度の人ごみの中ならば自分の存在を完全に背景と同化させることができる。

それほどまでに、特徴の無い普通の顔、普通の背丈、普通の服なのだ。

このままモブの観客として料理対決を楽しませてもらおう。


「それじゃあ早速その1人を選ばせてもらいますね!えーっと・・・」

手を額に当て、会場を見渡すようなジェスチャーをとる。

「うーんと・・・じゃあそこのいかにも普通っぽい薄い顔のあなた!!」

四海さんはそう言って会場の1人を指差す。

おいおい・・・審査員に指定された上にこんな扱いを受けるなんてかわいそうな人だな。

そんな顔のかわいそうなヤツを見つけようと周りを見渡すが・・・

おかしい

周りの観客全員が俺を見ている。


そう、四海さんの指の先にいたのは・・・


「えっ」

俺だった。



「それでは最後の審査員も決まりましたし、選手番号1番の方、キッチンへどう」

「いやいや!待ってください!!」

俺は思わず叫んでしまった。

審査員として指名され、あっけに取られている間に審査員席に座ってしまったが・・・

「な、なんで俺が審査員なんですか・・・?」

俺のモブっぷりは完璧だったはず、本来ならばこんな目立つことはないのだ。

四海さんはきょとんとした顔をしたあと、ありったけの笑顔で

「ああ!実は審査員として普通の人の意見も取り入れたいなーって思ってて、できるだけ普通の何の特徴も無い、没個性で、背景と同化しているくらいモブ顔の人を探していたんですよ!いやーまさにぴったりな人が見つかってよかった!」

「・・・そうですか・・・」

褒めているのかけなしているのか分からないコメントを言われた。

まぁ選ばれてしまったのなら仕方が無い。

なるべく無難なコメントでこの場をやりすごそう。



「では改めまして・・・早速選手番号1番、カレーの達人でおなじみ!ジャスティスイエローさんです!キッチンへどうぞ!」



シーン



選手控え室である仮設テントからは出てこない。

「おおっと!どうしたことでしょう!ジャスティスイエロー選手がいません!」

「えっ?」

思わず声に出してしまった。

さっき会場内を歩いているところを見たはずだが・・・

会場がざわつく中、大会の運営委員と思われるスタッフが審査員席へと走り、四海さんへと耳打ちをした。

「ふんふん・・・えっ?本当?・・・・わかりました・・・」

スタッフからの報告を聞いた彼女の顔は呆然としている。

あの短い時間で何があったのだろうか。

マイクを握りなおした四海さんは、落ち着いた声色で言う。

「えー、選手番号1のジャスティスイエロー選手ですが、



先ほど会場女子トイレに進入し、臭いを嗅いでいるところを通報され、逮捕されたので失格です!」


「どんな理由だあああああああ!!!」


突っ込まずにはいられない。

仮にも正義の味方がなぜそんな犯罪行為に手をそめているのか。

「どうやらジャスティスイエロー選手は以前にも同じ犯罪を36回繰り返し、巷では『トイレの神様』と呼ばれているようです!」

「心からどうでもいい情報!!」

この世界には正義なんてものは無いのかもしれない、そうやって世界の非常さを噛み締めていると四海さんが山原さんにマイクを向た。

「山原さん、この件についてどう思われますか?」

「私も居酒屋とかにある、男女共用トイレから美人が出た後すぐ入るのが趣味だから共感できるな」

「いや共感しちゃダメだろ!!」

料理研究科のコメントとは思えない。

というかこんなしょうもない事件にコメントを求めるんじゃない。


初っ端から逮捕者が出た料理大会。

だがこれはまだ始まりにすぎなかった。

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