第16話料理マンガの主人公になったからってオッパイが見れるわけではない2
料理大会当日、俺は駅前へと向かっていた。
ギリギリまで行くかどうか悩んだが、まぁモブキャラとしてやらなければいけない仕事もあるので渋々足を運んだ。
駅の近くまで行くといつも以上に人通りが多いことに気づく。
町内会の小さな料理大会といえど、それなりに人は来ているようだ。
駅前には特別に設置されたのキッチンがある。
一通り料理に必要な器具や食材がテーブル上に並べられ、大体の料理は作ることができそうだ。
そろそろ開始時間だが・・・憧はどこにいるのだろう。
周りを見渡していると・・・
「おーい!モブー!」
後ろから聞きなじみのある声がした。
振り返るとそこには、エプロンを着た憧がそこにいた。
「俺の料理を見にちゃんと来たみたいだな!」
「あれだけ言われれば流石にな・・・それにしても結構人が集まっているんだな」
「ああ、今回の大会はこの町内でも指折りのやつらが出るって話だからな」
町内にいる料理自慢の人を見るためにこんなにも多くの人が集まっているのか・・・よっぽど暇なんだな。
そんなことを考えていると憧が目を鋭くし指をさした。
「ほら・・・あそこにいる真っ黒いローブを着ている婆さん、あれが今回の優勝候補の一角『公園前の魔女 ウィッチ村上』だ・・・」
指がさされた方向を見るとそこには、まさしく魔女みたいな格好をした老婆がいた。
いかにも「ヒッヒッヒ」という笑い方をしていそうな怪しい雰囲気をかもし出している。
・・・気のせいかどこかで見たような気がする・・・・お菓子のTVCMで何かを練っていたような・・・気のせいか。
何か引っかかるが話を続けることにした。
「あれが優勝候補なのか?ただのコスプレ好きのおばあちゃんじゃなくて?」
「ああ・・・表の顔は公園前の駄菓子屋のばあちゃん、だが料理になるとあらゆる駄菓子を絶品料理に変えちまう凄腕の魔女になるんだ・・・」
「不審者にしか見えない・・・」
変わった人がいるもんだと思いさらに周りを見渡すと・・・
見たことのある黄色い戦隊スーツを着た男を見つけた。
「ん?」
見間違えではないかと何度も目をこらして見るがやはりあれは・・・
「なぁ憧、あれって・・・」
「ん?あっ!あれは優勝候補の1人『カレーなるヒーロー ジャスティスイエロー』じゃないか!」
世界を救わないでなにやってるんだあいつ・・・
「彼の『カレーはやっぱりバー○ンド』という名言は今でも町内会の料理人の心に響いているという・・・」
「この町の料理人底が浅いな・・・」
規模の割には想像以上にレベルが低いのかもしれない。
そんなことを考えていると、
『ねぇ兄さん、僕たち本当に優勝できるのかな?』
「大丈夫だ、心配すんな!」
そんな兄弟同士の会話らしき声が後ろから聞こえた。
「・・・ん?」
1人の声は少年っぽく聞こえた。
どうやら兄弟でこの大会に参加するようだ。
そうそう、町内の料理大会とはこうあるべきだ。
家族や友人、近所の人たちと楽しく料理をする、そういうイベントであるべきなのだ。
そう思ったのだが・・・一つ気になることがある。
もう1人の声がおかしい。
まるで鎧の中からしゃべっているように声がくぐもって聞こえるのだ。
声の主が気になり振り返るとそこには、
「・・・っ!」
明らかに他の出場者とは異質な雰囲気の二人の参加者を見つけた。
一目見ただけで分かる、明らかに只者ではない。
なぜなら1人は金髪で右腕・左足が機械鎧(オートメイル)の背の小さい少年、もう1人は全身に大型の鎧を着込んでいる。
とてもこれから料理をする人間には見えない。
・・・というか、この世界に存在すべき人間には見えない。
もっとこう・・・ダークファンタジー的な世界にいるべき人たちな気がする。
そう・・・2回アニメ化されて実写映画化されそうな二人組みだ。
俺が驚きを隠せない表情をしていると、憧が話しかけてきた。
「どうした?そんな驚いた顔して」
「いや・・・あれ・・・」
先ほどの二人を指差すと、憧はさも当然のような顔をして言った。
「ああ、やっぱりあの二人も今回の大会に参加してきたか・・・」
「え?あれ大会参加者なのか!?」
「そう・・・あの二人は優勝候補の一角、『味の錬金術師 アフラック兄弟』だ!」
「いやどう見ても『鋼の○金術師』じゃねぇか!」
何をどう見たらあの二人組が料理人に見えるのだろう。
どう見てもホムンクルスと戦っていそうな見た目をしているじゃないか。
「いやー何言ってんだ?あの二人は町内で有名なお料理兄弟じゃないか」
「何言ってんだはこっちの台詞だ!!あんなダークファンタジーな見た目のご近所さん、今まで見たことねぇよ!!というかなんで町内のほんわかしたお料理兄弟がの体があんなことになっているんだよ!」
兄のほうは言わずもがな、弟のほうもたぶん鎧の中が空っぽだろう。
そんな気がする。
「あー、確か晩飯のカレーを作ろうとしたら、材料間違えて人体練成して真理の扉を開けてしまったらしい」
「どんな間違え方したら真理の扉開くんだよ!!」
「それ以来あの二人は料理を作るたびに間違って金とか、石像とか、石でできたトゲとかを間違って作ってしまうみたいだ」
「もう料理人やめたらいいじゃない!?」
それにしても濃いキャラクターばかりだ。
「自分の住んでいる町にこんなに濃い料理人がいたとは・・・」
「いや・・・これはまだ氷山の一角だ・・・あっちを見てみろ、あれは優勝候補の一角『オリーブオイルのもこみっち』、あっちにいるのは優勝候補の一角『グッチたれぞう』、向こうにいるのは優勝候補の一角『天才シェフ川越達美』だ・・・」
「優勝候補多すぎない?」
どうやらこの大会の参加者は一筋縄ではいかない連中らしい。
そんな中で料理初心者のこいつは勝ちあがらなければいけないのか・・・
さぞ緊張しているだろうと隣にいる憧をチラッと見ると、
「くぅぅぅ!今回の大会は強敵ばっかりだ!腕が鳴るぜ!」
どうやらわくわくが勝って緊張どころではないらしい。
この根拠のない自信はどこから来るのだろうか。
・・・いや、この根拠のない自信を持てるやつが主人公になれるのかもしれない。
そんなこと考えていると、会場のアナウンスが鳴り響いた。
『これから第12回物語町料理大会を開始します。参加する方は中央特設ステージへ集まってください』
「おっ、出番みたいだな。じゃあさくっと優勝してくるぜ」
「おう、せいぜいがんばれよ」
そんな軽口をたたきつつ、憧は料理場へと向かっていく。
味の頂へと向かうその一歩を踏み出していくのであった。
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