第15話料理マンガの主人公になったからってオッパイが見れるわけではない1

「俺、料理人になるわ!」


「・・・は?」


突然そんなことを俺、園田茂部雄に突然言ったこの男、名前は夢見憧(ゆめみ しょう)という。

背は170センチほどで、髪は金に染めている。

髪の色意外は特に特徴が無い、まさにチャラいモブ男だ。

小学校からの付き合いで、昔からいろんなことに挑戦してはすぐ飽きる、そんな落ち着きのない男である。

最近もバンドマンになると言って、兄のギターを借りて練習していたはずだがそれも飽きてしまったのだろう。

だが・・・


「なんでまた急に・・・」

頭に思い浮かんだのはこの一言であった。

今日の放課後、突然相談したいことがあると言われ二人きりになるまで教室に残り、いざ話を聞いてみるとこれだ。

まぁどうせしょうもない理由だろうが・・・。

「聞いて驚くなよ・・・」

憧が聞いて驚いてくれという顔をしながら語り始めた。

「実は最近『食○のソーマ』ってマンガを読んでな、」

「あ、もういいわ。わかったわかった。」

「えっ!?」

想像していた通りだ、しょうもない。

最近流行のマンガに影響されて突発的に言い出しただけだ。

どうせ1週間も経てば飽きて別の趣味を見つけているだろう。

そう思っていたのだが、


「違えよ!俺はお前が思っているみたいな簡単な理由で料理人を目指しているわけじゃないんだ!」

そう言い放つ憧の顔は今までみたいことの無いほど真剣だった。

「・・・マンガに影響されただけじゃないのか?」

俺も多少真剣になり聞いてみる。

そうだ、よくよく考えれば何かを本気でやるきっかけなんて些細なものだ。

重要なのはコイツがこれからどれだけ本気で取り組めるかである。

きっかけを聞いただけでバカにするのは愚か者がすることだ。

憧も真剣な表情のまま話を続ける。

「・・・最初は確かに料理をこなす主人公の姿に憧れた・・・でも読み進めていくうちに俺の中に新しい夢が生まれてきたんだ」

俺はその真剣さに当てられて、思わずゴクリと喉を鳴らした。

「その夢って・・・」


「ああ・・・こんな俺でも頑張っておいしい料理を作って食べてもらえば・・・



かわいい女の子の裸・・・いや、おっぱい見れるんじゃないかってな・・・」


「そうか、頑張れ、俺は帰る」

「待て待て待て!ほら、料理マンガとかでおいしい料理食べたキャラがリアクションとして裸になるとかあるじゃん!あれでなら女の子のオッパイ見放題じゃん!」

想像していた以上にしょうもない夢だった。

一瞬でも応援してやろうと思った1分前の俺を殴ってやりたい。

帰ろうとする俺を必死に引きとめる。

「もう少し俺の夢について何か言うことは無いのか!?」

「無い。お前のしょうもない夢の話を聞き続けるくらいなら、家に帰って『け○のフレンズ』の一話見返した方が100倍マシだ」

「お願い!もう少し待って!ね!?」

ここまで必死に食い下がられるとこちらも困ってしまう。

「はぁ・・・仕方ない・・・少しだけだぞ」

しょうがないからもう少し聞いてやろう。



「俺はな、別に料理に興味があるわけじゃない。おっぱいが見たいだけなんだ」

「ますますしょうもないなお前」

嘘でも少しは料理に興味を持って欲しいとこだ。

「お前・・・しょうもないって・・・お前!!おっぱいだぞ!!『オッパイが見れる!』男にこれ以上重要なことあるか!?料理なんてそのための手段でしかないんだよ!!」

「全世界の料理人から怒られて欲しい」

こんなにもゲスな理由で料理人を目指す人間がこれまでいただろうか。

「そもそもマンガとかで料理食った人が裸に見えるのはあくまでイメージだぞ!?現実でそんなこと起こるわけないだろ!」

「やる前から諦めんなよ!!夢ってのはな諦めなければいつか叶うんだよ!!」

「世界で一番お前に言って欲しくなかった・・・」

必死。

彼の様子はこの一言で言い表せる。

目は血走り明らかに正気ではない。

これがオッパイにとりつかれた男の末路だ。

「じゃあてめぇはオッパイ見たくないのかよ!!」

憧が叫ぶ。

「見たいに決まってんだろ!ブチ殺すぞ!」

俺も即座に叫び返す。

この世におっぱいを見たくない男なんていない。

だが、

「料理で人間を裸にできるわけねぇだろ!たとえできたとしてもつい最近料理を始めたお前程度の腕じゃ無理だ!いい加減目を覚ませ!!」

思いっきり正論をぶつけてやった。

いい加減に叶わぬ幻想から目を覚まして欲しい。

そう願って言った言葉だったが、

「じゃあいいよ!そこまで言うなら俺の料理の腕前見せてやろうじゃねぇか!」

憧に火をつけてしまったらしい。

「来週の日曜!駅前で料理大会が開かれる!そこで俺が優勝してやるよ!楽しみにしとけ!」

そう言い放つと憧は教室から走って出て行った。

「はぁ・・・」

俺は誰もいない教室でため息をついた。


面倒なことになった。

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