第14話ラノベヒロインたちの決して負けられない戦い4
一言で会議室がシンと静まり返る。
「こんなハイスペックな娘が来たんじゃ・・・キャラ被りしてる私たちじゃどうしようもないじゃない!!」
なじみさんの悲痛な叫びがこだまする。
「そう・・・ですね・・・私たちじゃ・・・いいとこ下位互換・・・」
「そんなアタイたちじゃ勝てるわけがないしなー」
「悔しいですが・・・お兄ちゃんだって私なんかより新しい義理の妹がいいに決まってます・・・」
「新しい娘に伊織がピー(自主規制)して・・・その間に僕が伊織にピー(自主規制)すれば・・・ああっダメっ!これじゃあ僕が主導権を握れない・・・やっぱり僕じゃ・・・」
ヒロインたちが暗い表情でポツリと言う。1人は何か違うことを考えているようだが。
そんな暗い雰囲気の中、なじみさんが悔しさに顔を歪めながら言った。
「私たちはせいぜい伊織の友人ポジションのやつらとくっつくのがお似合いなんだよ・・・」
そんな敗北宣言を、何よりも言いたくなかったその言葉を、認めたくない事実を。
ヒロイン全員がその言葉を認めようとした瞬間、
俺は
「そんなことありません!!!」
思わず叫んだ。
だってそうだろう?
これまでどんなことがあっても恋することを忘れなかった彼女たちが、
俺たちモブが憧れてきた高嶺の花の彼女たちが、
どんなに手を伸ばしても届かない彼女たちが、
自ら諦める姿なんて見たくないから。
「これまで以上にステキなヒロインが出てきたからなんです!これまで以上に皆さんがステキになればいいだけです!」
俺は考えたことをそのまま発した、包み隠さず、そのまま。
「でも・・・私たちみたいに・・・魅力の無いヒロインじゃ・・・」
そんな俺の言葉に夢子さんが反論する。
でも、
「そんなことありません!!皆さん全員最っ高にかわいいです!」
俺も即座に反論し返す。
「そんな慰めいらねぇよ!アタイたちだって役不足だってわかってるんだ・・・」
海澄さんがらしくもなくしおらしいことを言う。
「慰めなんかじゃありません!なじみさんは乱暴な口調だけど誰よりも伊織のことを心配しているとこが素敵ですし、夢子さんは口数は少ないけど伊織の話題になるとおしゃべりになるとこがかわいいです!海澄さんは姉御肌だけど打たれ弱い一面がかわいらしい、妹子ちゃんは伊織に対して周りの目を気にせず思いっきり甘えてるとこが自分の芯を持っていてかっこいいです!野虎君は時々小悪魔っぽいとこがあるけど心の底は誰よりも優しい!全部皆さんしか持っていないステキなチャームポイントです!表面上の個性なんて関係ない!こんなにステキな皆さんが魅力的じゃないわけないです!皆さんには皆さんにしかできないヒロインらしさがあります!」
言い切った。
ところどころこっぱずかしいが、これが俺の言いたいことだ。
だが長々と話しすぎた、みんなあっけにとられてポカンとしている。
まぁ普段台詞が少ないモブ野郎が突然こんなにしゃべればそりゃあびっくりするだろう。
教室に再び静寂が訪れる。
だが
「フフフッ・・・アハハハハ!」
妹子ちゃんがこらえられなくなったように笑い出した。
それにつられてほかのヒロインたちも
「ククッ・・・」
「ふふふ・・・ふふふ・・・」
「アッハッハッハ!!」
「うふふっ・・・モブさん僕たちに対してそんなこと考えてたんですね?」
野虎君が小悪魔っぽい笑い顔でそういった。
男のはずなのにその顔にはとても妖艶に見え、少し慌ててしまった。
「そ、そうですよ!悪いですか!」
もう既にごまかすことは無理だと悟ったので、全力で開き直ることにした。
そう、俺は何も悪いことは言っていなのだ。
なじみさんが口を開く。
「クククッ・・・まさかモブごときに慰められるとはな・・・」
「ふふふ・・・慰めというには・・・いささか雑すぎましたけどね・・・・」
「うぐっ」
ごもっともな意見に何も言い返せなかった。
「ガハハ!!でも元気は出たぞ!!」
まぁ・・・みんな元気が出たようでよかった。
「私たちにしかできないこと、か・・・」
妹子ちゃんが独り言のようにポツリと言った。
「みなさん・・・たぶんですけど考えていることは一緒ですよね?」
それに答えるかのように野虎君がみんなを見回してこう言った。
そして全員がそれに答える。
「あいよ!」
「もちろん・・・」
「当ったり前だ!!ガハハ!」
「お兄ちゃんのためですもん!」
全員先ほどとはうって変わって顔に希望が満ちている。
これ以上俺にできることは何も無い。
彼女たちは自分の足で自らの道を進むだろう。
ヒロイン道という長く険しい道を。
「じゃあみんな!行くぞ!」
「「「「オーー!!」」」」
数日後
「次のニュースです。今朝8時ごろ1人の女子高生に対し、複数の女子高生がバットで襲い掛かるという事件が発生しました。警察によりますと犯人の女子高生たちは『ヒロインの座を奪われる前にボコボコにしてやろうと思った。』などと意味不明な証言をしており、」
ブツンッ
俺は無言でテレビの電源を消した。
ヒロインって・・・なんだろう・・・
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