第13話 ラノベヒロインたちの決して負けられない戦い3

「あああ・・・あわわわわわ・・・」

なじみさんが涙目で呟いた。

自分だけが持っていると思っていた幼馴染設定を持つ新しいヒロインが増えてしまったのだから仕方が無い。

ヒロインも数が多くなると設定の一つや二つかぶるのも珍しくは無い。

だがそれは人気の食い合いに繋がってしまうのだ。

この世界で個性というのはオンリーワンであって初めて輝くのだ。

オンリーワンを失ったヒロインは徐々に主人公との絡みも少なくなっていく。

それはヒロインにとっての死に等しい。


「ふふふ・・・ざまぁないですね・・・」

本野さんがうれしそうに笑いながら言う。

「愛に年月は関係ないんですよ・・・幼馴染という一点に頼りきったのがあなたの敗因です・・・」

「くっ・・・」

なじみさんは何も言い返すことができない。

なぜならこれは事実だからだ。

「ふふふ・・・私と伊織君が図書室で読書デートする様をよくその目に焼き付けておくといいですよ・・・ふふふ・・・」

だが俺は更なる事実を夢子さんに告げなければいけない。


「夢子さん。」

「ん?何かしらモブ君?」

「新ヒロイン候補の方なんですが



どうやら高校生天才小説家という肩書きを持ち、物静かでメガネをかけているらしいです。」



「ヒエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

夢子さんが奇声を発して倒れた。


どうやら再び設定が被ってしまったようだ。

「そ・・・そんな・・・私なんてコミケで伊織君と親友の桐原君のBL同人しか書いたことないのに・・・完全に私の上位互換じゃない・・・・」

「っていうかそんな本出してたんですね・・・」

この人はクラスメイトのBL本を出すなんて危険なことをしていたのか、ほどほど呆れる。


「ガッハッハ!やっぱ根暗女はダメだな!!」

海澄さんが腕を組み大声で笑いながら豪快に言う。

「所詮設定に頼りきっているようじゃあヒロインとして3流なんだよ!!結局最後に信じられるのは自分のか・ら・だ!つまり・・・ボインだ!」

腰に手を当て、胸を張って言うその姿はとても凛々しいものだった。あと、揺れていた。

「「くっ・・・」」

なじみさんと夢子さんは二人して自分の胸に手を当てていた。

二人とも胸が無いわけではないのだが、やはり海澄さんには敵わない。

「まぁお前らのその貧弱な胸じゃあアタイのGカップには敵わないだろうがな!!ガッハッハ!!」

海澄さんの高笑いが教室に響く。

完全に勝ち誇っているが、ここで俺は一つの真実を告げなければいけない。


「海澄さん。」

「オッパイこそが女の価値なのだ!ガッハッハ!!」

「新ヒロイン候補の方なんですが



どうやら胸はIカップあるみたいです。」



「ブエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

海澄さんが奇声を発して倒れた。

どうやら三度設定が被ってしまったようだ。

「そんなバカな!!どんなオッパイおばけだ!!Iカップなんてあっても大きすぎて逆にダメだ!!」

「さっきあなたオッパイが女の価値って言ってましたよね?」

前言撤回が早すぎる。



「あっはっはー、やっぱり皆さん分かってませんね!」

妹子ちゃんがしたり顔でそう言った。

「今の時代はやっぱり妹なんですよ!家族と言う絆で結ばれた愛!一番近くて遠い存在・・・そんなロマンあふれる妹こそがお兄ちゃんにふさわしいんです!あなたたちは生まれた瞬間から私に負けているんですよ!」

ムフー、という効果音をつけたいほど誇らしげに言った。

「「「くっ・・・」」」

三人は下を向いて残念そうにしている。

・・・いやここは残念そうにする場面なのだろうか・・・

「皆さんはせいぜい私とお兄ちゃんの禁じられた愛を指をくわえてみてるといいです!!あっはっはー!」

妹子ちゃんのうれしそうな声が教室に響く。

残念ながら俺はこの顔を絶望に染めなくてはいけないのだ。


「妹子ちゃん。」

「妹 is GOD!妹 is perfect!」

「新ヒロイン候補の方なんですが



どうやら血の繋がりが無い妹らしいです。」


「ベエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

妹子ちゃんが奇声を発して倒れた。

まぁ想像していた通り、案の定設定がかぶっていた。

「ぎ、義理の妹だって・・・?そんな家族の関係を持ちつつも将来的に結婚できる関係・・・妹の最終進化系・・・これが義理の妹・・・うらやましすぎる・・・」

「別に妹に進化系もクソもないと思うんだけど・・・」

さて、この流れだと・・・


「ふふふ・・・皆さん大丈夫ですか・・・?」

野虎君が余裕のある笑みを表情に出しながら言う。

「やっぱり今の時代ただの女の子なんて流行らないんですよ・・・時代は男の娘!!性別を越えた切ない愛!かわいい顔にチン○ン!つまり僕が伊織のヒロインにふさわしいってことです!!」

「「「「くっ・・・」」」」

四人は真っ青な顔で絶望している。

・・・まぁみんな予想はしているだろう。

俺はこれからこの娘・・・いや彼の顔を曇らせなければいけない。


「野虎君。」

「でも付き合うとなるとどっちが受けになるかな・・・やっぱり僕?でもあえて僕が攻めっていうのもアリかも・・・」

「新ヒロイン候補の方なんですが


どうやら体にお湯がかかると男になるみたいです。」


「ボエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

野虎君が奇声を発して倒れた。

なんだかどっかで聞いたことがある設定だが大丈夫だろうか。

「思いっきりらん○1/2じゃなですか!!クソッ・・・いつでもチン○ン生やせる女の子なんて・・・ハッ!もしかして上手くすればふたなり化も・・・?色んなプレイができるじゃないですか!!ずるい!」

「羨ましいのそっちなの?」

なんだか予想とは違う点で悔しがっているがまぁキャラ被りしている事実は変わらない。


結果的にここにいるヒロイン候補全員たった一人の新ヒロインとキャラ被りしてしまった。

普通こんなこと起こり得ないのだが、起こってしまったものは仕方ない。

だがヒロインたちにしてみれば、そんな言葉では済まされない。

「クソッ!どんなキャラ設定してやがんだ!」

「はぁ・・・こいつ絶対・・・属性を足しすぎて扱いづらくなりますよ・・・」

「アタイだって今から牛乳を飲めば・・・」

「そもそも幼馴染と義理の妹って設定ちょっとかぶってるじゃないですか・・・」

「待てよ・・・その新しい娘と3ピー(自主規制)すればプレイの幅が広がるのでは・・・?」

全員強力なライバルの出現に戸惑い、恐怖している(1人別なことを考えているが・・・)。

さっきも言った気がするが、ヒロインにとって個性とは武器なのだ。

そんな武器を大量に持った新ヒロインというのは、彼女たちからしてみれば究極生命体になったカー○くらい脅威に感じられるだろう。

しかし、どれだけ騒いだところで来週この新ヒロインが来るのは確定しているのだ。

いまさらどう騒いだとしても現実は何も変わらない。

彼女たちにできるのは、これまで異常に伊織から好かれる努力をするだけなのだ。

「えー、皆さん各々色んな思いがあるかもしれませんが、これまで通りの頑張ってヒロインの座を、」

俺が定型句のような慰めの言葉をかけようとしたその時であった。


「あたしたちにどうしろっていうのさ!!」


なじみさんが俺の言葉を遮り、そう叫んだ。

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