第10話 番外編 悪の女幹部も色々変態だ

「クックック・・・どうしたジャスティスファイブ、これで終わりか?」

「くっ・・・」


ある日、とある採石場で5人と1人が対峙していた。

そこには石と土しかない。

5人は世間からジャスティスファイブと呼ばれている。

いわゆる戦隊ヒーローというやつだ。

そんな正義に相対している1人は、明らかに一般人ではない。

黒いボンテージに黒いマスク、黒い手袋を着けており、肌の露出度は高めだ。

胸は大きくスタイルもいい、マスクで顔は分からないが整っているであろうと想像できる。

そう、この不審者こそ・・・


「さぁジャスティスファイブよ!このアクギャーク四天王の1人、レディ・ダークの前にひれ伏すがいいわ!」

ジャスティスファイブの宿敵、世界制服を目論む悪の帝国アクギャークの女幹部である。

今まさに、世界の今後を左右する大事な決戦の最中というわけだ。


「クソッ!これまでの雑魚とは段違いだ!」

いつも冷静なブルーが珍しく動揺している。

「ハァハァ・・・みんな怪我はないか!?」

メンバーの心配しているレッド自身の息遣いが荒い。

レッドだけではない、メンバー全員が傷つき、息が上がっている。

今までも少し苦戦することがあったが、ここまで追い詰められたことは無かった。

それほどの強敵ということだ。

「このままじゃまずいですね・・・」

グリーンもいつも以上に弱気になっている。

「腹へって来た・・・カレー食べたい・・・」

イエローはいつも通りだ。

「帰ったら女の子抱いてスッキリしよーっと」

ピンクもいつも通りだ。


「こんな雑魚どもに手こずっていたとはね・・・貴様らの攻撃なんぞかすりもしないわ!!」

そう、戦いが始まってからというものジャスティスファイブの攻撃が全く当たらないのだ。

装備している剣や銃などの武器を使ってもなぜか傷一つつけることができない。

絶対絶命、圧倒的な力の差を覆すことができない。

そんな絶望の空気が5人を包む。


そんな空気の中、レッドが叫ぶ。

「ちくしょう・・・なんでだ・・・どうして・・・


どうしてあんなドスケベな格好で戦っているんだ!!」


「えっ?」

レディ・ダークは思考がフリーズした。

この場面でなぜ自分のコスチュームについてのコメントが出てきたのだろう。

ブルーも

「あんな格好で戦って、あんなでかいオッパイなんだからポロリの一つや二つ期待しちまうだろ!!戦いに集中できねぇ!」

と続いた。

「いや、ちょっと」

レディ・ダークが困惑している間も5人の会話は続く。

「え?何回かポロリしてたよ?あたし見えたもん」

「「え?マジで!?」」

ピンクの発言にブルーとレッドが同時に反応した。

「あんな汗で蒸れそうな格好してるんだから汗のいいにおいするんだろうなぁ・・・」

イエローはイエローで変わったところに興奮している。

「っていうか・・・あんな格好で人前に出て戦うなんて・・・もしかしてあの人って恥女なんじゃ・・・」

グリーンが正論を言った。

「恥女かぁ・・・興奮するなぁ」

ブルーがつぶやく。

「恥女ってAVでしか見たこと無かったけど本当にいるんだな・・・」

レッドもしみじみと言う。

「待って?え?どういう、」

「やーい、この恥女め!」「もっとオッパイ見せろ!」「いっそのこと全裸で戦え!」「俺も全裸になろうか?」「ちょっと臭い嗅がせて?」

レディ・ダークが困惑している間も5人の精神攻撃は続く。

そして5人は力を合わせ、精一杯叫んだ。

「「「「「恥女!恥女!恥女!恥女!」」」」」

そんなコールがしばらく続くと


「ち、恥女じゃないもん!!」

ダークが赤面して叫んだ。

「いや、そんなドスケベな格好してるんだから恥女でしょ?」

グリーンが冷静に突っ込んだ。

「すっ、好きでこんな格好してるわけじゃないもん!!この格好だと通常の3倍の力が使えるって聞いたから。」

「えっ?そんな防御力なさそうな格好で?力が三倍に?はぁ?」

グリーンが攻める。

「うっ、嘘じゃないもん!!四天王のプロフェッサーがそう言ってたんだもん!」

「じゃあ君はパワーアップできるならそんなエロイ格好をする淫乱娘ってこと?へぇ?」

攻め続けた結果、

「うっうぅぅぅぅえぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

泣き出してしまった。

悪の帝国アクギャークの女幹部、レディ・ダークが。

「あーあ、グリーン泣かしちゃった。」

ブルーがげんなりして言った。

「え?僕なんか悪いこと言いました?」

「わかってなかったのか・・・」

「仮面越しでも泣き顔かわいいのわかるなぁ・・・私興奮してきちゃった。」

「わかる。特にトイレ我慢してるときの泣き顔とか興奮する。」

「いや!女の子は笑顔が一番だろ!」

「えー、ああいう泣き顔が嗜虐心を駆り立てるんだよー。それにああいう女の子は相談に乗った振りすれば簡単に落ちるんよ。」

「え?マジで!?」

などと盛り上がっていると、


「わだじを゛!む゛じずる゛な゛!!」

ダークが涙目で叫んだ。

「「「「「あ、忘れてた」」」」」

全員が声を合わせて言った。

「クソがあああああああああああああああああああああああああああ!!」

ダークは激昂した。激おこぷんぷん丸だ。いや、げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームかもしれない。

「お前らなんか踏み潰してやる!!」

そう言うとダークの周囲を雷のようなオーラが包んだ。

そして、次の瞬間彼女の体が巨大化した。

「「「「「な、なんだってー!!」」」」」

大きさは高層ビルくらいだろうか、体に合わせて服やそのほかの装飾品も大きくなっている。

このままでは5人全員簡単に踏み潰されてしまうだろう。

「クックック・・・さぁ貴様ら全員死ぬがいい!!」

「まずいぞ!このままじゃ全滅だ!」

レッドが叫ぶ、他のメンバー全員も慌てている。

「グリーン!今すぐ謝れ!!土下座しろ!」

「え?いやだから何を謝ればいいんですか?」

「こいつマジかよ!」

ブルーも流石にドン引きしている。

「あーヤバイヤバイ!クソッ!踏まれるならあのブーツで蒸れた素足に踏まれたかった!!」

「まずいなー、仕方ない死ぬ前にあたしたち5人で乱交でも」

全員が死を覚悟し、ダークが5人全員を踏み潰そうとした、その瞬間


グリーンが呟いた。


「え?あれ陰毛はみ出てない?」


シュン!とレディーはその言葉を聞いた瞬間元の大きさに戻り、確認した。

「はみ出してない。」

「いやはみ出てたって。なんかチリ毛が股間の辺りから見えたもん。」

「え?マジで?」

「ちくしょう!見えなかった!」

「まぁあんなハイレグだったらはみ出るわな。」

命の危機が一転、女幹部の陰毛の話になった。

こんな戦いがあってもいいのだろうか。

「いやだからはみ出してないって言ってるじゃん!!ちゃんと今朝剃ってき・・・あっ」

「えっ?剃ってきたの?わざわざそのドスケベな格好するために?やっぱ淫乱女じゃないんですか!?」

グリーンが食いついた。いい加減ダークがかわいそうに思えてきた。

「悪の帝国の四天王もそこらへんはちゃんとしてるんだなぁ・・・」

レッドがしみじみと言った。

「そうか・・・剃っているのか・・・俺といっしょだ・・・」

ブルーが気持ち悪いことをさりげなく言った。

「俺は剃らないでほしいなぁ・・・できればめちゃめちゃ毛深い方が興奮する!」

イエローも気持ち悪いことを言っている。

こちらが好き勝手陰毛論議をしていると再びダークが涙目で怒り始めた。

「ちっ、違うし!!股間に毛なんて生えてないし!陰毛なんか生えてないし!!」

「えっ?そのオッパイでパイ○ンなの!?マジですか!?」

「そ、そうじゃなくて・・・」

「陰毛生えてるの?生えてないの?どっちなんですか?ねぇ?」

「うっ・・・」

グリーンが猟犬のように食いつく。

流石にかわいそうだと思ったのかピンクがフォローに回ろうとする。

「大丈夫だよダークちゃん!私も結構毛深いよ!?恥ずかしいことじゃないし、意外と毛深い人いっぱいいるよ!」

「そうだそうだ!!」

全くフォローになっていない。

「ダークちゃん、別に陰毛が生えていることは恥ずかしいことじゃないんだ。自然なことなんだよ?」

流石表の顔は教師のレッド、説得するのが上手い。

「そうだ!ダークちゃん!毛を剃ることも恥ずかしいことじゃないぞ!俺も剃っているけど全然恥ずかしくない!むしろ見てほしい!いや、今見てくれ!!」

ブルーはなぜか服を脱ぎだす。

そしてなぜかみんな敵の幹部をちゃん付けで呼んでいる。

「なんだったら私が剃ってあげようか?」

ピンクは目がマジだ。

「嫌ッ!やめてぇ・・・」

ダークは涙目で完全におびえている。

「くっ・・・ダメか・・・このままじゃダークちゃんが陰毛にコンプレックスを持ったままになってしまう・・・よし!みんな!彼女を元気付けるぞ!」

「「「「おう!」」」」

「いや、ちょっ、やめ」

レッドが余計な提案をし、全員がそれに乗り気になってしまった。

そして、


「「「「「陰毛!陰毛!陰毛!陰毛!陰毛!陰毛!」」」」」

謎の陰毛コールが始まった。

なぜこれで元気付けられると思ったのかは謎だが、5人は全員本気の目をしていた。

特にグリーンの目はキラキラと輝いていた。

応援されているダークは顔を真っ赤にし、


「うっ・・・うっ・・・ふぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

膝をつき、両手で顔を覆い泣き崩れてしまった。

それを見たレッドは

「おお!俺たちの応援に感動して泣いてくれてるぞ!」

と、とんでもない勘違いをしていた。

「もうヤダあああああああああああ!おうち帰るうううううううううううう!お前ら覚えておけよおおおおおおおおおおおおおお!!」

ぐしゃぐしゃに泣き崩れた彼女はそんな捨て台詞を残し、消えて行った。


そして残ったジャスティスファイブはというと、

「いやーいいことをした後は気持ちがいいな!」

「ああ、これでまた1人の少女の悩みを解決できたと思うと晴れやかな気持ちになるぜ!」

「剃った毛一本でもいいからくれないかな・・・」

「あぁ~いけない・・・あの泣き方みたらゾクゾクしちゃった・・・」

それぞれ全員満足した表情をしていた。


「ん?グリーン何をしてるんだ?」

レッドが聞くとグリーンは満面の笑みで答えた。

「ああ、せっかくなんでレディ・ダーク陰毛濃い説をネットに拡散しようと思いまして。」


こうして世界の平和は守られた。

ありがとう!ジャスティスファイブ!

戦え!ジャスティスファイブ!

陰毛の濃さで悩む人がいなくなるその日まで!

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