第9話 モブキャラだって世界程度救える4

絶望


その場にいる全員が声も出すことができなくなっていた。

作戦の要であった妖刀『村雨』による〇ンコ切断も失敗に終わってしまった。

それどころか・・・


「村雨が・・・折れた・・・?」

思わず呟いてしまった。完全に予想外だ。

まさか全てを切り裂く妖刀が、男子高校生の〇ンコを切ることができないとは。

「ど・・・どうするんだ・・・?あと10分もしたら飛鳥とヒロインが合体しちまうぞ・・・」

風丸が顔を真っ青にして言う。

そう、刻一刻とタイムリミットは近づいている。

あと10分以内に飛鳥のチン〇をなんとかしないとこの世界が終了し、この小説のカテゴリがR18になってしまう。

それだけは何とか回避しなければならない。

だが・・・

「ダメだ・・・村雨でも切れなかったってことは、今あのチ〇コは世界最硬の金属オリハルコンよりも硬いってことだ。最悪、世界の因果律をも捻じ曲げてしまう存在になっているかもしれない。」

「いや、意味が分からんわ。たかがチン○がなんでそんな大そうな存在になってるんだよ!というかお前因果律って言葉の意味わかってるのか?」

風丸がごちゃごちゃうるさいが、とにかく飛鳥のチ○コをどうにかする手段がないことに変わりは無い。


ここで終わり・・・なのか?


ピロピロピロピロ


突然携帯が鳴り出した。


「誰だ?」

とりあえず電話に出ると、

『諦めるんじゃねぇよ!!』

聞いたことのあるこの声は・・・

『まだ10分もあるのよ!!この程度の困難で諦めるんじゃないわよ!!』

電話からはクラスメイトたちの声が聞こえてきた。

『直から聞いたぜ、でもこれくらいでへこたれるお前らじゃないだろ!』

どうやら直がクラスに作戦が失敗した連絡をしてくれたようだ。

『あたしたち全員の思いをあんた達に送るから、最後の最後まで諦めるんじゃないわよ!!』

ド貧乳でクラスの男子から動く平原と呼ばれている胸無さん。

『帰ってきたときのためにパーティーの準備でもしとくさ!』

おっぱいが大好きなボイン中島。

『俺らにできることがあれば何でも言えよ!』

性癖がヤバイ高木。

『全部終わったらご褒美あげちゃう!』

ブスだけど声はかわいい毒島。


そうか・・・俺らはここで諦めるわけにはいかないんだ・・・。

俺たちは今ここにいないやつらの思いも背負ってここにいるんだ。

時間の許す限り考えるんだ、あのチ○コを何とかする方法を。

だが、外部からの干渉ができないとなると俺らにはどうしようも・・・


ん・・・?

外部からはダメ・・・飛鳥自身がどうにかすれば・・・


「あっ!!!そうか!!」

思わず声が出た。

「ど、どうした?」

「何か・・・思いついた・・・の?」

「ん?なになに!?どうかした!?」

周りのみんなもびっくりしたようだ。

「クックック・・・思いついたんだよ・・・この状況を打破するすごいアイディアが!!」

「「「な、なんだってー!」」」

「俺たちはチン○を物理的に何とかしようとしていたが、そこに縛られてしまっていたんだ。」

「は?どういうことだ?」

「じゃあ聞くが、お前らは常にビンビンなのか?」

「「!?」」

「?」

二人はピンと来たようだ。直はよくわかっていないようだが。

「そうだ、どんな○ンコだってビンビンのときもあれば、しなっとしている時もある。つまり・・・


あいつ自身のチ○コを萎えさせればいいんだよ!!」


「え?萎えさせるってどういうことなの?ねぇ?ねぇ?」

「ごめん、ちょっと黙ってて。」

女性には少し難しい話かもしれない。

「でも、あいつのチン○には龍の力が宿っているんだろ?それを萎えさせることなってできるのか?」

「そんな力が宿っているとはいえ所詮はチン○だ。チン○自体を弱体化させれば問題はないはずだ。」

そう、今はバキバキの状態だから困っているのであって、しなしなの状態にすれば合体する心配もないのだ。

「でも・・・問題・・・は・・・」

「どうやってしなしなにするか・・・だな、でも今のあいつは外部の影響を一切受けない。俺たちがどうにかすることはできないんじゃあ・・・」


「お前ら・・・○ンコが萎えるときってどんなときだ?」


「ん?何々?どういうこと?私にも教えてよー!」

「もうちょっとで終わるから少しまってくれ。」

風丸がゆっくり口を開いた。

「さ、寒い時とか?でも今は外部の影響を受けないし・・・」

断も恥ずかしそうに言う。

「ろ・・・ロリものだって・・・見てみたら・・・ロリ巨乳もの・・・だったとき・・・とか?」

「まぁ近いんだけど、それはたぶんお前だけだな。それはな・・・


見てたAVが想像していたものと違ったときだ・・・」


「「ああーなるほど」」

「男なら一度はあるだろう。DVDのジャケットや、動画サイトのサムネを見て期待に胸を膨らませて見ると、なんか想像していたシチュエーションじゃなかったり、思っていたよりも女優が微妙だったり、思っていたよりもオッパイが小さかったり、そんながっかりしたことが。」

「なるほど、じゃあそのガッカリ感を飛鳥に与えるんだな。」

「そういうことだ。」

「え?そういうもんなの?」

「「「そういうもんだ。」」」


理想と現実が与えるギャップ、それが男に与える影響は想像以上に大きいのだ。

「でも一体どうやってそのガッカリ感を飛鳥に感じさせるんだ?」

風丸が怪訝そうな顔で聞いてきた。

「そこもちゃんと考えてある。断、クラスの教室からあいつを呼んできてくれ?」

「あいつ・・・?」


「そう、今回の作戦のキーパーソンとなる彼女をな。」


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「くっそーーーーーー!朝から不幸だああああああああああ!」

伊織飛鳥は全力で町の中を駆け抜けていた。

「寝坊はするし、女の人たちからはパンツ見た疑いで追い掛け回されるし、このままじゃ間違いなく遅刻だああああ!」

大声を出しながら街中を走るその姿は他人から見れば不気味に見えただろう。

しかし当の本人はそんなこと全く気にしない。

「こうなったら裏道を通って近道するしかない!えっと確かここの歩道橋を渡って・・・」

周りを見回しつつ、歩道橋の階段を登ろうと上を見た、その瞬間彼の目には


水色と色の縞パンが映った。


どうやら、自分より上の段にいた女子生徒のスカートが風でめくれてしまったようだ。

そして、その女子生徒は飛鳥にパンツを見られたことに気づき、とっさにスカートを抑える。

顔は逆光になってよく見えない。

「もぉー!エッチな風さんね☆」

しかし、声を聞くだけでわかる。

この女子生徒は絶対に美人だ。

例えるならば花○香菜のような天使の声だった。

パンツとかわいらしい声に思考が一時停止してしまったが、意識が戻るとすぐに謝罪の言葉を述べた。

「す、すいません!!大丈夫です!水色と白の縞パンなんて見てませ・・・あっ。」

完全に墓穴を掘ってしまった。

しかし、その女性は軽く笑うといたずら好きの小悪魔のように魅惑的な声でささやいた。

「ふふっ、エッチなのは風さんだけじゃなかったのかな?」

そんな全世界の男子を昇天させてしまうような言葉を聴き、飛鳥は思わずドキッとしてしまう。

「えっと!すいません!そんなつもりじゃあ・・・」

そう言って彼女の方を向くと、太陽が雲に隠れ逆光になって見れなかった顔を見ることができた。


そう学校一番のブス、毒島さんの顔を。


「・・・・・」

思考が止まる。

先ほど見たパンツは幻影で、先ほど聞いた声は幻聴だったのだろうか。

だが目の前にいるのは学校1のブス、毒島さんだ。

同じクラスだが今までしゃべったことがなく、集中して声を聞いたことがなかったため、こんなかわいい声をしていたのに気がつかなかった。というか別人の声だと思っていた。

そんな現在の状況解析を全力で行っていると、向こうからしゃべりかけてきた。

「あれ?君って伊織君じゃない?アタシよ!同じクラスの毒島よ!いやぁ、まさか私のパンツを始めて見たのがクラスメイトなんてなんだか恥ずかしいね・・・」

「あ、すいません。自分急いでるんで。」

先ほどまでの夢と希望に満ちた飛鳥の瞳は、完全に死んでいた。

ただただ、虚空を見るその目の中には絶望が漂っている。

「え・・・?いや、ちょっと、女の子のパンツ見といてその反応はないんじゃ」

「ほんとすいません。」

「いや、すいませんじゃなくて、え?ちょっと?なんで無言で千円札をこっちに差し出してるの?え?どういう意味?」

「これで・・・ヒグッ許して・・・ヒグッください・・・ヒグッ。」

「え?なんで泣いてるの?ちょっとおおおおおおおおおおおお?」

無理やり千円札を毒島に渡すと、飛鳥は全力で駆けていった。

今までに無いほど疾く、風のように去っていった。


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「せ・・・成功だ・・・伊織飛鳥のチン○が鎮静化したぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

俺が声高らかに勝利宣言すると、そこにいた全員が歓喜した。

「「「よっしゃあああああああああああああああああああああああ!!」」」

ついに俺たちはやったのだ。

幾多の困難を乗り越え、ついに俺たちはチ○コに勝利したのだ。

電話の向こうからもクラスメイトたちの歓喜の声が聞こえてくる。

「正直もうだめかと思ったぜ!」

風丸が涙ぐみながら言う。

「やったね!私たちみんなの勝利ね!」

直も満面の笑みで言った。

「みんな・・・今日の主役が来たよ・・・」

そう言った断の近くを見ると、空間を瞬間移動して来た毒島さんがそこにいた。

「やったな毒島さん!!君のおかげで世界が救われたよ!!」

俺は英雄を称えるべく賞賛の声を上げた。

「あ・・・うん・・・ありがとう・・・。」

しかし、当の本人はあまりうれしくないようだ。

「どうしたんだよ!もっと喜べよ!!」

風丸も彼女を喜ばそうと促すが、やはり元気がないようだ。

「毒島さんがブスじゃなかったら今頃どうなっていたことか・・・」

直がしみじみ言う。

「ブスで・・・世界が・・・救われた・・・」

断も表情には出さないが、なんとなくうれしそうにしているのがわかる。

「えっと・・・うん・・・」

毒島さんはまだ浮かない顔をしている。

原因はなんだか分からないが、どうにかして彼女を喜ばせてあげたい・・・そうだ!

「よし、みんな!毒島さんを胴上げしようぜ!」

「いーな!賛成!!」

「よーし、力いっぱい上げるわよ!!」

「え?ちょっと・・・?」

四人全員で毒島さんを囲み、その体を持ち上げる。

そしてタイミングを合わせ毒島さんを宙に上げ、四人いっせいに叫ぶ。

「「「「せーの!ブス万歳!ブス万歳!」」」」


そうやって持ち上げられた毒島さんは笑顔で、その瞳からはナミダが流れていた。

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