第8話 モブキャラだって世界程度救える3

ギンギンになったこの世界の主人公、伊織飛鳥のチン〇をどうにかチン静化させる、これができなければ世界が滅ぶ。

悪趣味が過ぎる冗談だ。


しかも、そんな世界の命運を握る最重要ミッションをこなすのは俺たちモブキャラだ。

そしてこんなことができるのも俺たちモブキャラだけなのだ。

主人公達は表立った世界の危機を救い、俺たちモブキャラは裏側から彼らを支える。

これがこの世界のシステムなのだ。


そして今まさしく世界を救うミッションを始めるのだが・・・。



「じゃあ作戦を伝えるぞ。」

俺がそう言うと集まった空間 断、早区 直、武田 風丸の3人は黙ってうなずいた。

「まず断、教室の掃除用具入れに入れてたアレ持ってきたか?」

「うん・・・これ・・・」

断は力なく答えると、手に持っていたものをこちらに差し出した。

「掃除用具入れにあったものって・・・お前これから掃除でもするつも・・・!?」

風丸の声が途中で途切れた。

いや驚いて声が出なくなったのだ。

断の手に持っていたもの、それは・・・


刀だった。

「言われた通り・・・掃除用具箱に入ってた妖刀『村雨』をもってきたよ・・・。」

「何でそんな物騒なモン掃除用具入れにあんだ!?」

風丸が全力でつっこんだ。

「え!?どこの学校にも掃除用具入れの中に妖刀の一本や二本あるでしょ!?」

直がきょとんとした顔で言う。

「普通ないだろそんなもの!!どこの国の常識だよ!!」

「あ・・・うちの中学は確か・・・妖刀じゃなくて聖剣『エクスかリバー』が入ってたよ・・・。」

「いやそういう問題じゃなくて。」

風丸はわけが分からないという顔をしている。

仕方が無い、俺が説明をしてやろう。

「風丸、お前は掃除時間女子のパンツしか見ていなかったから知らないかもしれないが、今どき聖剣や妖刀が入っていない掃除用具入れを見つけるほうが難しいぞ。」

「嘘だろ!?俺が女子の縞パンや純白パンツを見ているうちにこの世はこんなに狂っていたのか!?」

パンツ見てたのは否定しないんだな。

「でもなんでそんなモン入れてんだ?」

まぁ当然の疑問だ。

「それは主人公達のためさ。」

「はぁ?」

「お前は伊織飛鳥の裏の顔は知っているよな?」

「えっと確か・・・龍の力を操る魔法剣士だっけ?」

「そうだ、その伊織が使っている剣がこの妖刀『村雨』だ。」

そう今回の主人公こと伊織飛鳥はいわゆる魔法剣士なのだ。

彼は下校中に会った悪の組織から逃げる瀕死の女の子を助けるために、命を賭けてその力を得た。

ライトノベルでありがちな展開だが、彼がその際龍の力を得て特別な存在になったのは確かだ。

そしてその力を操るのに必要なのがこの妖刀なのだ。


「えっ!?いいのかそんな重要なモンここに持ってきて?」

「大丈夫!大丈夫!もし必要になっても黒板消しをパンパンするために使ってたやつあるから平気!平気!」

直があっけらかんとした声で言った。

「いやそれ妖刀のほうが平気じゃないだろ!てかこの刀って世界に一本しかないんじゃ!?」

まだ風丸にはツッコむ余裕があるようだ。


「この刀Am〇zonですぐ買えるよ!!」

「妖刀がAm〇zonで買えるの!?」

「うん・・・この前タイムセールやってたよ・・・」

「タイムセールやってんの!?」

次々と明かされる事実に風丸はついていけてないようだ。

だが周りからしてみれば当たり前のことを言っているに過ぎない。

これがこれまでの人生でパンツしか求めてこなかった男の末路である。

「いつの間に世界はこんなお手軽になったんだ・・・。」

「まぁ主人公達には妖刀がAm〇zonで買えるのは内緒なんだがな。」

「そうなのか?」

「そりゃね、一応あの妖刀は世界に一本だけって設定だし。」

「じゃあなんでこんなに妖刀が流通してるんだ?」

「ほら・・・実際刀とかってすぐ刃こぼれしたり切れ味悪くなったりするじゃん。それだと主人公が敵と戦うときカッコつかなし、いざって時に刀壊れたりしたら大変でしょ?だからいつでも新品と取り替えられるようモブたちががんばって量産して売り出してるんだよ。」

「そんでもって!!学校で刀がなくなると困るからいつでも取り替えられるように学校の掃除用具入れに入っているってわけ!!」

「トイレの・・・予備の・・・トイレットペーパーみたいなもんだよ・・・」

「妖刀をすごい例え方した気がするが・・・な、なるほど・・・。」

風丸も若干納得がいっていないようだがまぁいいだろう。

それよりも今は一刻も早く作戦を遂行しなければ。

「で、この妖刀を何に使うんだ?」

風丸が問いかけた。

「ああ、まず断が伊織のチン〇付近にワープホールの出口を作り出す。そして入り口をこっちに作り出して、そこからこの妖刀とそれを持つ手をワープさせて



あいつのチン〇を叩き切る。」



「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

ズコーーッ!

風丸が昔のアニメのようなコケ方をした。

「なるほど・・・それなら・・・迅速に処置できる・・・」

「さっすがモブオ!!やるね!!よっ!この世界一のモブキャラ!!」

「よせよ、照れるだろ。」

今のコメントは褒められたのか微妙なラインだが褒め言葉として受け取っておこう。

「いやいやいやダメだろそんなの!!!」

立ち上がった風丸が猛反対してきた。

「切った後どうするんだよ!!流石に伊織も気づくだろ!!」

「ふふふ・・・そこで直の出番さ。」

そう、俺の作戦には一分の隙もないのだ。

「切った直後に直と変わって、直の能力でチン〇を元の状態に戻すんだ。」

「なん・・・だと・・・!?」

風丸は驚きを隠せないようだ。

そうだそうだ、俺の作戦に驚くがいい。

「直の能力は『対象の人物を普通の状態に戻す』だよな?」

「うん!!確かにそうだよ!!」

「これならチン〇を切った直後に能力を使えばバキバキ状態のあいつのチン〇も、いつも通りのスタンダードスタイルになるってわけさ。」

「なるほど・・・ん?」

風丸が怪訝な顔をした。

なにやら疑問があるようだ。

「じゃあ最初から直の能力を使ってもとのチン〇に戻せばいいんじゃ?」

「いや!そう上手くいかないんだよね!!」

元気よく直が言う。

「今の伊織君は龍の力が暴走しているみたいなんだよね!!で、その暴走した力を必死に押さえ込んだ結果、龍の力が全部チン〇に集まって結界みたいなのが形成されているの!!だから今のバキバキの状態じゃ私の能力で干渉できないんだよね!」

聞いていてもなんだかよく分からない説明だ。

「で、いまその結界に干渉できるのが妖刀『村雨』だけってわけ!!つまり、妖刀でチン〇切り落すか伊織自身が力をコントロールするかしないとどうにもできないってこと!!」

なんだかかっこいいワードがたくさん出てきたが、要するにチン〇を叩き切るしかないということだ。

能力や妖刀など単語だけ聞いていると最近流行りの異能力バトルものみたいだ。

だが俺らの現実はそんなにかっこよくない。

俺らが相手にするのはビンビンのチ〇コだ。


「それじゃあ早速やるぞ!!断、頼む!」

「了解・・・」

俺が刀を持ち、断が両手を前に突き出した。

すると断の手から黒い靄のようなものが出て渦を巻いた。

「うん・・・この黒い渦に突っ込めば・・・伊織のチン〇付近にワープできるよ・・・」

「風丸、伊織の監視と風で目くらましを頼む!」

「なんか釈然としないが・・・了解!」

風丸が双眼鏡を手に監視を始めた。

「あたしも準備オッケーだよ!!」

直も俺のすぐ近くで能力を発動させる準備をしている。

準備は万端、世界を救いに行こう。

「オッケーだ・・・3・・・2・・・1・・・ゴー!!」

カウントが終わるのと同時に風丸が双眼鏡を持っていないほうの手を伸ばし、能力を発動させる。

「よし大丈夫だ!周囲の人間は風で目をつぶっている!」

俺は刀と自分の両手を黒い渦の中へ突っ込む、入れた瞬間自分の手が外の空気に触れているのがわかる。

「よしよし!モブオ!お前の両手は伊織の〇ンコ近くにワープしている!」

「いっけえええええええええええええええええええええええええええええええ!」

俺は両手に力を込め、叫びながら刀を振り下ろした。


キンッ


金属同士がぶつかり合う音がした。


そして・・・


村雨が折れた。

ぽっきりと。

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