第4話 小学生だっておもちゃを使えば世界は救える1
おもちゃ。
それは子供が遊ぶために使う道具であり、それ自体に特別な力など無い。
そう、普通なら。
ただのちょっとメタリックなベーゴマや、ビー玉を発射するかっこいい人形、カブト○ーグ、どれも一般人が使えばただのおもちゃでしかない。
しかし、選ばれし人間が使うとなると話は別だ。
メタリックなベーゴマは天変地異波の超常現象を起こし、ビー玉を発射するかっこいい人形は岩をも破壊する、カブト○ーグは人をも殺すことができる。
今回はそんな拳銃よりも危ない代物を使って幾多も世界を救ってきた主人公、『宝富雄』君の話をしよう。
時は5月、日曜日の昼下がりにコンビニに行こうとしたときのことだ。
コンビニまでの道のりの途中、公園を覗いてみると小学生の一人の少年が時計に向かって独り言を言っているのが見えた。
「あークソッ!また逃げられた!!なんでこんなに逃げ回るんだよ!」
普通ならば関わらずに無視してコンビニまで行くのがベストなのだが、よくよく少年の顔を見てみると見知った顔であった。
「あっ!モブのお兄ちゃん!」
向こうもこちらの存在に気づいたようだ。
「やあ富雄君、久しぶり。」
「うん!モブのお兄ちゃんも相変わらず地味だね!」
この初っ端からキレのいいジャブをかましてくる少年が『宝富雄』君だ。
俺は大人だから別に気にしてなどいない。
この子は近くの星閃光小学校に通う小学5年生の男の子だ。
髪の色は日本人離れした赤色、しかもどんなワックス使っているんだってくらいガンガンに立たせている。
背は145センチほど、目は赤くつり目だ。
もちろん、普通の小学生ではない。
この子は今まで何度も悪の組織から地球を守ってきた英雄である。
しかも、おもちゃを使ってだ。
ある時はベーゴマの中に封じられた聖獣を利用して小惑星を悪の組織のアジトに落として壊滅させたり、またあるときはビー玉を発射する人形を使い敵の秘密基地を粉々にしり、またあるときはカブ○ボーグを使ってビッグバンを起こして宇宙を創生したこともあった。
だが、世界を救った英雄とはいえ所詮子供、1クール経つと飽きて別のおもちゃで遊び始めてしまう。
まぁ遊ぶおもちゃを変えるたびに世界を救っているわけだが。
そんなトンデモ少年がこの子なのだ。
「こんな公園で一人で時計を見て何してたんだい?」
「え!?もしかしてモブの兄ちゃん『化物ウォッチ』を知らないの!?」
「化物ウォッチ?妖怪ウォッ○じゃなくて?」
「妖怪ウォッ○なんて今じゃオワコンだよ!全く、いつの時代の話をしているのさ。」
所詮子供の言うこと、気にしてなどいない。
「この化物ウォッチは確かに妖怪ウォッ○に似てるけど、その中身は全然別物なんだ!」
どう見てもパクリ商品だが、まぁ聞こう。
「この時計のボタンを押すと時計の透明なふたが開いてそこを通して回りを見てみると普段は目に見えない化物たちが見えるんだ!」
「なんか聞いたことあるな。」
「しかもこの化物に向けて時計のボタンを押すことでその化物を捕まえられるんだよ!」
「なんかいろいろ混ざっているな。」
あきらかにパクリの臭いがぷんぷんするが、少年は目を輝かせて語っている。
「しかもこの化物がまた他のゲームとは違うんだよ!」
「ん?どういうこと?」
「この化物ウォッチに出てくるキャラクターたちは現実の芸能人を題材にしているんだよ!」
「ほーそれは珍しいな。」
昔は芸能人をテーマにしたゲームやおもちゃが多く存在したが、最近ではめっきり減ってきている。
「モブの兄ちゃんもやってみれば面白さがわかるよ!ちょうどスペアの化物ウォッチあるし、ちょっと一緒にやってみよう!」
物は試しだ、子供たちの間で流行っているおもちゃとやら、堪能させていただこう。
「よし分かった、どうせ暇だし一緒にやるか!」
「うん!」
日曜の昼下がりに小学生と遊ぶ高校2年生字面のやばさに俺は気がついていなかった。
富雄君から借りた時計形のおもちゃを腕につけ、ボタンを押すと時計の透明なフタが開き、そのフタにゲーム画面が表示されていた。
「じゃあまずは最初に雑魚キャラクターでどんな感じで遊ぶのかやってみよう!」
「ほー化物とやらはそこらへんにいるのか。」
「うん!そうだな・・・ここらへんには・・・いたいた!」
富雄君が時計をかざしながら周りを見回って見るとどうやら目標の雑魚キャラがいたようだ。
「ちょうどいいや!このおもちゃのマスコット的なキャラクターがいたからこいつで試してみよう!」
「へーどんなキャラなんだ?」
そう言って時計の画面を見てみると、そこには・・・
がっちりした体のおっさんが映っていた。
「ん・・・?誰だ?これ?」
芸能人が元ネタとなっていると聞いたが、このがっちりとしたおっさんは見覚えがない。
・・・いや?・・・待てよ・・・?どこかで見たことあるような・・・
「富雄君、このキャラクターは誰が題材になっているんだい?」
「ああこいつはね、このおもちゃメインキャラの・・・
ミスターサスケ、山田 勝○だよ!」
「いや!地味すぎない!?!?」
そもそも有名人かどうかすら怪しい。
あの人はただサスケ大好きな普通のおっさんだ。
というか、最近の人たちはミスター○スケを知っているのだろうか。
「え?てかこのおもちゃのメインキャラこいつなの?」
「うん!そうだよ!ちなみに〇スケオールスターズは全員出てくるよ!!」
「誰が楽しめるのこのゲーム!?」
楽しそうな満面の笑みでそう返された。
どうやら嘘をついているわけではなさそうだ。
「この『妖怪ミスター○スケ』はみんなに親しんでもらいたいって企業側の提案でそこらじゅうに配置されているんだ。だからこのおもちゃを通してみるとこの世界中がミスター○スケだらけなんだよ!」
「嫌だよ!そんな世界!」
想像したことがあるだろうか、マッチョな一般人のおじさんがそこら中にあふれている世界を。
もはや世紀末も真っ青である。
「例えてるならポケ○ンGOのポッ○くらい頻繁に出るよ。」
「常にどこにでも沸いてるじゃないか!!」
「他にもクイズ王『古川洋○』や、大食い王『ジャイアント白○』とかがよく出てくるよ!」
「なんでキャラクターのモデルのラインナップが芸能人かどうか微妙なラインの人たちばっかりなんだよ!!」
一体このおもちゃはどの層をターゲットにしているのだろう。
ちょっと有名なおっさんを捕まえて喜んでいる子供たちの顔が全く想像できない。
だが、とりあえず富雄君はめちゃめちゃ喜んでいるようだ。
こんなおもちゃはこの子の今後にいい影響を与えないのは確かだ。
年上のいい兄ちゃんとしてこの子を正しき道に戻してやろう。
そう思って富雄君に話しかけようとした瞬間、
「ふふふ、次にモブの兄ちゃんは『こんなおっさんを集めるだけのおもちゃの何が楽しいんだ』と言う!」
「こんなおっさんを集めるだけのゲームの何が楽しいんだ・・・ハッ!!」
見事にジョセフられた。
富雄君は含みのある笑顔でこう言った。
「兄ちゃんはまだこのゲームの入り口に立っただけなんだよ・・・」
「何・・・だと・・・!?」
このおもちゃにはまだ楽しめるゲーム要素があるのだろうか。
どう考えても無いと思うが。
「実はこのゲームはね・・・捕まえた化物同士でバトルができるんだ!」
「な、何だってー!!」
まぁ正直予想はできていた。
こういったキャラクターを集める系統のゲームはだいたいバトルはできる。
だがこのキャラクターたちがどういう方法でバトルするのか想像できない。
「え?じゃあこのキャラクターたちはどうバトルするんだい?」
「もちろん・・・」
「もちろん・・・?」
「殴り合いさ!!」
「殴り合いか!!」
おっさんの姿をしたキャラクターたちが殴り合うの見て何が楽しいんだろうか。
「な、なぁ富雄君、他になんかみんな知っているような有名な人をモデルにしたキャラクターはいないのかい?」
「え?他に?うーん・・・。」
このラインナップより有名な人を選ぶだけでこんなに悩むなんて、この子は普段どんな番組を見ているのだろうか。
「あ!有名人ならいるよ!うーんと・・・あ!ちょうどそこに出てきたよ!」
「え?本当かい?」
正直この子が言う有名人はあまり信用できないのだが・・・。
「ホラ見て!こいつらだよ!こいつら!」
化物ウォッチの画面を見るとそこには、
イケメン筋肉集団がいた。
「こ・・・こいつらは!?」
「そう・・・こいつらはあの超有名イケメンユニット・・・EX○LEだよ!」
予想以上の有名ユニットに驚きしかなかった。
これまでの有名人もどきのおっさんとはわけが違う。
デフォルメキャラとして表示されているが圧倒的にオーラが違う。
「おお!すごいじゃん!こんな有名ユニットが出てくるのか!」
「うん!ほかにも・・・あ!いたいた!」
再び画面を見てみるとそこには・・・
イケメン筋肉集団がいた。
「こ・・・こいつらは!?」
「こいつらは・・・超有名イケメンユニット、J Soul B○othersだよ!」
「な、なんだってー!!」
さらに同レベルの有名ユニットが出てくるとは完全に予想外だった。
どうせここでもう一回しょうもないおっさんが出てくると思っていたが完全に虚をつかれた。
「まだこんなもんじゃないよ!」
「え?まだいるのか!?」
再び画面を見るとそこには・・・
イケメン筋肉集団がいた。
「こ・・・こいつらは!?」
「ふふふ・・・こいつらはあの超有名イケメンユニット・・・EX○LE THE SECONDだよ!」
「あ・・・ああ!うん!すごいな!」
三回目のイケメン筋肉集団の出現に驚いた・・・のだが・・・。
なんだろうこのそこはかとなく感じる嫌な予感は・・・。
「ふふふ・・・まさかモブのお兄ちゃんこれで終わりだなんて思ってないよね・・・?」
「そ・・・そんな・・・まさか!?」
画面を見るとそこには・・・
イケメン筋肉集団がいた。
「こ・・・こいつらは!?」
「ふっ・・・こいつらはEX○LE TRIBEだ!」
「・・・あっ・・・うん・・・えっと・・・すごい!」
嫌な予感が的中している気がする・・・
この流れだと・・・
「まだまだ驚くには早いよ!!」
「・・・」
画面を見るとそこには・・・
イケメン筋肉集団がいた。
「あー・・・こいつらは・・・?」
「クックック・・・こいつらはあの超有名イケメンユニット・・・GENERATIONS from ○XILE TRIBEだよ!」
「いや、何体同じようなやつらいるんだよ!!!」
ついに突っ込んでしまった。
「え?何言ってるの?どれも全然違うよ?」
「どれもこれも同じようなイケメン筋肉集団じゃねえか!!見分けつかねぇんだよ!!名前も似たような感じだし!!!メンバーの見分けつくの関口○ンディーくらいなんだよ!!」
「そんなことないよーどれもメンバー違うしユニットの雰囲気だって・・・」
「そんなのわかんねぇんだよ!!最後のGENERATIONS from ○XILE TRIBEってなんなんだよ!EX○LEの派生ユニットであるEX○LE TRIBEの派生ユニットってもう意味わかんねぇんだよ!!!」
「いや厳密にはそうじゃなくて・・・」
「説明しなくていいよ!されてもわからんし!!」
「ほかにも小さいおっさんがメンバーに入ったオカ○イル、劇団○ザイル、あとE-girlsとかもいるよ!」
「まだあんの!?」
これだけ種類が増えてしまうともはや素人から見るとどれがどれなのかわからない。
ファンの人たちはすべてのユニットの違いを言えるのか疑問である。
「よーし、これで大体の主要なキャラクターは紹介したかな?」
「え?こいつらが主要キャラクターなの!?8割くらいマッチョマンなんだけど!」
80パーセントがマッチョで構成されているかわいい要素が一欠けらもないこのおもちゃが、子供たちの間で流行っているのが本当に信じられない。
というかこのおもちゃで遊んでいるのこの子だけじゃないのか。
そんなことを考えていると富雄君が自信まんまんという顔で話しかけてきた。
「モブの兄ちゃん、もしかしてこれでこのおもちゃの解説が終わりかと思ってがっかりしてる?」
「いや、がっかりしている理由はそこじゃないんだけど・・・」
「ふふふ・・・安心して!このおもちゃにはまだ紹介していない要素があるんだよ!」
「ああ・・・そうなの・・・」
捕獲、バトル、この二つの要素があることから言わんとしているもう一つの要素は簡単に想像できる。
「それはね・・・このキャラクターの育成だよ!!」
「やっぱり・・・」
完全に想像通りであった。
しかし、このときの俺は知らなかった。
このおもちゃの育成要素がとんでもないものだということを。
このおもちゃの真の恐ろしさを・・・。
後半へつづく
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