第3話 戦隊ヒーローの悩める日々

はじめに言っておこう。

俺の名前は園田茂部雄。

一応この物語の主人公ではある。

でも俺はこの正解においては主人公でもなんでもないただの人だ。

正真正銘のごく普通の高校生だし、もちろんこれから先に世界の救世主となる予定も、周りの女子からモテまくるハーレム学生生活をおくる予定もない。

そう、本当にごく普通の少年なのだ。

この世界では俺のような人間を「モブキャラ」というのだろう。

「モブキャラ」とは漫画などで描かれる背景扱いのキャラクターのことだ。

例えるなら主人公がいた場所に偶然居合わせた通行人や、圧倒的な力から逃げ惑う群集などがわかりやすい。

決してその世界の主役を張ることができない「その他大勢」、それが俺だ。

この物語はそんなこの世界にいてもいなくても同じな俺視点の物語だ。

「そんな物語が面白いのか?」と思う人も大勢いると思う。しかし、俺自身は面白くなくても俺の周りはびっくりするぐらいたくさんのおもしろい主人公たちがいる。

この物語ではそんな世界の中心を生きているヒーローたちを俺視点で見ていきたいと思う。


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「ワッハッハ!!燃えろ燃えろ!!この私ファイヤーインフェルノがこの町を炎で焼き尽くし、われらアクギャークの新たな帝国をここに打ち立ててやろうではないか!」

そう言って町を焼き尽くす男の姿は明らかに異形であった。

全身に鎧を身につけ、左腕は火炎放射機になっており、背中にはガスボンベのような物が担がれている。

顔中が火傷によるものであろうか醜く腫れ上がっており、元の顔がどのようになっていたのか想像できない。

男が腕に付けた火炎放射機をひとたび振るうと周囲はさらに火の海と化す。

人々は悲鳴を上げながら逃げ惑い、建物や木々は次々と燃え落ちていった。


その場にいたすべての人間が絶望し、地に目を向けたそのとき・・・


彼らは現れた。


「待てっ!!」

人々の悲鳴が飛び交う中でも凛と響く声があった。

絶望で地に伏した人々はその声がする天へと向けた。


「ムッ!この声は・・・!」

続けてファイヤーインフェルノも天へと目を向けた。


するとそこにはそれぞれ赤、青、緑、黄色、ピンクの五色のユニフォームを着た5人の戦士が立っていた。


「真っ赤に燃える正義の心!ジャスティスレッド!」

「クールに決めるぜ!ジャスティスブルー!」

「森のような静かな心!ジャスティスグリーン!」

「カレー大好き!ジャスティスイエロー!」

「みんなを癒す優しき心!ジャスティスピンク!」


「「「「「五人そろって!正義戦隊ジャスティスファイブ!参上!」」」」」」


「現れたな!ジャスティスファイブ!今日こそ貴様らを倒しこの町を征服してやるわ!」



そう今回紹介するのはこの五人組の戦隊ヒーロー、ジャスティスファイブだ。

悪の秘密結社「アクギャーク」に対抗するために結成された正義の5人戦隊。

それぞれ個性の強い5人が様々な困難を乗り越えつつ絶妙なチームワークで悪を打ち倒す子供にも大人気のヒーロー


の、はずなのだが・・・


「最近子供たちからの人気が減ってきている気がするんだ・・・」

「はぁ・・・」

世界を守る秘密組織からこんな相談を受けてしまった。

「で、なんでそんなことをただのモブキャラの俺に相談するんですか・・・。」

「ただのモブキャラだって!?違うよ君はモブキャラの中のモブキャラじゃないか!!」

そんな名誉なのか不名誉なのか分からないことをジャスティスレッドは言う。

「オレたちたちヒーローの間では有名だぞ!君の手にかかれば伝説の用兵がダンボールを用いても隠れられないような場所でも、背景に溶け込める完璧なモブ能力を持っているじゃないか!」

それはただ単にキャラが薄く、影も薄いと言っているだけではないのか。そんな言葉が喉まで出かかったが本人に悪気はないようなので飲み込むこととした。

「そんなザ・普通オブ普通の君になら世間が私たちにどんなイメージを求めているのか分かるのだろう!」

「ええっと・・・まぁそうかもしれないですけど・・・」

最近ではこういった理由で俺にアドバイスを求めるヒーローが多い。

ヒーローと言う存在が世の中に浸透し長い時間が経つことによって人々はただのヒーローではもの足りなくなり、最近ではヒーローそのものに面白さや目新しさを求めるようになってきているのだ。

その影響か人気のとれなくなったヒーローが増え、いわゆるこれといった特徴のないキングオブ一般人である俺を通して世間が何を求めているのか聞きたい・・・ということらしい。

・・・まぁ俺にはそんなこと関係ないし、世界の運命を左右するヒーローたちのこれからを決めるなんて大それたことをしたくないのだが・・・

「頼む!この通りだ!君だけが頼りなんだ!!」

「・・・はぁ・・・わかりましたよ・・・。」


Noと言えない日本人というのはやはりつらい。


そしてレッドにつられジャスティスファイブのこれからを決める会議が始まった。

場所はジャスティスファイブの秘密基地の中らしいのだが、流石に一般人に場所が知れるのはまずいので目隠しされたまま案内された。

目隠しをはずすとそこは普通の会議室のようだった。

学校の教室ほどの広さにホワイトボードといくつかの机と椅子が並べられている。

秘密基地とはいえ会議室は普通の会社と同じのようだ。

参加者は俺、ジャスティスレッド、ジャスティスブルー、ジャスティスイエロー、ジャスティスグリーン、ジャスティスピンクの六人だ。

ジャスティスファイブの五人は素顔を知られるのが嫌らしく全員戦闘ユニフォームでマスクを身に付けている。

正直表情が読めずやりずらいのだが仕方がない。

プライバシーに関してうるさいのはヒーローも同じなのだ。


「さてそれじゃあ昨日の一戦を見てまず最初思ったことをなんですが・・・登場シーンの口上ダサくないですか?」

「「「「「登場シーン?」」」」」

ジャスティスファイブの全員が首を傾げた。

すかさずレッドが疑問の声を発した。

「茂部雄君、それはいったいどういうことだい?あれはオレたちが結成当時からずっと変えずに続けている俺たちの宣伝文句のようなものだがアレのどこが問題なんだい?」

「そうだ、あれほど俺たち5人のことを的確に表現できるものは他にないぜ?」

ブルーも冷静に自分の意見を言った。

「そ、そうだよ・・・あ、あれ考えるのに1週間もかけたんですよ?」

グリーンも自信なさげに発言する。

「そうよー私たちがあんなに一生懸命考えたものをそんな風に言うなんて・・・ぐすん・・・」

ピンクは精一杯かわいく怒って見せているつもりなのだろうが、なんだか無性に腹が立った。

「もぐもぐ・・・そうだー!はふっ・・・まじめに・・・熱ッ!考える気・・・美味っ!あるのか!?・・・カレーうまっ!」

「イエローさんはとりあえずカレー食べるのやまめしょうか。」

自分たちの未来が決まる会議にカレー食いながら参加するヒーローがこの世に存在するのも驚きだが、そいつが世界の平和を守っているとなると頭が痛くなってくる。


「正直今の時代に『正義に燃える真っ赤な心』はちょっと・・・。」

正直な感想を言うとレッドは難しい顔をした。

「うむ・・・率直に私の心意気を表現できるいいキメ台詞だと思ったのだが・・・。」

「いまどき一般人はヒーローの心意気なんて大して気にしていないですよ。それに全員に言えることだがどのセリフもどっかで聞いたことのあるやつばっかなんですよね・・・。」

「そ、そんな!!あの台詞を考え付くのに一週間もかかったのに!!」

グリーンが興奮気味に言う。

一週間かかってこの程度ならこいつらのセンスは絶望的だ。

「特にブ・・・イエローさんに関しては何も考えなさすぎでしょう・・・なんですかカレー大好きって・・・。」

「今ブタって言いかけなかった?」

イエローの疑問はスルーして話し合いは続く。


「ならよー、どんな台詞がいいんだ?」

ブルーが苛立たしげに言う。

「まず一番最初に自分たちがどんなヒーローなのか宣言する点はいいと思うんです。だけど今のままじゃ地味だから、他では聞けないような具体的な自分たちの特徴や個性みたいなものをシンプルにまとめるといいんじゃないですか?」

我ながら的確なアドバイスだと惚れ惚れする。

ジャスティスファイブの面々もこのアドバイスには納得がいったようだ。

「なるほど、それなら人々が自分の色と個性を覚えやすくなるな。」

「今までは色のイメージみたいな感じのことを言うだけだったしいいんじゃねーか?」

「そ、そうだね、元々今まで言ってやつ録画してた日曜7時30分にやってる番組見て思いついたやつだしね。」

「俺もイエローはとりあえずカレー好きってイメージにとらわれていたからな・・・もっと斬新なものがいいのかもな!」

「よーし☆じゃあ私たちを素敵に表現する台詞を考えちゃうぞ☆」

五人全員やる気が出てきたようだ。

これで問題解決、ちょろいもんだ。

「それでは園田くん、来週も7時45分あたりにたぶん怪人が同じ場所に出てくるだろうからそのときにもう一度俺たちの台詞をチェックしてくれないか?」

7時45分か・・・朝早いのは苦手だが一度引き受けた仕事はやり遂げなければ目覚めが悪い。

「わかりました、期待してますよ。」

「ああ!任せろ!!」




一週間後



「ワッハッハ!!燃えろ燃えろ!!この私ファイヤーボルケーノがこの町を炎で焼き尽くし、われらアクギャークの新たな帝国をここに打ち立ててやろうではないか!」

レッドに言われた通りに先週と同じ場所行くと、先週と同じような格好をして、先週と同じような台詞を吐いている怪人が出現していた。

先週この場所は当たり一面燃えつくされたはずなのに建物が元通りに戻っていることや、あんな事件があった後にも関わらず多くの人々がこの辺りで普通に過ごしているが、これらはすべてモブキャラたちの仕込みだ。

このようにヒーローが活躍できるようなお膳立てをするのもモブキャラの立派な勤めなのだ。

さて、そろそろ5人の登場する時間だが・・・


「待てっ!!」


「おっ来た来た。」


「ムッ!この声は・・・!」

お約束の台詞を言ってファイヤーボルケーノは天へと目を向けた。


するとそこにはそれぞれ赤、青、緑、黄色、ピンクの五色のユニフォームを着た5人の戦士が立っていた。


「最近足の爪の臭いを嗅ぐのがマイブーム!ジャスティスレッド!」

「家では裸族!ジャスティスブルー!」

「最近漢検2級をとった!ジャスティスグリーン!」

「実はハヤシライスも大好き!ジャスティスイエロー!」

「今着ている下着、実は4日目!ジャスティスピンク!」


「「「「「五人そろって!正義戦隊ジャスティスファイブ!参上!」」」」」」


「俺たちがお前の相手だ!行くぞみんな!」

そして五人と怪人の激闘が始まった!!





「もうちょいマシな特徴なかったのかんですか?」

とりあえず率直な意見を述べてみた。

「そんな!私たちは特徴や個性をシンプルに言ったぞ!」

「いや誰もお前らのあんな地味な特徴知りたいと思ってないよ。」

5人全員が『そんな・・・ばかな・・・』みたいな表情をしている。

「まずレッドさん、なんですか足の爪の臭い嗅ぐって・・・果てしなくどうでもいいプロフィール紹介されても・・・」

「あの言葉には、溢れんばかりの好奇心と冒険心を持っているということを、臭いとわかっていても臭いを嗅ぐいでしまうという日常的な例で表現してみようと・・・」

「何ちょっとかっこよく言おうとしてるんですか!そもそもそんな特別な行為じゃないですし!次にブルーさん!」

「俺はまるで空のように何者にも縛られないということをだな」

「あなたが家でフルチンかどうかなんて聞きたくないです!」

こいつらは自分を表現するのにどれだけ回り道をしたいんだ。

「次にグリーンさん!ヒーローが登場して一番最初に言うのが漢検合格って地味すぎでしょ!!」

少し強めに言うとグリーンは少しオドオドしながら答えた。

「い、いや、その、これからのことを考えると資格をとって自分磨きをしておいたほうがいいかなって思って・・・」

「もう少し世界の平和に役立つ自分磨きしてください!」

こいつは転職でもするつもりなのだろうか。

「そしてイエロー!お前結局カレーのイメージから抜け出せてねぇぞ!」

そんな的確なアドバイスをくれてやったのにも関わらずこのデブは

「カレーとハヤシライスは全くの別物だろ!!!こんな大胆なイメージチェンジないぞ!!てかなんで俺にはタメ口なの!?」

逆ギレを起こしてきた。なんなんだこいつ。

「テメーの持論なんかどうでもいいんだよ!」

そして最後に残るのは・・・

「みんなもうダメダメよぉ、私みたいにインパクトを持たせなきゃ☆」

「ピンクさんはとりあえずパンツ着替えてください。」




一通りコメントを終えてとりあえず一息つくことにした。

こいつらとしゃべっているととんでもない体力を使う。

「ふう・・・、とりあえず今のままじゃだめだ、もっとみんなが興味をもってくれるようなことじゃないと。」

「興味を持っていることか・・・そうだ!」

どうやらレッドが何かひらめいたようだ。

「我々個人の表向きの職業を言えばいいんだ!」

「ほぉ・・・なるほど・・・」

バカにしていいことを考え付く。

「た、確かにそれなら各隊員のいままでのストーリーや人となりが分かりますし、初めて見る人にもちょうどいいですね。」

「確かにかれならいいんじゃない?☆」

まぁ若干の不安はあるが確かにいい案ではある。

「よし、じゃあこのアイディアで行こう!」

「「「「「オーーー!!!」」」」」

そして再びこの五人にアイディア出しを任せ、一週間待つこととした。



一週間後



「ワッハッハ!!燃えろ燃えろ!!この私ファイヤーフレイムがこの町を炎で焼き尽くし、われらアクギャークの新たな帝国をここに打ち立ててやろうではないか!」

いつもの場所に行くとなんだか見覚えのあるデザインの怪人が暴れている。

怪人の名前もとりあえず熱そうな感じの言葉を適当にチョイスした感が満載で、姿に関してはポ○モンの色違いのようにただ体全体の配色を変えただけの手抜きだ。

おもいっきり使いまわしのキャラデザインから同一人物ではないかと疑ってしまう。

そしていつもの時間になると・・・


「待てっ!!」


「ムッ!この声は・・・!」

もういい加減聞き飽きたお約束の台詞を言ってファイヤーボルケ・・・フレイムは天へと目を向けた。


するとそこにはそれぞれ赤、青、緑、黄色、ピンクの五色のユニフォームを着た5人の戦士が立っていた。


「表の顔は不良の溜り場となった野球部で自暴自棄になっていた部員たちの心の奥底に残る情熱を見抜き、野球の「や」の字も知らなかったが、自ら顧問となって野球部の再建に乗り出す教師!その正体はジャスティスレッド!」

「表の顔は世界で1,2位を争う魔法名家の生まれで、骨折や出血多量の致命傷を負っても一瞬で再生できる能力と一人で戦艦を一瞬で消滅させ、世界に殆どいない戦術級の能力を持ち、小さい頃から軍隊に所属して働き、忍者の師匠が居て格闘術もこなし、ブラコンの妹がいて週一くらいのペースで妹の着替えに遭遇し、破壊神という通り名を持つ!その正体はジャスティスブルー!」

「表は・・・資格の勉強してます!その正体はジャスティスグリーン!」

「表の顔は父が工場を経営していたが多額の借金によって工場がつぶれ、そのショックで父は自暴自棄になり酒と賭博に明け暮れ、母はお金を稼ぐために夜な夜な仕事に繰り出すがうまくいかず、次第に家族の中ですれ違いが起きついには父が家の外に女を作り、その事実を知った母に暴力を振られこのまま家にいても自分は苦しむだけだと気づき、12歳で家出をして路頭に迷いゴミのような生活を送ってきた男!その正体はジャスティスイエロー!」

「表の顔は、実家から離れた喫茶店『うさぎハウス』で働くために『ひだるま壮』で一人暮らしをしつつ、同じアパートに住む個性豊かな友達と楽しくにぎやかな日々を過ごしている!その正体はジャスティスピンク!」


「「「「「五人そろって!正義戦隊ジャスティスファイブ!参上!」」」」」」


「俺たちがお前の相手だ!行くぞみんな!」

そして五人と怪人の激闘が始まった!!



「あんたらその設定どこから持ってきた!!」

とりあえず言いたいことは最初に言うことにした。

よもや三度目の作戦会議だ。本来ならば正義のヒーローの秘密基地など滅多にいけるものではないのだがもはやありがたみの欠片もない。

「なんだ?我々は決めた通り自分たちの表の生活について話しただけだぞ?」

このバカどもはどこに問題があったのかも理解していないらしい。

「あんたらの表の生活のインパクトが強すぎてジャスティスファイブの情報が入ってこないんだよ!ってか絶対好きな漫画から設定持ってきたでしょ!!」

「こんなの割と普通な方だと思うけどなぁ。」

「まずレッドさん!お前の設定丸々ルー○ーズじゃねぇか!」

「ほう・・・他にも俺と同じような生き方をしている男がいるのか・・・なんだか感慨深いものを感じるな・・・。」

「同じようなというかおもいっきりクリソツですよ!」

たぶんこの後こいつは一癖も二癖もある部員たちを勧誘し、様々な困難を越えた末に甲子園を目指すのだろう。


「次にブルーさん!どこのラノベの主人公ですか!設定めちゃくちゃ盛りすぎですよ!もう戦隊じゃなくても一人で解決できるレベルじゃないですか!!」

そんな当然とも言える疑問にブルーは少々困ったように答えた。

「いや、それが俺の本来の力を引き出すためには妹のキスが必要で・・・」

「これ以上設定を盛るな!!」

なんとなくだが彼はどっかの高校で劣等生というレッテルを貼られつつも日本を救うほどの活躍をするような気がした。

次にグリーンについて何かコメントをしようと思ったのだが・・・。

「グリーンは・・・うん・・・まぁ・・・。」

「い、いやせめてなにかコメントはくださいよ!」

「いやだって資格の勉強って・・・地味すぎるし・・・転職考えてるサラリーマンじゃないんだから・・・」

「他の四人に比べたら普通でしょ!?」

ヒーローにおいて個性というのは派手すぎても地味すぎてもいけない。

彼はきっとヒーローではなく公務員を目指すべきだったのだ。

「次にイエロー!お前キャラの割に無駄に過去重すぎんだろ!お前はカレーが大好きなだけのバカキャラじゃなかったのか!?」

「ああ・・・カレーを食べると母さんが優しかったころを思い出すから好きなんだ・・・」

彼が見せる優しい表情の中にはほんの少し寂しさがあるように感じた。

「これ以上お前の設定重くすんなよ・・・」

彼のバックボーンを知ってしまうとなんとなく彼を非難するのに罪悪感を感じてしまう。

「最後にピンク!お前の表の設定ファンシーすぎるだろ!なんかお前の設定まんがタイムき○らなんだよ!」

「えー?設定って何言っているかわかんないですぅー、私はうさぎとかわいいものが大好きなただの女の子だよ☆」

「そのキャラでパンツ4日以上替えてないって・・・」

「お金に困ったときお客さんのおっさんにこのパンツ売りつけると結構金になるんですよ・・・」

「えっ・・・」

彼女の輝くような笑顔に一瞬影が差したのを俺は見逃さなかった。


そして会議室に静寂が訪れた。

そうなるのも仕方がないのかもしれない。

自信満々に考えてきたキメ台詞をことごとくボツにされたのだ。

だが決して俺が厳しいわけではない。こいつらがポンコツすぎるのだ。

さてどうしたものかと考えているとレッドがポツリとつぶやいた。

「やっぱり俺たちヒーローに向いてないのかな・・・」

「レッド・・・」

あの熱血で暑苦しいレッドがこんな弱気なところを見せるとは思ってもいなかった。

他のメンバーも同様に落ち込んでいるようだ。

全員が俯き下を向いている。

そんなときイエローが机を叩きつつ悔しそうに言い放った。

「クソッ!!やっぱりカレーが好きなだけでヒーローなんてできないのか!!」

「それはできないだろ。」

「でもジャスティスイエローの採用条件にはカレー好きな人ととしか書かれてなかったぞ!」

「イエローの採用基準低くない!CoCoイチのアルバイトよりも簡単になれるじゃねぇか!」

最近のヒーローが採用条件を出して一般に募集をかけていることもびっくりである。

しかし、レッドとイエロー二人が弱音を吐き出したことで他の者たちもさらに落ち込みが激しくなった。

「やっぱりおかしいと思ったんだ・・・僕みたいな地味なやつがヒーローなんて・・・。」

もともと気が弱い性格なのかグリーンは他のメンバーよりもの落ち込み方が激しかった。

「漢字検定五級を持っていることが採用の決め手になったってずっとおかしいと思ってたんだ・・・」

「うん、それはおかしいねですね。」

いまどき漢検なんて使う場所はネプリー○くらいしか思いつかない。

ましてや、戦隊ヒーローで漢検のスキルが必要となる場面が一切思い浮かばない。

「私も予定では今頃キャラソンCDを出してオリコン7位くらいとってミュージック○テーションでタモさんを軽く引かせて、その後私が主役のスピンオフ作品で人気を稼ぎつつ、ラジオやニコ生で荒稼ぎしているはずだったのに・・・」

「あんたはヒーローをなんだとおもっているんだ・・・」


理由はともあれ五人とも完全に自信ややる気を失っている。

このままの状態が続けば今後の町の平和も危ういかもしれない。

もしそんなことになればこいつらをここまで落ち込ませてしまった自分にも責任はある。

・・・あまり気は進まないがこいつらを立ち直させるしかないようだ。



「・・・みなさん・・・人々がどんなヒーローを求めているか知っていますか?」

突然の問いかけに5人は顔を見合わせた。

「どんなってそりゃあかっこよくて、強くて、みんなを守ってくれるようなヒーローだろ?」

レッドが戸惑いながらも言葉として口にした。

「そうです、俺みたいな一般市民はそんなヒーローを求めています。ですが今のあなたたちはどうですか?人気者になりたいって意思が前に出てヒーローってのがどんなものなのか忘れてはいませんか?」

「「「「「!?」」」」」

5人はハッとした顔をした。

「みなさんは人気者になるためにヒーローになったんじゃないでしょう?人々を悪いやつから守りたいからヒーローになったんでしょう?」

我ながらいいことを言った。5人もようやく自分たちがどうあるべきか気づき始めたようだ。

「そ、そうだ・・・俺は人々の笑顔のために戦っていたんだ・・・」

「ハッ・・・まさかこんな初歩的な勘違いをするなんてな」

「僕は採用条件的にちょうどよかったからこの仕事についたんですが・・・それでも人々の笑顔を見たい気持ちは僕も変わりません!」

「俺は伝説のカレーを作るためにこの道を突き進むと決めたんだ!こんなとこで躓いている暇なんてない!」

「そうね・・・人々を守るゆるふわ系愛されヒーローってキャッチコピーも悪くないかも・・・」

何人かヒーローとは何かを全く理解していないやつがいるようだが気にしないでおこう。


「あなたたちが体を張って人々を守り続ければ、自然とみんなファンになりますよ。だから今はごちゃごちゃしたこと考えずに突き進めばいいと思いますよ?」

「ああ・・・ああ!その通りだ!」

レッドの瞳に光が戻ってきた。いや、レッドだけではない5人全員の瞳に光が宿った。

「だから今必要なのは、お前らのヒーローとしてありのままの姿をさらけ出していくことじゃないのか?」

「ありの・・・ままの・・・?」

「そうだよ!がむしゃらに人々の平和を守るありのままのお前らを見せつけりゃあいいんだよ!」

「カレーも調味料を変に足さないほうがおいしいしな・・・それといっしょか!」

「あ、・・・うん・・まぁそんな感じ。」

なんだかよく分からない例えを出されたが、言わんとしていることは伝わったようだ。

変に人気を出そうと意識するからいけないんだ。大事なのはインパクトではない、実直さなのだ。

これでこいつらもヒーローとして少しはもともになるだろう。

「よし!みんな!これからはありのままの俺たちで悪と戦っていくぞ!」

「「「「「オーーーー!!!」」」」」



これで俺はお役御免かな。

まぁたかがモブキャラがヒーローに人気が出るコツを教えるなんておこがましいんだがな。

まぁ仕方ないから来週もこいつらの活躍を見てやるか・・・。



一週間後



「ワッハッハ!!燃えろ燃えろ!!この私ファイヤーフレイムボルケーノファイヤーがこの町を炎で焼き尽くし、われらアクギャークの新たな帝国をここに打ち立ててやろうではないか!」


「待てっ!!」


「ムッ!この声は・・・!」



「赤いロウソク、女王様からいただく鞭が大好物!最近は割とハードにお仕置きしてもらわないと興奮しない!ジャスティスレッド!」

「自分の家だけでは飽きたらず、下半身を露出して夜道を歩くことに性的興奮を覚えてきている!好きなAVジャンルは青姦もの!ジャスティスブルー!」

「人妻大好き!ジャスティスグリーン!」

「う○ことカレーって・・・なんか似ているよな・・・ス○トロ大好き!ジャスティスイエロー!」

「バイト先の女の子と全員寝た・・・男も女も両方大好き!ジャスティスピンク!」


「「「「「五人揃って!ジャスティスファイブ!!!!」」」」」


「さぁ覚悟しろ怪人!俺たちが相手だァァァァ!」



・・・ありのままの姿って・・・そういう風に受け取っちゃったか・・・

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