謎の美少女編 2.そうだよ、俺はぼっちだよ

入学式から1カ月が過ぎた。

相変わらず、友達はできない。

ぶっちゃけ本当のこと言うと、中学時代も友達がいなかったし。

もう友達を作るのも諦めかけている状況だ。

だが、俺はこの1年C組で1カ月生活してきて気がついたことがある。

それは、俺の他にもぼっちが何人かいると言うことだ。

その中で唯一、男子が1人いる。

そいつもきっと友達を欲しているに違いない。

意気投合したら友達になろう。

昼休みを知らせるチャイムが鳴ったと同時に、教室の真ん中で本を読む俺と同じぼっちの五十嵐 祥之助のもとへと向かった。

ここは少し馴れ馴れしく行こう。


「おっす、五十嵐」


「気安く話しかけないでくれないかな?えっと、ぬか漬けくんだっけ?」


秒で拒まれた。

こいつなんで中学時代の俺のあだ名知ってんの?もしかして俺の心とか読めんの?あの、高校卒業するまで、超能力使えるって言うあれ?だったら俺も欲しい、透明になる超能力、使い道は決まってるだろ?

まあ、そんなことを考えつつ、五十嵐をせめる。


「な、なあ、その本俺も読んでるんだよ、面白いよなー!」


「ああ、確かに面白い、だが、隣で喚かれるとこの本の面白さが全然入ってこない、簡潔に言うと、どっかいってくれ」


こ、こいつムカつく!なんだよ!その、頭いいですよアピール辞めろ!いちいち、メガネを指でクイっと上げるのとかもうムカつく!


「悪かったな......」


俺は自分の席へと帰る。

クラスの連中の視線が痛い。

もう俺の心ボロボロだよ、もう風穴とか空いてるレベルだよ。

俺は1人、弁当を食べてチャイムが鳴るまでの時間を本を読んで過ごした。

授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響く。

いいところでチャイムが鳴りやがる、なんて理不尽なんだ。

それから、5、6時間目が過ぎて、放課後になった。

今は帰りのSHR(ショートホームルーム)中である。


「じゃあ、みんな気をつけて帰ってくださいね、さようなら」


担任のななみ先生の声で、皆一斉に自分の部活へと向かう。

うちの学校ではみんな部活動に入らなければいけないらしい。

近いという理由でこの学校を選んだからいちいち学校のことは調べなかった。

もう直ぐ6月だ、それまでに部活動を決めないと色々とめんどくさい。

部活は仲良い友達と一緒に入るから楽しいんだろ?あいにく俺には仲良い友達がいないため部活動に入ったら間違いなく省かれるだろう。

それならまだいい、例えばスポーツの部活に入ったとする。

俺がいるせいでチームの輪が崩れて、俺が辞めざるをえない状況になることが1番まずい。理由は部費がもったいないからだ。

だから俺はあまり部活動に入りたくないのだ。

と言うか、ざっくり言ってしまうと俺は学校が嫌いだ。

とある本に書いてあったぞ、教育は洗脳であると。

あながち間違いではない、先生たちは自分が受けてきたであろう教育を教本とし、それに従って俺らを教育する。

そうやって代々同じ思想を植え付けられてきたのだ。

自由を捨て、将来を得る、それこそが学校だろう。

従って、学校は青春を謳歌する場所ではない、だから青春を謳歌せし者たちよ、家に帰れ。

そう思いながら部活の勧誘ポスターを眺めていた。

その中で一つ、きになる部活を発見した。


「人間観察部?」


こんな部活が通っているようじゃ、この学校も甘いな。

部活はまた後で考えよう。

そう思ってポスターから立ち去ろうとした時、後ろから声をかけられた。


「あの、もしかして、忽滑谷さんですか?」


振り向くと、そこには倒れたところを助けてあげた少女がいた。

黒く長い髪の毛に、整った顔立ち、一言で言って美人だ。

しかし、なんで俺の名前知ってんだ?


「えっと、そうだけど、何か用かな?」


女子と喋ったのは久しぶりだったので、少し上ずった声になってしまった。


「お礼がしたくて、あの時はありがとうございました!」


少女はそう言って頭を深々と下げる。


「ああ、いいよ別に、人としての義務みたいなものだし、むしろああして当たり前だからな」


「それで、なんなんですが、部活とかもう決めましたか?」


おいおい、ちょっと冷たい態度とっけど、もう少し俺に感謝してもいいんじゃないか?「何かお礼をさせて下さい!」とか、「もしよかったら付き合って下さい!」とか、あってもいいんじゃないのか?


「部活は、まだ決めてないけど、それが?」


「でしたら『人間観察部』に入りましょう!私ももう部員ですし、1人足りないんですよ!」


推しますねぇ、ガンガンいこうぜ!ですねぇー。

しかし、こんなに美人なこと同じ部活は結構いいかもしれない。


「じゃ、じゃあ、見学に行きますよ」


「よかった、部室はこっちですよ!」


そう言って、女子は俺の手を取り、案内する。

初めて女子と手を繋いだことが嬉しくて、ついされるがままとなってしまった。

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