ノーフレライフ〜俺は友達がいない〜

皐月☆良いことある。

謎の美少女編 1.プロローグ

入学式の朝、新しい制服に身を包み、これから始まる高校生活を期待して、家を出た。

そして、今は学校まで続く桜が舞い散る坂道を歩いている。

ふと前を見ると、俺が入学する桜ノ宮高校の制服を着ている少女が歩いていた。

その足取りは弱々しく、はたから見たら酔っ払っているのでは無いかと思わせるような歩き方だった。

坂道も中盤に差し掛かった時、俺の前を歩く少女がフラついたと思ったらいきなり倒れた。

慌てて駆け寄り、生存を確認する。(具体的に言うと、脈を見た)


「良かった、息はある。救急車を呼ぶか」


制服のポケットからスマートフォンを取り出して、119番にかける。

10分ほど待つと、救急車がきた。

事情を説明して、救急車は少女を乗せて行ってしまった。

そして、俺はある事に気がついた。

や、やばい......鞄、家に忘れた......

よくあるパターンの奴だ、入学式が待ち遠しくて、早めに学校を出たのはいいものの、忘れ物をするという、登校が朝の散歩になる必殺の技。(自爆だけど)

今の一件でだいぶ時間を食ってしまったので、ダッシュで家に戻りダッシュで再び学校へと向った。

俺の家は学校から徒歩20分ほどの近場にあったので、大遅刻とまではいかなかったが、入学式当日から遅刻する羽目となった。


学校に着くと、もうすでに入学式は始まっていて、今は校長の挨拶だった。

受付に置いてあった名簿の俺の名前の横にチェックを入れて、俺はそそくさと会場に入って行った。

はしから列に入ったが、いろいろな人に見られた。

なぜそんなに俺のことを見るんだ?遅刻くらいで。

そんなことを思い、退屈な入学式を聞いた。

そして、それぞれのクラスへと行き、クラスでの自己紹介をする事になった。

はっきり言って自己紹介は苦手だ、なぜなら特に自分を紹介することがないからだ。俺には自慢できることも、好きなことも、特技もない。だから自己紹介は苦手だ。

いや、特技はあるか、人を怒らせること。

そしてついにな俺の番がきた。


「では次、忽滑谷さんお願いします」


「はい」


返事をして席を立ち、クラスを見回す。

すると何故か皆俺を怖がるような目で見ていた。

まあ仕方ないか。

俺は生まれつき三白眼で、いつも何かを睨んでいるように見られるからだ。

それと、入学式に遅れてきたことも混じって、俺は不良だと思われたらしい。


「忽滑谷 伊月です。特に好きなことはありません。強いて言えば、読書が好きです。今後ともよろしくお願いします」


そう言って一礼し、席に座る。

こんなに完璧な自己紹介をしたにもかかわらず、クラスの目は冷たかった。

入学式のホームルームが終わり、クラスの連中は皆近くの奴と会話を始めた。

俺はというと、誰にも話しかけられない。

クラスの連中は早速友達を作ってやがる。

どうしたらそんなに気安く他人に話しかけられるんだ、俺にはイマイチわからない。

気を使いすぎて同い年の奴にすら敬語を使ってしまう俺なんて、このクラスの背景でしかない。

あ、中学の時の痛い思い出が......

期待に胸を膨らませていた高校生活は初日で儚い夢となった。

いやまだだ、ここからが挽回だ!

そう思い、その日は家に帰った。


「お兄ちゃん、おかえりー」


家につくと我が妹、忽滑谷 美海が出迎えた。

中学2年生になっても俺のことを『お兄ちゃん』と呼んでくれるので、可愛い。

よし、今度なんか買ってやろう。

妹は茶色いツインテールをパサパサさせながら自分の部屋へと行ってしまった。

はあー、やっぱり我が家が1番だ。

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