7-3
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リブス通りにあるアマンダのパン屋へ。すでに日付が変わっていた。
「様子はどうだ」とアンナ。
「外から見た感じは普通だな」
いつも通りだ。扉にはパン屋組合の飾りがある。
近づく。
「アマンダ」
扉を叩いて名前を呼んだ。
返事はないが、扉が自然と開く。
「鍵が壊されているな」とアンナ。
「ふざけんなよ」
エリオットは目を覆い隠しため息をつく。
「私が先に入ろうか?」
アンナがいった。
「やけに優しいな」
「お前が先だ」
「悪い。行ってくれ」
「黒猫を覚えてるか?」
「あんたに懐いていた猫か?」
アンナの肩に乗っていた姿を思い出す。
「あいつは死んだ。殺されていた」
「そうか――」
「覚悟しとけ」
アンナが半開きの扉へ体を滑り込ませる。
「エリオット」と呼ぶ声。「よくないことが起きた」
「そうか」
エリオットもそれに続いてゆっくりと室内へ。
「酷い」
エリオットは呟いた。
荒らされていた。
「アマンダ――」
殺されていた。喉を切られて肌着が赤く染まっている。巨体が床で仰向けになっている。かまどは引っ繰り返されて、テーブルは壊れている。椅子は転がり、皿、チーズ、小麦、パンが散乱していた。壁や天井にすら血痕が残る。
「どうする?」とアンナ。
「いや、いい。ここは俺が行く」
二階へあがった。カテリーナがいるはずの寝室へ。一階ほど荒らされていなかった。シーツが丸まって床に落ちているくらいだ。
「どうだ?」
アンナが後ろから声をかける。
「いない」とエリオット。
「血は?」
「ない。今のところ」
「連れ去られたな」
「ふざけんなよ」
自分のせいだ。
エリオットは拳を握る。
「カレンも消えたな」
「二人一緒に連れ去られた」
「掃除でもするか?」
「どうしたらいい」
エリオットはいった。「力になってくれ」
「相手はわかってる。助けに行くだけだ」
「だな」
「準備しろ」
アンナが立ち去ろうとする。
「おい、待て」
床に紙が落ちていた。エリオットが拾う。
「クソがよ」
エリオットは紙を読んで握り締めた。
フラウエン教会に来い
それだけだった。
「なんだって?」とアンナ。
「フラウエン教会だ」
「楽園派の総本山だな」
「いよいよってやつだろ」
アマンダの家を出た。
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