6-4
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「クソ」
アンナは立ち上がり、扉へ突っ込んだ。エリオットも続く。アンナは扉を開いた女を捕まえ、室内に押し入る。エリオットはセバスチャンの首根っこを掴み、同じく室内へ。
「結局、こうなる」
エリオットは目の前の光景を見て首を振った。アンナが女に馬乗りになって、口を抑えている。女は目を見開いて、アンナとエリオットへ交互に視線を移す。手足をジタバタさせていないので、まだ状況は把握できているのだろう。
「殺さない」
アンナはいう。「だが答えろ」
ゆっくりと口を抑えていた手を外す。
女は胸を上下させて激しい呼吸を繰り返した。
「お前はアルベールの女房か?」
「そうね」
低い声。敵意が含まれている。プライドの高そうな女だった。
「この屋敷に隠し部屋はあるか?」
「ないわよ、そんなの」
反抗的な態度。アンナが首を締め上げた。
「しっかり真面目に答えろ」と続ける。「この部屋に隠し部屋はあるか?」
「ないけど、何かがあるとしたら地下でしょうね。アルベールはよくそこに行く」
「そこで何をしてる」
「知らないわよ。あの人が何してるかなんて」
「なるほどな」とアンナ。
女ってのはそういうもんだ。「地下への階段は?」
「そこの扉の向こう」
女が目で示す。
「もう離してよ」
女がいった。
「よし、わかった。協力、ありがとう。あとこれは謝罪だ。すまんな」
それから女を殴った。鈍い音。女が気を失う。
「容赦ないな」とエリオット。
「だったらお前が慈愛の精神で何とかしてみろ」
アンナは立ち上がり、女をみて「そこの棚の中に押し込んどけ」と指示した。
「セバスチャン、一人で帰れるか?」とアンナ。
「顔を見られた」
セバスチャンが呟いた。
「問題ない。こいつらは失脚して犯罪者になる」
「絶対に失敗するな。こんなのは、もうなしだ」
セバスチャンが念を押す。
「こっちもやばい。失敗はない」とアンナ。「で、戻れるのか?」
「やるしかないだろ。どこかの荷物に紛れて外に出るよ」
セバスチャンがいった。汗だくだ。相当気が張っているらしい。「クソが、クソが。だが俺は小さいしな。なんとかする」
「さすが市参事会員だ」
「元だ」
「これからまたなる。エリオット、隠したか?」
アンナの声。丁度、棚に女を押し込んで扉を閉めたとこだった。不自然な態勢だが、骨は折ってない。
「えらいことになったな。あの女、鼻血出てたぞ」
「そんなこと聞いてない」
「隠したよ」
エリオットはいう。
「地下に行くぞ」とアンナ。「じゃあな、セバスチャン」
「くたばれ」とセバスチャン。
セバスチャンと別れて、地下に向かう。
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