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 二度目の来訪にセバスチャン・ブランドは不機嫌そうだった。屋敷につくと、すぐに地下へ案内された。相変わらず湿気が高い。蝋燭の火が揺れていた。この地下には昼も夜もない。

「当ててやろうか?」とセバスチャンはいう。

 机に向かって錠前を弄りながら、エリオットとアンナのことは一目も見ない。

 二人が黙っているとセバスチャンは「問題が発生した。違うか? お前らは危機に陥っている」と続ける。

 どこか嬉しそうで、振り向くとやはり微笑んでいた。

「逆転を狙っているのさ」とアンナ。

「私の知る限り、お前は指名手配だぞ」

「情報通だな」とアンナ。

「だが遅れてる」

 エリオットが続けた。「情報ってのは鮮度が大事だ。な? アンナ」

「長老派のルーベンに掛け合って指名手配を保留にした」

 アンナがいった。

「大物を巻き込んだんだな」

 セバスチャンがわざとらしく肩をすくめる。

「お前のことはいってない。安心しろ」

「今度は何の話だ」

「アルベールだ」

「エーリカの次はアルベール騎士団長様か。そしたら次はあのヴァレンシュタインか」

 セバスチャンの癇に障る声が響く。

「今夜、侵入する。手助けがいる」

「押し入って殺せばいいだろ」

 元市参事会員とは思えない発言だった。

「そうして欲しいのか?」

「私はヴァレンシュタインに関わる全てが嫌いだ」

「だが残念。殺しはできない。保留の指名手配が有効になる」

「希望は?」

「穏便に忍び込みたいんだ。窓を割ったりドアを蹴破ったりせずに、賢く静かに忍び込みたい」

「で、私にどうしろって?」

「鍵を渡せ。あるんだろ? あんたほどの男が切り札を持ってないとは思えない」

「錠前職人には掟がある。顧客の鍵を決して他人に渡してはならない」

 セバスチャンの口調が強くなった。

「仕事に誇りを持っているんだな」

「掟を破る気は?」

 エリオットが聞いた。

「馬鹿にするなよ、小僧」

 小人病のセバスチャンがいった。壁に映る影のほうが大きい。「私は鍵を渡さない」

「困ったな」とアンナ。「解決策があったと思うんだが」

「この掟に妥協はない」

「じゃ、どうして私たちを帰らせない?」

 アンナが微笑む。

「鍵は渡さない」とセバスチャンがいった。「だが、私を連れて行け。開けてやる」

 つまりこれは屁理屈だ。

 エリオットはそう思った。


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