第6章

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 手紙を預かったロドマンと馬車に乗ってマリアノフへ戻った。

「ここで降りるぞ、エリオット」

 馬車がマリアノフの第四市門に入ったところでアンナがいった。「ロドマン、降ろせ」

「勝手に降りろ」とロドマン。「いったろ、俺はお前が嫌いだ」

「助かったよ」

 エリオットがロドマンの肩を叩く。

「行くぞ」とアンナ。

 馬車を降りた。昼だった。

 そのままリブス通りの食堂へ入る。席につくなり注文をした。パン、バター、チーズ マスタードで味付けした燻製ニシンにトマトと豆の煮込み、それに牛肉のパイとニンニク。ワインとビールももらう。

 テーブルの上には二人分とは思えない量の料理が並んだ。

「すごいな」

 エリオットがつぶやいた。腹が鳴る。

「食うぞ」とアンナ。

「わかってるよ」

 二人はがっついた。


   ■


「もう食えねぇ」

 エリオットが腹を叩く。空いた皿がテーブルに並んでいた。

「行儀が悪いぞ」とアンナ。

「ずっとろくに休まず食事も取れなかったんだ」

「これからまだまだ働く」

「どうすんだ」

 できればずっと食堂にいたかった。「このままだと俺は死ぬし、あんたは死ぬまでタダ働きだぞ」

 想像するだけでぞっとした。

「アルベールを突く」

 アンナがパンの切れ端にナイフを突き刺した。

「ヴァレンシュタインじゃないのか?」

 アルベールは昨夜、エーリカの屋敷にいたアーシュ騎士団の団長だ。

「アーシュ騎士団が楽園派の裏稼業を仕切っているのはもはや確実だ。だからそこの団長を抑える。奴は阿片、寄生虫、関わっている裏稼業の証拠を必ず持ってるはずだ」

「エーリカは?」

「その上がアルベールだろ。あんな三下にはもう用はない」

「時間がないもんな。行くのか?」

「まだ真昼間だ。夜を待ってアルベールの屋敷へ忍び込む」

「お、意外に慎重なんだな」

 イケイケで向こう見ずなアンナのことだからすぐにでも乗り込むかと思ったらそうではない。

「お前、頭は大丈夫か? 自殺志願者か?」

「そんなにいわなくてもいいだろ」

「作戦がある。行くぞ」

 アンナが立ち上がった。食事代をテーブルの上に放る。

「どこだよ」

 こいつの作戦は碌なもんじゃない。

「セバスチャン・ブランドだ」

「またか」

「苦手か?」

「陰気臭いね、あいつ。怒りっぽい男と不機嫌な女がやって、森の深くにある黒い沼で産んだらあんなのが出来そうだ。苦手だよ、あぁいう奴」

「あとでいっとく」

「どうぞご自由に」

 食堂を出て、キーウェスト通りへ向かう。

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