3-6
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女がヴァレンシュタインに突っ込んで行く。
茶色く長い髪の女だった。
「気合入ってんな」と女を見てアンナがつぶやく。
「おい、その女を止めろ」
どこかから声が飛んできた。エーリカが動き出す ヴァレンシュタインが危険を察して身を屈めた。広場の人々から声があがる。
「ハンス、その女を止めろ」
エーリカが叫んだ。
エーリカともう一人、肩幅の広い大男が女とヴァレンシュタインの間に飛び込んだ。大男がハンスという名前か。
エーリカがヴァレンシュタインを守り、ハンスがナイフを持って走りこんできた女に突っ込んだ。
ハンスが女の手元を掴んでナイフを落とすと、そのまま首に腕を回し拘束した。
「あんたのせいであの人が殺された。私の夫は殺されたの」
拘束された女が叫んでいる。足をじたばたさせながらも、執拗に叫びを続けた。市の衛兵がやってきた。叫び続ける女を連行する。広場は騒然としている。混乱は続いていた。
「誰かが殺されたらしいな」
アンナがいった。
「人間はいつか死ぬからな」とエリオット。
嫌な予感がした。話をはぐらかす。
「あの女に会うぞ。匂う。金の匂いだ」
「やっぱり――」
「嫌そうだな」
「あんたの考えることは嫌いなんだ。エーリカはいいのか?」
「女に話を聞いてからだ。面白い話が聞けそうじゃないか。手元のカードは多いほうがいい」
「楽しそうだな」
「エリオット。牢獄に行く方法を知ってるか?」
「断れないのか? その提案」
「知っているか、と聞いただけだぞ」
「わかってるくせに」
方法なら知ってる。「伝手がある。死刑執行人時代の組合仲間が、マリアノフの首斬りだ。まぁ俺の叔父なんだけどな。その人に頼めば地下牢に入れる」
「よし行くぞ」
「待て。本当に会うだけだろ? さっきの女に会うだけだよな」
念を押す。
「何を心配してる。脱獄を手伝うとでも思ったか」
なるほど。そういうことか。「地下牢の鍵を手に入れてこい」
エリオットは「クソ」と呟いた。
この女が大人しくしてるとは思えない。
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