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「ヴェトゥーラか? サウスタークからよくもはるばるやってきたな」
アンナが挑発した。黒頭巾の奴らは微動だにしない。
「答える義務はない」
黒頭巾のうち一人がいった。男の声だった。「持ち出したものを返してもらう」
「悪いことはできないな。お互い」とアンナ。「秘密なんだろ? こいつの存在は」
アンナが帳簿を見せびらかす。
「渡すのか?」
エリオットがいった。
「勝ち目がない。こいつらは強いんだよ」
アンナとエリオットが何を喋っても五人の黒頭巾たちは黙っている。
「持っていけ」
アンナが黒頭巾の足元に裏帳簿を放った。
黒頭巾が拾う。
「あ、そういえばエドゥアールは死んだぞ」とアンナ。
「だからここにいる」
「お前を絶対に見つけるからな」
アンナはいった。「必ずこの始末をつけさせる」
黒頭巾の男は裏帳簿を拾い上げると、アンナを無視して、他のやつらに「燃やせ」と指示をした。
松明を持っていた一人が動き出し、店に火を放った。
「二度とここには来ないことだな、アンナ・アリアス・ノラノ。今回は過去のお前に敬意を表して逃がしてやる」
「おい、ちょっと待て。どういうことだ」
エリオットが突っかかる。
「お前は何も知らなくていい。首斬りのエリオット。そうだろ?」
目が合った。黒頭巾から緑色の瞳がのぞく。
「なんでそれを――」とエリオット。
「お前たち二人はお似合いだ」
黒頭巾たちは去った。
「クソ――」
アンナは呟く。
炎の気配に気づいた市民の姿が集まってきた。
「早く逃げよう」とエリオット。
「逃げるんじゃない。離れるだけだ」
アンナの口調は強い。
「なんでもいい。行こう」
「ふざやけがって」とアンナ。
燃える店を後にする。
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