37「マイケル」

 部屋にはマイケルとボスがいた。

 ただ広い部屋に椅子と椅子が1つずつあるだけだ。

 マイケルはボスの後ろ姿に話しかける。

 「ボス。本当の目的を教えてくれ。あるんだろう」

 ボスはため息をして答えた。

 「私は自由になりたいのだ。誰にも邪魔されない、本当の自由に。だがマイケル、お前が居たら、私は自由になれない。それはお前も同じだ。私が居たら、お前は自由になれない」

 「本当にそれだけか?」

 「ああ、私にとってあのゾンビ共はどうだっていい」

 マイケルは構える。

 「それがもし本当なら、そんなことの為に、2チーム壊滅したというのか!」

 ボスも構える。

 同じように。

 2人はゆっくりと近づく。

 マイケルはボスの腕を掴む。

 そしてその腕に、殴りかかる。

 ボスはマイケルのその手を掴む。

 更に勢い良く手前に投げた。

 「何をしている?そんなのでは私は倒せん」

 マイケルはボスを見上げる。

 

 いつかの日と同じように。


 マイケルは立ち上がる。

 拳でボスに殴りかかる。

 ボスはマイケルの太ももに蹴りを入れる。

 マイケルは少しの間だけ前かがみになる。

 首を殴る。

 マイケルは床に倒れる。

 「腰を入れろ、倒されるぞ」

 マイケルはボスの足元を見る。

 

 あの日と同じように。

 

 マイケルは立ち上がる。

 2人は見合い、多少の時間が過ぎる。

 そしてもう一度、殴りかかる。

 フェイントをかける。

 だが、ボスにはそれは効かなかった。

 ボスはマイケルの腕を掴み、回す。

 ボスに背中を見せたマイケルは、扉へと投げられた。

 「まだ私を見ているのか!」

 マイケルが当たると、扉は開き、マイケルを通路へと押しやった。

 ボスは扉を閉める。

 

 マイケルはその場に座り込む。

 そんなマイケルに、マルコ達はゆっくりと近づく。

 「なあ、終わったのか?」

 マイケルはため息をつく。

 「ボスは自由になりたいらしい。どうやら、俺はもう1回過去を捨てなきゃいけないようだ」

 マルコは「分からん」のジェスチャーをする。

 「マイケル、それより。ボスの真の目的について情報だ」

 カービンはマイケルの肩を叩く。

 「全員いるか?」

 「ハンセインはどうしました?」

 「あ、ああ忘れてた。ハンセイン!出てきて良いぞ」

 しばらくの後、いくつかの書類を持ったハンセインが現れる。

 「終わったんですか?」

 「ひとまずはな。それよりカービン。ボスの目的って何だ?」

 「ウェブリーだ。あいつは裏切り者じゃないかと睨んでいるらしい」

 「裏切り?それで、奴の所属は本当はどこだ?」

 マイケルは立ち上がる。

 「いや、それは分からん」

 「いいえ、そんなことはないですよ」

 「JlUwM(ジュラーム)をウェブリーは襲いました。反社会的勢力です。ということは政府側です。これはつまり、軍に所属している皆さんにも、知らない組織が存在しているということです。そしてそれは―」

 「言いたいことは分かった。もう黙れ」

 マイケル達が話しをしている時、マイケルに無線が繫がる。

 「アマンダよ。申し訳ないけどもう時間が無いの。どう?」

 「ボスには勝てなかった」

 マルコ達はマイケルが何のためらいもなく言ったことに驚いた。

 「そう…だけどもうそっちにヘリを送る。場所はスタジアム。早くして頂戴」

 マイケルはしばらく考えた後、思いっきり言葉を発した。

 「もう来てくれていい。俺とボスは自由になる」

 マイケルはそう言うと、無線を切り、両開きの扉を開く。

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